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株式会社オプテージは、関西電力グループの一員として、インターネット通信サービス「eo光」、電力小売サービス「eo電気」、携帯電話サービス「mineo」(マイネオ)、ビジネスコンサルティングやネットワーク、データセンターといったICTソリューションなどを提供しているほか、新規事業に向けた取り組みとして、Web3、量子暗号通信など、先進性および社会的意義の高いプロジェクトにも挑戦しています。
今回は、PwCコンサルティングが支援した脱炭素事業に関して、同社代表取締役 常務執行役員 ソリューション事業推進本部長・橘俊郎氏と、プロジェクトを牽引するメンバーの皆様に新規事業に懸ける思いを伺いました。
(左から)久木田、歌丸、橘氏、大場氏、湯井氏、中谷
登場者
株式会社オプテージ 代表取締役/常務執行役員
橘 俊郎 氏
株式会社オプテージ ソリューション事業推進本部・DXビジネス開発部 チームマネージャー
湯井 能明 氏
株式会社オプテージ ソリューション事業推進本部・DXビジネス開発部
大場 藍 氏
PwCコンサルティング合同会社 X-Value & Transformation パートナー
久木田 光明
PwCコンサルティング合同会社 Energy & Utilities パートナー
中谷 尚三
PwCコンサルティング合同会社 Energy & Utilities シニアアソシエイト
歌丸 愛依子
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
歌丸:
本日は社会の脱炭素化に向けたオプテージの新規事業について、お話を伺っていきたいと思います。まず脱炭素事業の開発・検討に着手した背景について教えてください。
橘氏:
当社は従来、インフラビジネスを中心に事業を展開してきましたが、昨今ではお客様のご要望が高度化・複雑化しています。インフラビジネスからレイヤーを上げて、しっかりとした新事業を仕立て、皆様のご要望にお応えする。私たちは現在、そのような大きな戦略を描いています。
かたや、RE100(再エネ100宣言)やSBT(Science Based Targets)など、脱炭素社会の実現に向けたイニシアチブに参画する国内企業が年々増加しています。大企業のみならず中堅・中小企業にも同様の動きは足元で広がっています。また関西電力グループにおいては、「ゼロカーボンビジョン2050」を掲げており、自らの脱炭素化と事業を通じたお客様・社会の脱炭素化を両軸で進めています。当社も関西電力グループの一員として、双方の脱炭素化に貢献すべく検討を進めてきました。
通信インフラ事業やデータセンター事業では既に取り組みを進めており、2025年竣工を目指し、再生可能エネルギー100%で稼働する「オプテージ曽根崎データセンター」の開発を進めています。そんななか、既存事業領域にとらわれずお客様の脱炭素を支援するため、新規事業構築という「攻め」の要素も盛り込もうと考えたのがきっかけです。
久木田:
貴社のミッションや価値観として、新規事業領域においては先進性を重んじるという考えや使命感は強いのでしょうか。
橘氏:
新しいことに取り組むカルチャーやDNAは、関西電力グループ全体に根付いているというのが私の考えです。例えば過去には、関西地域の停電問題を解決するため、資本金以上の投資を投じて黒部ダムを建設した歴史があります。オプテージの前身であるケイ・オプティコムも、当時主流だったADSLの料金をさらに下回るFTTHをつくり価格破壊を実現しました。FTTHを使用した戸建て、集合住宅向けの0~ABJのIP電話を開始したのもケイ・オプティコムが日本初です。
新規事業開発には必ずリスクが伴いますが、私たちはいたずらにリスクを忌避せず、しっかり評価・検討をします。市場の状況だけでなく、当社ならではの提供価値や、お客様に価値を認めていただけるかという点を重視しており、最終的には社会課題の解決に資するかという観点も含めて判断します。その上で先陣を切った市場開拓が必要であれば厭わないというのが私たちのスタンスです。
久木田:
現在、インフラビジネスと呼ばれるものすべてに脱炭素的要素を盛り込んでいかないと、世界的に新たなインフラが成り立たないという状況に皆が気付き始めています。貴社のように、エネルギーや情報インフラの上に脱炭素的要素を繋げていく取り組みは、とても重要なものになると感じています。
橘氏:
久木田さんにご指摘いただいたような危機感は確実にあります。例えば、データセンターひとつとっても、グリーンでなければもはや選んでいただけない時代が目前に迫っています。そんな社会の状況をいち早くキャッチアップして、自社の役割を踏まえた提供価値の検討・準備こそ重要になるはずです。
株式会社オプテージ 代表取締役/常務執行役員 橘俊郎 氏
株式会社オプテージ ソリューション事業推進本部・DXビジネス開発部 チームマネージャー 湯井能明氏(写真右)
株式会社オプテージ ソリューション事業推進本部・DXビジネス開発部 大場藍氏(写真左)
久木田:
脱炭素市場は伝統的な市場だと15兆円規模になるものもあれば、1兆円に満たない新しい市場もあります。脱炭素の取り組みのような黎明市場における参入検討に際しては、市場規模に加えて、成長性をどのように見るかという点が特に重要です。PwCコンサルティングでは脱炭素市場の全体像を定義したうえで、一つ一つの市場に対して成長のキードライバーを特定し、当該ドライバーの動きを勘案しながら将来動向を予測するというアプローチを提案いたしました。
大場氏:
当社ではこれまで、グリーンデータセンターの開発や自社二酸化炭素排出量の可視化、また炭素排出量削減努力を進めるなど、社内の取り組みを実施してきました。ただ事業となると、市場全体を俯瞰する必要があります。そこで、脱炭素に関する知見を有し、新規事業策定においても豊富な実績があるPwCコンサルティングにフラットかつ新たな視点で市場を調査していただきました。
今回、市場を選定するにあたっては、現状の国内市場規模のみならず、新しい市場を開拓することや将来的に新しい価値を創造していく点を重視しました。検討の過程で、現在は市場規模が小さく黎明期であるオフセット市場に将来的な可能性を見出し、より詳細に市場を精査して、再生可能エネルギー電力調達(以下、再エネ電力調達)領域のサービスを検討・開発することになりました。
久木田:
各国が2030~50年までにカーボンニュートラルを目指すことを前提とすると、現実的にオフセットは切っても切り離せず、社会全体の脱炭素化のトランジションを進める上で、その役割の重要性は増す一方、さまざまな課題も顕在化しています。
例えば「本質的にCO2削減が実現できているのか」「具体的にどれくらい削減に貢献しているのか」という問いがあり、欧米を中心にグリーンウォッシュを懸念する声も上がっています。欧州を中心にITを活用して信頼性を担保する動きが活発化していますが、今回はそのような世界的な潮流も念頭に置かれたのでしょうか。
大場氏:
はい。グローバル展開を行う企業や、脱炭素に従来注力してきた先進企業を中心に、オフセットサービスの利用拡大傾向があります。一方、直近ではRE100の要件に追加性(新たな再生可能エネルギー設備の増加を促す効果)が盛り込まれるなど、新たな動きもありました。カーボンクレジットに関しては、ブロックチェーン技術を使ったトークン化や二重計上の防止など、信頼性を担保するための動きが広がっていると把握しています。
歌丸:
オフセット領域の中でも今回再エネ電力調達にフォーカスすることになりましたが、サービスの具体化を進めるにあたっては顧客分析を行ったほか、オプテージの知見やアセットとのシナジーも意識して選定を行いましたね。
大場氏:
オフセット領域のなかでも、足元ではScope1(直接排出量)、Scope2(間接排出量)の削減に注力している企業が多いことから、再エネ電力調達に着目しました。
現在、調達手段としては大きく、「再エネ電力メニュー」「証書(再エネ発電由来のクレジット含む)購入」「PPA」「自家発電」に分かれます。各企業の調達目的、調達要件、調達量に応じて理想的な調達手段は異なりますが、自家発電を除く調達手段すべてにおいて再エネ電力証書(エネルギー属性証明書)の取引が発生します。課題は証書から追加性や信頼性を把握するのが難しいこと。その領域で、当社のITにおける技術力と、関西電力グループが持つ電力アセットの知見を掛け合わせて活かせると思いました。
検討領域において市場動向のキードライバーの全体像、将来市場の見立て、顧客分析の一連の市場分析をPwCコンサルティングにサポートいただいたことで、当社としてのシナジー創出部分に注力し検討を進めることができました。
歌丸:
現在、検討・開発されているサービスは具体的にはどのようなものになる予定でしょうか。
大場氏:
当社が想定しているサービスプラットフォームは、「24時間365日カーボンフリーエネルギー(以下、24/365カーボンフリーエネルギー)」の達成を実現します。1時間単位での電力消費量と再生可能エネルギー電力のマッチングを企図していますが、顧客ニーズに合わせ、場合によっては1時間よりさらに細分化された時間粒度でのマッチングも可能です。またブロックチェーン技術を用いて証書をトークン化し、二重計上を防止することで、信頼性を担保した再エネ電力調達を支援します。
併せて、情報の透明性を高め効率的かつ精緻な炭素排出量計算定を可能にする機能や、企業のブランディングを企図して、供給を希望する発電源や指定産地から再生エネルギーを調達できる仕組みを導入する予定で開発を進めています。
図1:検討・開発中の再エネ電力調達サービスにおける提供価値
PwCコンサルティング合同会社 X-Value & Transformation パートナー 久木田光明(写真右)
PwCコンサルティング合同会社 Energy & Utilities パートナー 中谷尚三(写真左)
中谷:
現状、再エネ調達手段の多様化や調達量の増加を踏まえて、各企業においては再エネ電力の調達・管理の複雑さ・煩雑さが増しています。加えて、RE100に代表されるような調達要件の厳格化が広がっており、トラッキング有無・内容や唯一無二性の担保など電力の品質に対するニーズもより強まっています。
検討中のサービスでは、証書発行・管理・CO2換算など「業務の複雑さ・煩雑さに係るニーズ」と、追加性の担保や精緻なCO2換算など「品質に係るニーズ」の2種類に着目・重視していますが、現在の再エネ電力調達市場についてはどのように分析されているのでしょうか。
大場氏:
日本の再エネ電力証書取引では、電力消費量に応じて四半期、もしくは1年単位などで調達が行われます。ただ実情として、電力の需給バランスがマッチングされておらず、粗い計算方法であるため、環境価値のプライシングが実態の数値と乖離しています。ゆえに、企業の電力消費量削減のモチベーションが働きづらいというのが、市場全体の課題感になっていると捉えています。
欧米諸国では同様の課題が顕在化していますが、証書の時間属性の細分化に向けた制度化の動きが活発化しています。一部の欧米先進企業では、24/365カーボンフリーエネルギーの実現をKPIとして設定する動きも広がりつつあります。
歌丸:
欧米では当課題に挑むプレーヤーが登場するなか、日本では国内の電力システムや証書スキーム等制度面における複雑さがネックとなり解決に向けた実証・制度設計における議論が限定的であることが大きな要因の一つだと理解しております。オプテージではその理由についてはどのように分析されていますか。
大場氏:
日本国内で24/365カーボンフリーエネルギー調達を行いたくても、行うことができない理由としては、電力やエネルギー領域の知見・実績のあるITプレーヤー、かつ脱炭素に取り組むプレーヤーが不足していることがまず挙げられると思います。
24/365マッチングを実現するためには、電力・エネルギー消費側と発電側の電力の流れに加え、データの流れを正確に整理する必要があります。また24/365カーボンフリーエネルギー調達を実現するためには、まずどのようなデータが必要なのか、それらのデータをどのように取得するのか、発電側と消費側のデータをどのようにマッチングさせていくのかといったさまざまな論点があります。
電力・エネルギー領域に関して見識が足りない場合、マッチングのエラー率が上がってしまい、取り組みの動機そのものである信頼性が揺らいでしまいます。また、電力・エネルギーの知見があっても、そのデータをどのようにハンドリングするかといった能力も問われるでしょう。
当社は電力会社の子会社であり新電力としてeo電気を提供していることから、長年培った技術、経験、ノウハウなど有形・無形の資産があります。加えて、ブロックチェーンなどを開発・運用できるITの技術力も保有しています。当社だからこそ開発できるサービスである。そのように確信して同領域で新規事業の検討・開発を進めています。
久木田:
今回の新規事業には「黎明期でニーズが見えにくいなか、脱炭素化のための信頼を確立する」という以外にどのような価値があるとお考えでしょうか。また貴社が脱炭素化事業を展開する強みについてはどのように捉えていらっしゃいますか。
湯井氏:
私たちのサービスを採用いただくことで、その新規性から採用企業のブランディングにも繋がると考えています。また電力グループが運用しているサービスということで、安心感という価値も提供できると思います。関西電力グループの研究所や現場には、電力/エネルギーに精通したスペシャリストが数多く在籍しています。技術的な問題が起きた際、技術部門に駆け込めば必ずと言ってよいほど答えがある。その蓄積されたアセットや知見は何よりの強みです。
お客様にとって「買いやすいサービス」であることも価値ではないでしょうか。オフセット領域に関する悩みや課題を持っていたとしても、解決できるソリューションを探すのは大変だと思います。私たちにお任せいただければ、ベストミックスや具体的な調達を丸ごと支援させていただく心構えです。
橘氏:
私たちはITを活用して課題解決を目指しますが、単に新しいアプリケーションをつくるだけではありません。情報通信事業者としてインフラを安定的に稼働させる運用力こそ、オプテージが提供できる価値であり、最大の強みであると自負しています。
PwCコンサルティング合同会社 X-Value & Transformation パートナー 久木田光明(写真左)
PwCコンサルティング合同会社 Energy & Utilities シニアアソシエイト 歌丸愛依子(写真右)
図2:オプテージが目指す脱炭素事業における中長期ビジョン
歌丸:
最後に脱炭素事業の中長期的なビジョンについて教えてください。
大場氏:
24/365カーボンフリーエネルギー調達の支援に関しては、まず発電サイトや消費サイトを増やして、グループ全体を巻き込んだ検証を行っていきます。また再エネ電力調達の先進的な取り組みに興味がある企業の皆様に抱える課題やニーズを伺いながら、共同PoCを実施していければと考えております。
またオフセットの領域では、カーボンクレジットにも注目しています。日本国内においては、特に炭素吸収・除去のポテンシャルが期待されるブルーカーボンや森林などの領域でクレジット供給量の拡大が見込まれています。地方自治体とも連携し、地方創生にも貢献できる取り組みにしていきたいです。
現在、多くの自治体が脱炭素への貢献手段や新たな収入源としてカーボンクレジット創出にポテンシャルを感じています。しかし、クレジット化に必要な認証を得るためのMRV(Measurement, Reporting and Verification=温室効果ガス排出量の測定・報告・検証)方法論が未整備であることや、整備してあっても信頼性のあるMRV機能を保持できていないことから、ポテンシャルが活かしきれていません。私たちはMRV領域の支援を行い信頼性の高いクレジットの創出を支援するとともに、最終的にはそれらの流通を促進できるプラットフォームを提供していきたいと考えています。
橘氏:
オフセット領域には課題が山積しています。電力/エネルギーの要諦を知り、ITの技術力があり、加えてサステナブルな運用力を持つ当社のような事業者が、取り組むべきだと感じています。
歌丸:
関西電力グループの情報通信事業者というポジションを生かして、黎明市場へ参入し、社会の脱炭素化をドライブしていく非常に重要な取り組みだと感じます。本日はありがとうございました。
社名:株式会社オプテージ
本所所在地:〒540-8622 大阪市中央区城見2丁目1番5号 オプテージビル
カーボンニュートラルの取り組み紹介:https://optage.co.jp/co-creation/#project2
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