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秋田県大館市は、少子高齢化により医療介護の担い手が不足する中で、増加する需要への対応を迫られています。では、どのようにして、その解決策を模索したのでしょうか。同市の市長・副市長を巻き込み、現場関係者へのインタビューを行うなどして支援にあたったPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)の2人が同市福祉部の担当者とこの取り組みを振り返り、今後について展望しました。
登壇者
大館市 福祉部長寿課 課長
藤原 真章氏
大館市 福祉部健康課 課長
大森 篤志氏
大館市 福祉部長寿課 課長補佐
長坂 文彦氏
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
増井 郷介
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
小田原 正和
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
小田原:
今回、大館市はPwCコンサルティングとともに、同市における慢性期医療・介護のあるべき姿を構想するプロジェクトに取り組みました。まずは、その背景についてお伺いさせてください。
藤原:
大館市は全国と比較しても少子高齢化が進んでいる地域です。65歳以上の高齢者は既に減少傾向にありますが、慢性期医療や介護サービスが必要な方の割合が多くなる90歳以上の人口は増加傾向にあり、そのようなサービスの需要は2040年頃まで緩やかに増加し続ける見込みです。一方で、看護や介護の担い手となる生産年齢人口は急激な減少が想定されており、何らかの手を打つ必要がある状態でした。
大森:
受け皿となる療養病床や介護施設は現状でほぼ満床の状態です。また、大館市は広域に患者や利用者が点在しており、地理的特性から在宅医療にも頼れない地域です。現時点で将来の慢性期医療や介護の供給体制を検討する必要性が極めて高かったといえます。
藤原:
そのような中、PwCコンサルティングには以前、大館市病院事業経営強化プランの作成支援を依頼しており、既に大館市全体の医療や介護の事業環境を把握していました。そこで、将来の慢性期医療や介護サービスのあるべき姿の検討も依頼することとしました。
大館市 福祉部健康課 課長 大森 篤志氏
大館市 福祉部長寿課 課長 藤原 真章氏
小田原:
今回、どのようにプロジェクトを進め、どこに注力したのかを教えてください。
藤原:
まずはプロジェクトメンバーである福祉部、さらには市長・副市長とも、大館市の慢性期医療・介護の現状と将来の需要予測や担い手となる人材の状況などをしっかりと理解することに努めました。
増井:
本プロジェクトは短期間(4カ月)だったので、やみくもに進めて時間を浪費しないよう、私たちも仮説ベースで進めることに留意していました。
藤原:
現状を理解するためには、定量情報だけでなく、現場の方々の声は欠かせません。合計15の医療機関、医師会、介護事業所などにご協力いただき、抱えている課題やこれからの見通しを伺うために私たちとPwCコンサルティングで訪問を重ねました。
大森:
インタビューからは、さまざまなことが分かりました。例えば、大館市では在宅医療や訪問系サービスの利用者宅が広範囲に点在しているため、在宅医療や訪問系サービスを行うのは効率が悪いということや、在宅医療は必要とされているものの、それを担う人材も不足しており、在宅医療に頼ることは難しいということなどです。特に、人材確保は看護師の夜間配置や実務研修を終えた介護職など、どの部分で確保が難しいのかを実感しました。
長坂:
一方で、施設によっては職員の研修体制が整備されていたり、デジタル機器を活用した職員の負担軽減や外国人の介護人材受け入れが進んでいたりと、上手くいっている事例があることも理解できました。
増井:
関係者インタビューのコメントは、共通した意見が多かったですよね。結果として、どのような青写真を描くことになったのかを教えてください。
大森:
既に労働力が不足していることや、現状の体制では効率良くサービスを提供することが困難であることなどから、「大館市においては、サービスを供給する体制をある程度集約せざると得ない」という意見を多くの方からいただきました。当初の仮説と分析結果を踏まえ、PwCコンサルティングからは医療・介護を中心とした「分散型の小さな拠点」(図表参照)を作ることの提案を中間報告としていただきました。
藤原:
下記図表は医療・介護現場の実務職員などで構成する「大館市在宅医療・介護連携推進協議会実務者会議」(以下、実務者会議)においても提示し、皆で現状を認識し、今後の方向性を真剣に討議しました。非常に建設的な議論ができ、参加者から「いよいよ私たちが『チーム大館』として取り組んでいかなければならない」という発言が出てきたことは嬉しかったですね。
増井:
私たちは当初、大館市における慢性期医療・介護のあるべき姿に関しては複数の案を提出しようと考えていました。しかし、関係者へのインタビュー結果や実務者会議での議論を受け、中間報告案がそのまま最終案となりましたね。
大館市 福祉部長寿課 課長補佐 長坂 文彦氏
PwCのアドバイスをもとに大館市が採用した将来像
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 増井 郷介
小田原:
本プロジェクトは、PwCコンサルティングと大館市の皆様とで討議を重ね、関係者へのインタビューを協力して実施するなど、共同で取り組んできました。PwCコンサルティングのバリューを感じた部分があれば教えてください。
藤原:
「Fact pack」と呼ばれる現状分析資料は、単なる分析の横展開ではない、大館市固有の課題の深掘りした内容で、大館市では把握できていなかった部分が多く存在しました。今後の取り組みを進めて行くうえでも有用な資料となるので、とても助かりました。
長坂:
情報収集や関係者へのインタビューの仕方も新鮮でしたね。医療者や現場の実務者とは、専門的な知識がないと会話のキャッチボールも難しいですが、現場の生の声を上手く引き出してくれたと思います。
小田原:
現場からの生の声は、初期仮説どおりの部分もあれば、仮説にはなかった内容も多く含まれており、私たちとしても非常に勉強になりました。
大森:
市長や副市長への説明に際しても、専門的知見を基にしたディスカッションを展開しており、それが短期間での円滑な方針決定につながったと思います。私たちとしても安心感がありました。
増井:
市長や副市長との意見交換に向けては、事前に皆様との間で十分な議論ができました。しっかりと論点を詰めることができたので、建設的な意見交換ができたように思います。市長や副市長からも今回の取り組み対する非常に高い熱量を感じましたね。
小田原:
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
藤原:
「小さな拠点の整備」という目指すべき姿が明確になった今、大事なのは実行に移していくことだと考えます。まずは、モデル地区を選定し、その仕組みを検証し、大館市内の複数の拠点にて展開していく想定です。特に「小さな拠点」において医療を提供するサテライト診療所については、医師の確保や診療設備の整備が必要となりますが、病院など関係機関と連携して進めて行く予定です。その他、人材の確保や施設間の情報連携といった課題についても、実務者会議の意見を伺いながら解決を目指し、一つひとつ「小さな拠点」の整備を進めて行きたいと考えています。
大森:
地域的な特性や人材の確保という面で、大館市と同様の課題を抱えている自治体も多いと思います。自治体間で情報共有や意見交換を行い、どのように地域の医療や介護を支えていくべきか、さまざまな観点から検討を深めていきたいですね。
小田原:
日本には、今後少子高齢化の進展が予想される地域が数多く存在します。大館市の取り組みを他の地域においても参考としていただき、それぞれの自治体でそれぞれの地域に合った形で検討が進むと良いですね。本日はありがとうございました。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 小田原 正和