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神奈川県立病院機構は神奈川県内にある5つの病院を運営する地方独立行政法人です。いずれの病院も専門性や役割が異なっており、健全な病院運営には各病院職員が自発的に医療職とコミュニケーションをとり、改善を行うことが重要となっています。今回は事務職員の経営分析能力向上研修を支援したPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のメンバーが研修担当者の方に研修背景や今後の展望を伺いました。
登壇者
神奈川県立病院機構 本部事務局経営管理部経営管理課 課長
猿渡 隆樹氏
神奈川県立病院機構 本部事務局経営管理部経営管理課 主査
小田 洋一郎氏
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
増井 郷介
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
増井:
まずは神奈川県立病院機構の役割を教えてください。
猿渡:
神奈川県立病院機構は、神奈川県にある5つの病院の運営を行う地方独立行政法人です。5つの病院は、がんや小児、循環器といった専門性をそれぞれ有しており、神奈川県の医療のけん引役として皆様に頼られる病院になれるよう、日々運営を行っております。
増井:
直近では新型コロナウィルス感染症の感染拡大への対応や、世界的にも類を見ない急速な少子高齢化による患者増加や働き手の減少、さらには医師の働き方改革など、病院経営を取り巻く環境は年々厳しさを増していると思います。他の病院と同様に機構の各施設も決して余裕がある経営状態とは言えないと思いますが、どのように経営改善を進めるべきだとお考えでしょうか。
小田:
神奈川県立病院機構の病院群はそれぞれ立地や専門性、役割も異なるため、共通課題に対して一律の施策を実施するのではなく、それぞれの病院が自分たちの状況や課題を理解し、各施設に合った施策を打ち出していくことが非常に重要であると考えています。
増井:
現場が自発的に経営改善を回せる状況を作り出すことの重要性、それが今回の研修の話につながっていくわけですね。
猿渡:
そのとおりです。各施設の経営改善は事務部門が主体となり、旗を振っていくべきですが、日々の業務に追われる中で、なかなか経営的な視座を持つことが難しいという課題がありました。
小田:
また、何か課題意識を持っていたとしても、それを資料に落としてプレゼンテーションをする機会もないため、スキル面でも強化が必要でした。病院全体を動かしていくためには、医療職ともコミュニケーションをとる必要があります。特に医師とのコミュニケーションは高いレベルの論理性やメッセージの分かりやすさが必要となりますが、その手法を体系的に身に付けることが求められていました。
神奈川県立病院機構 本部事務局経営管理部経営管理課 課長 猿渡 隆樹氏
神奈川県立病院機構 本部事務局経営管理部経営管理課 主査 小田 洋一郎氏
増井:
今回支援させていただいた経営分析能力向上研修は、各病院・本部の事務職を対象に、課題解決スキルの講義から始まり、参加者の所属に合わせた課題の設定、課題の分析、資料の作成、プレゼンテーションと、かなり多岐にわたる内容となっていました。その設計にあたっては、どのような点を意識されたのでしょうか。
小田:
まず、施設をまたいで組織横断で行うというのが1つのポイントでした。機構として1つの組織になっていますが、実際には各病院はそれぞれ独立性が高い、いわゆる縦割り組織になっています。経営改善を進めていく上では、個人レベルでの横のつながりを持つことや、他院のことを知っていることも重要だと考えました。ただの研修ではなく、コミュニケーションの機会としても活用したいと思いました。
猿渡:
確かに多岐にわたる内容ではありましたが、現在の職員のスキルセットを考えると、内容としてはどれも欠かせない要素だったと考えています。また、座学ではなく、自分で考えて手を動かすような内容にすることも意識しました。
増井:
今回の研修は、座学は半分程度でそれ以外は各自が設定した経営課題に対して、分析などを実施しました。1枠3時間の講義以外に、宿題としての分析や資料作成、各自30分のオンラインタッチポイントが3回。参加者の負担や研修の難易度も決して低くなかったと思いますが、この辺りはどのようにお考えでしょうか。
小田:
確かに参加者の方も大変だったと思います。ただ、コンサルタントが作るような論理性があり、かつメッセージが分かりやすい資料を作成することは、今後の院内のコミュニケーションに向けて良い経験になったと思います。
猿渡:
できないことを学ぶからスキルが伸びるのであり、いつもは考えないような経営課題を考えることは、今回の目的である「経営に関する視座を高める」という目的から考えると、良かったのではないかと思います。
小田:
参加者が難しく感じる場面でも、講師の増井さんに講義や直接のタッチポイントで個別にフォローしていただけたので、受講生にとっても学びが深かったと思います。
増井:
個別のタッチポイントの話がありましたが、PwCコンサルティングのバリューを感じた点があれば教えてください。
猿渡:
課題解決や資料作成、プレゼンテーションについて講義をしていただきましたが、病院経営の経験が豊富だったことも良かったと思います。講義の中で出てくる例や実体験のお話も参加者にとって身近なものが多かったと思いますし、候補者の課題に対する理解や分析設計に対するアドバイスも非常に的確だったと思います。
小田:
先ほどの個別タッチポイントについても、スライドの作り方や図表の見せ方、分かりやすいストーリーラインへの再構築など、非常に細かく見ていただきました。通常の業務の中ではなかなか資料作成のお作法や考え方を学ぶ機会は得られないので、非常に良かったと思います。
増井:
実際、研修の評価はいかがでしたか。
小田:
受講者のアンケート結果は非常に良かったかと思います。特に課題解決のアプローチを学べたことや資料作成やプレゼンテーションの仕方など、すぐに使えるスキルが好評だったと思います。
猿渡:
一部の参加者は、この研修で学んだことを学会でポスター発表する機会を得たという話を聞いており、各病院の経営層からも一定の評価を得られたと思っています。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 増井 郷介
増井:
これまで2年間で計2回の研修を病院の事務部門に対して行いましたが、課題や今後の展望などはあるでしょうか。
小田:
課題の1つはスキルの定着ですね。どの研修も同じかもしれませんが、研修が終わってから果たしてどのくらい学んだことを使えているかは不明です。おそらく、日々の業務に追われて、学んだことを徐々に忘れていっていると思われます。今後は、振り返りセッションのような形で、1度受講した方に対して、記憶の定着や経営意識の再すり込みなどを行う機会があってもよいと考えています。
猿渡:
あとは、事務部門以外、いわゆるコメディカルと呼ばれる看護師や技師に対しても同じような研修を展開してもよいかと思っています。冒頭にお話ししたコミュニケーションの機会として考えた場合、異職種同士の対話や理解の場としてもこの研修が使えるとよいと思っています。
増井:
それは確かにいいアイデアですね。他の施設において職種混合で研修をしたことがありますが、それぞれの課題や立場、想いなどに対する理解が深まることで、業務が円滑になったり、タスクシフトの議論が進んだりした場面が見られました。
増井:
最後に、同じような悩みを持つ方々にメッセージがあればお願いします。
猿渡:
研修を通して感じたことですが、このような研修は経営入門のような位置付けとしても有用かと思いました。経営的な視点を学ばせようと経営会議などに若手を参加させると、事務局としての業務で忙殺されてしまい、参加者の1人として経営について考えるというのは現実問題として難しいかと思います。経営課題をそれぞれ考える今回のような研修であれば、経営に向き合えるだけでなく、それぞれの立場で具体的に何ができるかということを考えられるので、良い機会になると思います。
小田:
私も同じことを考えていました。経営会議に入る前の模擬訓練的な位置付けで実施すると、いざ自分が実際に経営会議で発表することになっても十分なスキルを身に付けて臨むことができると思います。
増井:
経営人材の模擬訓練という観点は、私にとっても新鮮でした。病院経営に携われば携わるほど、やはり「ヒト」が重要だと感じます。働き方改革なども大きく動いていくと思いますが、今後も現場力向上に向けた研修や支援を展開していきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。