
2020-04-10
PwCコンサルティング合同会社は厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業の国庫補助内示を受け、下記の事業を実施します。
【事業の概要】
療育手帳については、昭和48年に発出された厚生事務次官通知に基づき、都道府県知事及び指定都市長が交付の決定等を行うこととされているが、知的障害の程度の基準や、療育手帳交付の基準は都道府県等により様々な状況となっている。
一方で、療育手帳判定基準を統一することについては、確立された定義がないこと、画一的な基準作成が困難なこと等のために、慎重な対応が求められている。
また、手帳の交付の決定及び交付の事務の一部は児童相談所等が担うことになっている一方で、国の社会保障審議会(児童部会社会的養育専門委員会)に設けられた「市町村・都道府県における子ども家庭相談支援体制の強化等に向けたワーキンググループ」では、療育手帳の判定業務について、「その一部等を児童相談所以外の機関が実施している事例等を把握した上で、障害児・者施策との整合性にも留意しつつ、その在り方を今後議論する必要がある」とされ、検討が進められている。
こうした背景を踏まえ、各都道府県・指定都市における療育手帳の統一的な判定基準の作成が可能かについて有識者からなる検討会にて検討するとともに、児童相談所における療育手帳交付事務の実情について、アンケート調査やインタビュー調査を通じて明らかにする。
我が国の障害保健福祉施策は、ノーマライゼーション理念の浸透を受け、在宅を含む地域での障害者の自立した生活を実現するための支援サービスの充実が図られてきた。
一方で、近年の高齢化・生産年齢人口の減少などの社会構造の変化や、医療技術などテクノロジーの進歩、障害者の高齢化及び多様化、特に精神疾患患者、認知症患者、発達障害児者、医療的ケア児等の増加、またそれらを受け止める地域や家庭の力の低下といった新たな状況に直面している。
こうした足元の状況を踏まえて近年の障害福祉施策の新たな課題を整理しつつ、あるべき障害福祉の姿や方向性を示すとともに、障害福祉施策のさらなる展開を進める上で今後国において検討すべき論点を明らかにするため、有識者を構成員とした検討会にて議論を行う。
厚生労働省による「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」において、サービス見込量の推計指針は示されているものの、各自治体が策定している障害福祉計画・障害児福祉計画の障害者のニーズ調査の詳細な手法は各自治体にゆだねられている。
これについては、「PDCAマニュアル」が国により策定・周知されているものの、作成当時対象外であった障害児福祉計画や、新設されたサービス、地域包括ケアの視点を踏まえた改訂が必要となっている。
このため、有識者による委員会を開催し、第6期障害福祉計画・第2期障害児福祉計画の策定について、障害者のニーズを把握しその結果を各種の障害福祉サービスごとのサービス量推計に適切に反映させるための手法を検討し、提示する。
また、上記の結果を踏まえ、改訂版PDCAマニュアルを提案する。
地方公共団体が主体として、地域の特性や利用者の状況において柔軟な形態により実施する地域生活支援事業については、障害者総合支援法において、地方公共団体が障害者福祉計画にてその実施する事項を定めるものとされており、第6期障害福祉計画の策定に際しても、事業の見込み量の推計が必要となる。
しかし、このような見込み量の算出については、現時点では標準的な手法が確立しておらず、地方公共団体がそれぞれ検討し、様々な方法で算出している状況となっている。
本調査研究では、各自治体への調査を通じて、地域生活支援事業の実施及び見込み量推計の状況を明らかにすることで、地方公共団体による各地域に応じた効果的な取組の推進に資するものとする。
厚生労働省が開催する「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」においては、障害福祉サービス等の報酬改定に関する今後の主な課題として、その実態やサービスそのものの効果を測定し、次の報酬改定につなげていくことが示されている。
介護分野においても、厚生労働省による「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」において、効果測定尺度や測定したデータのデータベース構築などについて議論が進められている中、障害者福祉領域においても、科学的裏付けに基づく支援は重要なテーマとなっており、支援効果等を測定するための指標の必要性は高まっている。
しかしながら、障害福祉サービス等においては、十分な評価指標の開発はなされておらず、支援効果の測定はいまだ十分ではない状況である。
こうした背景を踏まえ、自立訓練(機能訓練、生活訓練)について、今後の訓練のあり方を検討するため、障害種別等に応じて効果的に訓練を実施している事例や、宿泊型自立訓練を経て地域生活へ移行した事例、訓練の成果・達成度合いを測る評価指標(アウトカム指標)を効果的に導入し支援に当たっている事例等の実態把握を行うとともに、有識者による委員会を開催し、評価指標の内容や評価方法等についての検証を行う。
共同生活援助(グループホーム)における利用者への介護サービスの提供は、原則として、グループホーム事業所の従事者以外の者による介護を受けさせてはならないとされているが、重度の障害者については、特例として、生活支援員による介護に加えて上乗せで介護サービスの提供が受けられるように、経過措置として利用者ごとに個人単位での居宅介護等の利用が認められている。
一方で、この経過措置については恒久化すべきではないかとの意見もある状況となっており、平成30年度障害福祉サービス等報酬改定において、経過措置の期間を2021年3月31日まで延長し、平成30年度に新設された日中サービス支援型グループホームの施行状況等も見ながら、次期報酬改定に向けて引き続き検討、検証を行うこととされた。
このため、当該経過措置の実施状況等についてアンケート調査等により実態把握を行うとともに、有識者や関係者等が参加する検討委員会を立ち上げ、調査結果に加えて、当該経過措置のこれまでの経緯、既存の調査結果等も踏まえ、当該経過措置の仕組みについての検討を行う。
平成30年度障害福祉サービス報酬改定において、就労系のサービスにおける共通的事項として施設外就労に係る加算の要件緩和が行われ、施設外就労の促進が図られたたほか、内閣府開催の障害者政策委員会において示された資料においても、積極的な企業での実習や求職活動の支援(施設外支援)等の推進を図ることが挙げられている。
また、同報酬改定では、就労移行支援ならびに就労継続支援A型において年齢制限の緩和が行われ、一定の要件の下で65歳以上の利用が可能となっているとともに、厚生労働省が関係府省庁とともに策定した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」において、若年性認知症施策の強化が挙げられており、就労・社会参加も含めて総合的な施策を講じることの必要性が挙げられている。
こうした事情を踏まえ、一般就労への移行に向けた施設外就労、施設外支援の取組や、65歳以上の高齢者、若年性認知症の方々を対象とした取り組みについての好事例等にもとづく支援ノウハウの分析やその共有が求められているところ。
本事業では、アンケート調査及び事例ヒアリング等を通じて就労系障害福祉サービスにおける施設外支援及び施設外就労の実施状況、65歳以上の高齢者、若年性認知症等の方々に向けた支援の現状、ならびにそれらの支援と工賃(賃金)の向上、一般就労への移行との関連について明らかにする。
2015年12月に社会保障審議会障害者部会にて報告された「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」では、本人が望む知己生活実現のため、「親亡き後」への備えも含め、成年後見制度の利用促進や適切な後見類型の選択につなげることが重視され、研修等を実施することとされた。また、2017年3月に閣議決定された「成年後見制度利用促進基本計画」によって、成年後見制度の理解を促進することが示されている。
成年後見制度利用促進基本計画によれば、今後の成年後見制度の利用促進の取り組みを踏まえた需要に対応していくため、地域住民の中から後見人候補者を育成しその支援を図るとともに、法人後見の担い手を育成することなどにより、成年後見等の担い手を十分に確保することとしている。また、法人後見の担い手の育成・活動支援を行う必要があるとしており、「若年期からの制度利用が想定され、その特性も多様である障害者の場合、継続性や専門性の観点から、法人後見の活用が有用である場面もあり、後見監督等による利益相反等への対応を含めた透明性の確保を前提に、その活用を図っていくことが考えられる」と示されている。このようなことから、障害者の権利擁護の観点から障害者の法人後見は重要な要素としてとらえることができる。
ただし、社会福祉法人等による法人後見の取り組みについては、後見監督等による利益相反等への対応を含めた透明性の確保を前提に、その活用を図っていくことが考えられるとされる。また、社会福祉法人においては、地域の様々なニーズを把握し、これらのニーズに対応していく中で、地域における公益的な取り組みの一つとして、低所得者の高齢者・障害者に対して自ら成年後見を実施することも含め、その普及に向けた取り組みが期待されている。以上の国の動向を踏まえ、今後、法人後見の取り組み推進について調査研究事業を実施する。
2019年5月に取りまとめられた「医療・福祉サービス改革プラン」では、組織マネジメント改革を進める必要があるとの方針のもと、障害福祉サービス事業所に対して国及び自治体が求める文書や事業所が独自に作成する文書見直しを進め、文書量の削減に取り組むことが盛り込まれている。また、「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針(平成30年12月25日閣議決定)」において、児童福祉法及び障害者総合支援法において義務付け・枠づけ見直し等の視点から、「障害者支援施設等に対する施設監査については、地方公共団体の事務負担の経験の軽減を図るため、利用者に対する処遇の質の確保に留意しつつ、監査事務を効率化する方向で検討し、2019年度中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされている。これらのプランや方針を受けて、同のような帳票について、どのような簡素化を図ることができるかの実態把握を行い、その対策について検討する必要がある。
既に先行研究がある高齢者福祉・介護保険分野における事業所の状況を踏まえつつ、文書削減について検討する。
※本事例の内容は2020年4月10日時点のものです。