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JERAグループの一翼を担うネクセライズが今、事業領域の新展開に取り組んでいます。2021年4月に策定した新たな成長戦略「2030ビジョン」の下、脱炭素事業や地域防災力・減災力強化支援事業を積極的に進めています。「ネクセライズ」という社名(2021年7月に社名変更)は、「次の時代(Next Era)に向け、絆(Nexus)をチカラに、お客様や社会にとって価値あるものをカタチにし(Arise)、ともに成長(Rise)したい」との思いを映したもの。化石燃料販売を主力としてきた同社は未来をどのように展望し、何に挑戦しているのでしょうか。同社から代表取締役社長の西山和幸氏以下4名の方々にお集まりいただき、伴走しながらこの挑戦を支援しているPwCコンサルティングの3人が話を伺いました。
(左から)築井氏、新妻氏、松本氏、西山氏、片山、岡山、宇城
登場者
ネクセライズ
代表取締役社長 西山和幸 氏
ネクセライズ
燃料本部 販売事業部 ソリューション工事担当部長 松本辰一 氏
ネクセライズ
防災事業部 防災企画グループマネージャー 兼 防災サービスグループ 新妻英樹 氏
ネクセライズ
経営管理部 企画グループ 兼 事業戦略推進担当 築井祐子 氏
PwCコンサルティング
パートナー 片山紀生
PwCコンサルティング
ディレクター 岡山健一郎
PwCコンサルティング
マネージャー 宇城拓平
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
岡山:
ネクセライズの前身である東電フュエルは2011年7月、東京電力グループの事業再編に伴い3つの燃料系子会社が統合して設立されました。その後、2019年4月にJERAグループに加わり、2021年7月には現社名に変更されました。この時期は2016年に電気小売業への参入が全面自由化されるなどエネルギー業界の大転換期でもありました。そこで、西山社長に伺います。 社長に就任された際、エネルギー業界の先行きをどうご覧になっていましたか。
西山:
地球環境問題への対応とエネルギー業界全体の脱炭素化への流れは不可逆的です。それに対して、弊社の主力事業はJERAなどの火力発電所に向けて化石燃料を販売することです。もちろん、日本で火力発電が急減することは現実的に考えにくく、当面それなりの収益は見込めるでしょう。しかし、大事なことは目の前の現実だけを見るのではなく、10年先の環境変化を予測して「ありたい姿」を描き、それを実現するために今から何をすべきかをバックキャスティング(逆算思考)で考えることです。弊社の中長期経営戦略である2030ビジョンは、そうした考えで策定しました。
宇城:
当時、社員のなかでも化石燃料を扱う事業に対する危機感は共有されていましたか。
西山:
弊社は、燃料3社の統合前から一貫して100%子会社の立場です。親会社が東京電力ないしJERAという大きな会社であったため、環境が目まぐるしく変化する中にあっても、「自分たちは大丈夫」というある種の安心感が社員の心の底にあったことは否めません。一方、親会社を出て着任した私は、子会社の自律的経営を目指しました。すると、当然に意識の溝が生まれます。このギャップを埋めるため、意識改革を最優先課題に位置付け、これまで取り組んできました。人の意識は、いわば「形状記憶合金」のように気付けば元に戻ってしまいがちです。だからこそ、意識改革は、確実に手応えを感じられるまで粘り強くやり続けることが大切なのです。意識が変われば行動も変わります。
ネクセライズ 代表取締役社長 西山和幸氏
ネクセライズ 燃料本部 販売事業部 ソリューション工事担当部長 松本辰一 氏
岡山:
2021年3月に策定された「2030ビジョン」には、どんな狙いがあったのですか。
西山:
2030ビジョンは、単年度事業計画と長期経営戦略の2本立てです。単年度事業計画は、具体的な目標と戦略を示したアクションプランです。長期経営戦略には、ありたい姿とその実現への道筋、それらの根底にある企業理念・事業コンセプトを掲げています。
経営理念には、あえて多義的な言葉を選んでいます。なぜなら、具体的過ぎると思考の枠が狭くなり、創造性が損なわれるからです。「絆」「お客様起点」「挑戦」「不易流行」「プロフェッショナリズム」という5つの行動指針は、いずれも多義的で、ある程度抽象化された概念です。だからこそ、それらを各組織、各職位階層が具体化していくプロセスが大事ですし、そのプロセスを通じて経営理念の納得感が高まっていくと考えています。
片山:
西山社長に私が初めてお目にかかった打ち合わせの場で、社長自らが強い危機意識を語られたことが強く印象に残っています。行動指針の1つ「不易流行」は、「変わり続けなければならない」という社長の思いを象徴する言葉だと感じます。ただ、言葉の象徴性や多義性が逆にネガティブに作用して、社員に浸透しにくくなる懸念はありませんでしたか。
西山:
もちろんありました。そこで用意したのが、行動指針の解説です。行動指針の背景や理由を分かりやすく解説すれば、行動指針の理解を深めるのに役立ちます。加えて、理念を社員に浸透させる目的から「よもやま通信」という名のブログを立ち上げました。社員が興味を持ってもらえる身近な話題も交えながら、「2030ビジョン」への向き合い方などをできるだけ分かりやすく解説し、毎週月曜日に社内イントラにアップしています。投稿回数はすでに150回を超え、今では8~9割の社員が読んでくれています。形状記憶合金にたとえましたが、ブログを読んで経営理念を身体化できれば、意識が元に戻ってしまうリスクは減るはずです。ビジョンを単なるスローガンで終わらせず、行動へと落とし込む。つまり、ビジョンと行動をつなぐことを常に意識しています。
岡山:
社員の皆様は2030ビジョンを実際にどのように受け止めているのでしょうか。
松本:
私は現在の販売部門に所属する以前、他部署で内部監査業務に従事していました。社内を監査という視点で眺めてみると、危機感と楽観が相克するなかで、社員の「具体的にどう行動すればよいか分からない」という状況がうかがえました。しかし、2030ビジョンが方向性を示したことで、そんな意識は一変したと感じています。
新妻:
確かに意識は変わりましたね。社内イントラの掲示板への書き込みにも、行動指針の5つの言葉が随所に出てくるようになりました。ファイブバリューが浸透しつつあることの現れです。
築井:
私は事業戦略を策定する部署に所属しています。課題として感じていたのは、自分たちの強みや得意分野をどう生かせば社会やお客様、会社への貢献につながるのか、その具体的な「落とし込み方」がよく分からなかったことです。2030ビジョンによりその霧が晴れ、進むべき方向性と戦略の具体像が見えました。
岡山:
ネクセライズは、新規事業の立ち上げで収益構造の転換に取り組んでいます。アクションは何から始められたのでしょうか。
西山:
今後、既存事業がシュリンクしていくことは明らかでしたから、新たな収益源を作ること、すなわち新事業領域の開拓は不可欠でした。そこでまず、どこにターゲットを定めるべきなのか、事業領域の探索から始めました。
とはいえ、未知の領域に進出したところで成功する見込みは立ちません。したがって、既存事業と親和性がある領域での可能性を見定める必要がありました。ただ、探索を始めてすぐに、あまりにも多くの課題があることに気付かされました。しかし、社内だけでは検討に時を要し過ぎます。そう判断し、PwCコンサルティングに支援を願ったのです。
宇城:
新規事業の領域として「防災・減災×脱炭素」を選ばれた理由は何だったのですか。
西山:
PwCコンサルティングの支援を受けながら、戦略の具体化とその実現性評価、市場の成長性や弊社の強みを発揮できる可能性などを検討した結果です。グループ外のお客様と対話を重ねたことで、特に企業や地域の災害レジリエンス強化と脱炭素化支援には、弊社が貢献できる余地が多くある、と感じたことが決め手になりました。
弊社は「防災事業のプロフェッショナル集団」として、長年にわたって施設防災などに取り組んできた実績と経験があります。東日本大震災では、福島第一原子力発電所の炉内冷却注水にも携わりました。「防災・減災」はお客様との対話のなかでも必ず出てくるキーワードです。防災・減災領域で地域課題の解決に貢献し続けることが、ネクセライズの存在意義を高めることになると考えたのです。
さらに、防災・減災といわば地続きの領域が脱炭素です。例えば、災害で配電網や送電網が寸断されると、広範囲で停電が長い期間続く可能性があります。弊社が手掛けようとしている太陽光発電や蓄電池は脱炭素化に貢献する技術ですが、同時に災害時の緊急エネルギーとしてレジリエンス強化にもつながる技術でもあります。
太陽光など自然エネルギーの利用は、今後間違いなく拡大していくでしょう。現在は太陽光発電の普及の伸びに若干の陰りが見えますが、いずれはエクスポネンシャル(飛躍的成長)が起こると考えています。過去の経験に照らせば、新技術は直線的にではなく指数関数的に伸長するものです。市場が急拡大した局面で、一定のイニシアチブが発揮できるポジションにあるためには、今から助走を始めておく必要があります。
ネクセライズ 防災事業部 防災企画グループマネージャー 兼 防災サービスグループ 新妻英樹 氏
ネクセライズ 経営管理部 企画グループ 兼 事業戦略推進担当 築井祐子 氏
岡山:
PwCコンサルティングとともに戦略を練るにあたり、御社から特に要望されたことはありましたか。
西山:
戦略を策定する際、もしくはその前のヒアリングを受ける段階で「弊社の従業員を深く関与させてほしい」と要望しました。企業の価値創造の源泉は「人材力」です。PwCコンサルティングと弊社のコラボレーションを通じて、PwCの知見を弊社の社員が吸収して血肉化できれば、その恩恵と効果は計り知れません。実際、プレゼンテーションや資料作成の技術と知識は格段に向上しました。
宇城:
西山社長は当初から一貫して、「燃料価格などの外的要因に大きく左右されない、強くしなやかな企業体質を構築したい」との考えを示されてきました。それを受けて、私たちも社員の皆様から提案を受けてディスカッションを重ねるスタイルに段階的にシフトしました。今では、私たちの支援対象外の事業部門でも、積極的に議論しながら改革に取り組まれていると伺っています。
ただ、社員の方々は仕事の進め方が従来と大きく変わり、ご苦労を感じられたのではないでしょうか。
松本:
例えばソリューション工事部門は、屋根置きの太陽光発電と急速型・普通型のEV充電器の設置工事を新規事業に選定しました。とは言え、これらの経験はなく、技術者も足りておらず、工事の依頼先の当てもなく、暗闇の中を手探りするような状態でここまで進んできました。しかし、PwCコンサルティングの支援により、そうした苦労が少しずつですが形になってきました。西山が「レジリエンス強化と脱炭素化支援に弊社が貢献できる余地は多い」と見定めたとおり、今では本格参入への良いスタートが切れたと思っています。
「苦労」という言葉で思い浮かぶのは、PwCコンサルティングの伴走速度にシンクロすることだったでしょうか。私たちだけならば1年は掛かる作業を3カ月程度で終えるスピードが求められ、仕事量が倍増した印象でした。
新妻:
自然災害が頻発・激甚化している今、防災・減災へのニーズは急速に高まりつつあると感じています。「お客様のお困り事を解決するソリューションを提供する」との方針に従い、PwCコンサルティングからマーケット戦略に関するレクチャーも受けながら事業に取り組んでいます。
一番苦労したのは営業活動です。経験が足りず、資料の作成からプレゼンテーションのシミュレーションまで、PwCコンサルティングから多大な支援を受けました。その成果として、すでに5つの自治体から教育訓練業務の受注を頂戴することができています。部門横断の全社連携営業により、さらに結果を出していくつもりです。
築井:
PwCコンサルティングにサポートしてもらいながら取り組んだことで、新規事業戦略の具体化とその進め方のノウハウを学べました。ただ、その先が問題でした。実施した戦略の是非を正しく評価し、要改善ポイントを特定する経験と知見が不足していたのです。現在は、PwCコンサルティングの力を借りてノウハウを蓄積したことで、そうした問題もほぼ解消されたと感じています。
岡山:
意識と組織の変革、さらに新規事業の立ち上げにあたり、西山社長は特に何を意識されたのでしょうか。
西山:
率先垂範の姿勢です。改革に際して経営トップは旗を振るだけではなく、自ら先頭に立って動くことが大切です。また、PDCAが自律的に高速で回る企業文化が醸成されるよう、積極的に関与してきたつもりです。
PDCAのサイクルで特に大切なのは「Check」と「Action」です。かつての弊社では、「PDCA」が「PDPD」や「PPPP」で終わってしまう傾向があり、なかなかCAまで至りませんでした。「Plan」は仮説ですから、いち早く検証し「Act」を実行することが肝要です。その実現のために私自身、「モニタリング会議」には必ず出席し積極的に発言するよう努めています。
片山:
新規事業開発に定評のある企業であっても、アイデアが新規事業として採用される割合は、わずかに2%ほど。さらに採用された事業のうち、黒字化に到達するのはそのうちの15%と言われています。つまり、1,000件に3つしか新規事業は成功していません。成功事由を仔細に分析すると、「顧客のニーズを踏まえたサービスを提供できている」ケースが最多で、60%程度。次が「経営のコミットメント」で40%です。
西山社長は、関与の粒度が他社のケースとは異なり、あたかも「体験学習」を社員に働きかけている印象を受けます。進捗のフェーズ次第では、西山社長によるレビューの機会が毎週あって、アイデア出しから実施まで必ず参加する。「やるぞ!」と号令する経営者は数多いますが、最後まで伴走し、コミュニケーションやチェンジマネジメントという変革の過程にまで関与される姿には、私たちも多くの学びを得ました。
西山:
従来のPDCA会議は、残念ながら精神論に終始することが多く、それを徹底的に変えたかったのです。目標を達成した、ならば再現性はあるのか。再現性がある、ならばいかにしてそれを定着させるか。もし、目標未達ならその原因と次なる打ち手は何か。その検討を通じて、どんな結果からも学び、次につなげる。今ではこれができるようになり、売上も堅調に推移しています。
PwCコンサルティング パートナー 片山紀生
PwCコンサルティング ディレクター 岡山健一郎
片山:
先般の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で、日本はまたもや「化石賞」という不名誉を冠せられました。各国が自国の状況に合った進め方で気候変動抑止に取り組むことが大切だと考えますが、世界のなかで日本のエネルギー業界が苦戦している様子もうかがわれます。西山社長は、今後どこに事業の勝機を見出せるとお考えですか。
西山:
例えば、弊社が自らバイオ燃料のサプライチェーンに進出することや、化石燃料からバイオ燃料への転換を直接担うといったことは、やはり資金やノウハウの面で難しさがあります。しかし、目下取り組んでいるソリューション(課題解決提案)という方向性には確信を持っています。こうした取り組みを継続し、お客様との絆を強く太く育てていくことが弊社の成長機会につながると考えています。
時流の変化には目まぐるしいものがあります。そんな中でも、弊社がお客様に誠実に対応し続けていけば、そのことがお客様の記憶に残ります。そうなれば、いつかはお声が掛かると信じています。お客様と直接向き合うというアナログなコミュニケーションを、これからも大切にしていきたいと考えています。
片山:
社員の皆様は、今後をどのように展望なさっているのでしょうか。
松本:
太陽光発電に関しては、この1年ほど問い合わせが増え、現在約20の案件が動いています。まずは、それらを着実に成約に結び付け、実績を積み重ねることが直近のテーマです。そして、さらにより多くの案件に対応するため工事体制と設計力の充実整備も進めていきます。
新妻:
防災部門では、災害時の避難所設営に関わる事業を自治体とともに進めており、エンドユーザーは住民の方々です。住民の方々の声をしっかりと聴いて自治体にフィードバックしながら、住民と自治体双方に満足してもらえるサービスを提供していく考えです。
新商品・サービスの開発については、「目先の利益を追うな」との考えを西山が示しています。目先の利益ではなく、3年後、5年後にお客様が「ネクセライズに頼んで良かった」と評価してくださる商品・サービスを提供することが揺るがぬ信頼と信用を獲得し、弊社のファンをつくることにつながると考えています。そのためには、商品・サービスを正しく見極める「目利き力」が不可欠です。これからも「お客様起点」という行動指針に従って、商品・サービスの開発に取り組んでいくつもりです。
築井:
既存事業と新規事業はいわば車の両輪であり、この2つが相携えてはじめて会社という車がスムーズに前に進んでいきます。2030ビジョンではそれを「二兎を追う戦略」と称していますが、経営管理部門としては、業務効率化やDXなどの既存事業改革と並行して、新規事業にどうリソースを配分していくかが今後の大きな課題と捉えています。つまり、運営体制を支える側にも、従来の延長線上ではない新たな発想が求められているということです。
岡山:
最後に西山社長から、PwCコンサルティングに今後期待することをお聞かせください。
西山:
PwCコンサルティングの支援を得て、「プランニング」のフェーズはクリアしました。ただし、プランはあくまで仮説なので、実行過程では必ず想定とのズレが生じます。社会情勢や社内体制などプランが前提とする条件に大きな変化が生じた場合には、自社の外側からの専門的知見に基づく検証が不可欠です。今後どこかのタイミングで、第三者的な視点から2030ビジョンの検証を改めてPwCコンサルティングにお願いしたいと考えています。
岡山:
経営環境が激変するなか、自己否定をも含む変化する力や適応力をいかに高めるか──コンサルタント会社として私たちPwCもその議論を重ねています。西山社長が言及なさった時流の急変下にある今、本日は示唆に富むお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
PwCコンサルティング マネージャー 宇城拓平
X-Value & Strategyは、クライアントの経営課題の形成から解決までを一貫して支援するチームです。戦略コンサルティングの力と、多様な価値を統合する力を併せ持つ、Community of Solversを体現する存在として、クライアントにインパクトのある成果を提供します。
エネルギー・資源・鉱業業界が抱える課題とPwC Japanグループが提供する支援サービスをご紹介します。
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