令和6年度障害者総合福祉推進事業の実施について

2024-11-07

PwCコンサルティング合同会社は厚生労働省令和6年度障害者総合福祉推進事業の国庫補助内示を受け、下記の事業を実施しています。

【事業の概要】

障害保健福祉政策についての国際的動向に対応した諸外国の政策等の調査・分析

障害者の施設から地域への移行、自律的な意思決定の推進といった政策課題は、現在の我が国の障害保健福祉政策を検討するうえで重要な課題の1つであり、国際的にも注目されているテーマであるといえる。実際、2022年に国連の障害者権利委員会から日本に提出された総括所見では、これらの課題についての言及がなされていた。

これらの課題の検討に当たっては、諸外国における、同様の課題に対応した現在の制度・取組に至るまでの議論の経緯、現行制度・取組の具体的状況、今後の政策の方向性に関する議論の状況等も重要な情報となると考えられる。この考えのもと、障害者の施設から地域への移行、自律的な意思決定の推進といった政策課題に関する各国の取組状況等について、デスクトップリサーチおよびヒアリング調査を行う。

盲ろう者の生活状況等に関する実態調査

盲ろう者に対する必要な支援施策の検討を行う上で基礎資料を得ることは不可欠である。一方、盲ろう者の生活状況等に関しては、平成24年度障害者総合福祉推進事業「盲ろう者に関する実態調査」以降、全国規模での調査を行っていない。また、他の調査でも盲ろう者の置かれている状況を正確に把握することは難しい。このような状況を踏まえ、現在の盲ろう者の生活状況等の実態について調査する必要がある。

こうした背景から、本事業では盲ろう者の生活実態や社会参加の状況、支援ニーズ、地域生活支援事業等の利用状況等を把握し、今後の盲ろう者支援の在り方を検討するための基礎資料を得ることを目的として、地方自治体や盲ろう者、地域盲ろう者団体を対象としたアンケート調査等を行う。

障害者の地域支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る調査研究

障害者支援施設は、地域移行を推進することや、強度行動障害者・医療的ケアが必要な者等への専門的な支援を行うこと、看取りを行うことなど様々な役割があるが、今後、更なる地域移行を進めていくため、障害者支援施設の役割や機能等を整理することが令和6年度障害福祉サービス等報酬改定検討チームにおいて求められている。

上述の背景を踏まえ、本調査研究は、今後、国が立ち上げる障害者支援施設の在り方に係る検討会に向けた材料を整理するため、検討委員会及び協力団体から意見収集を行うとともに、実態調査(アンケート及びヒアリング)を通じて把握した情報を整理することを目的として実施する。

障害者支援施設における地域移行等の意向確認マニュアルの作成に関する調査研究

厚生労働省では、障害者の意思を尊重した質の高いサービスの提供に資することを目的として、「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年3月31日)を策定し、令和6年度報酬改定において、すべての障害者支援施設の入所者に対して地域移行等の意向の確認をすることを令和6年度から努力義務化、令和8年度からは義務化することとしている。しかしながら、先行研究等によると、障害者支援施設における地域移行等の意向確認についての実施状況及び実際の支援方法は、施設によってさまざまな状況であることが分かっている。

上述の背景を踏まえ、本調査研究は、令和8年度から障害者支援施設の入所者の地域移行等の意向確認が義務化されることを踏まえ、障害者支援施設における地域移行等の意向確認の取組に、より実効性を持たせるため、地域移行等の意向確認についてのマニュアルを作成することを目的として実施する。

共同生活援助における支援内容の明確化及び支援の質の評価等に係る研究

近年、共同生活援助における営利法人の参入に伴い支援の質に課題のある事業者が散見され、サービスの質の確保が喫緊の課題となっているが、障害福祉サービスの共同生活援助事業所においては、介護保険制度のように新たに指定を受ける事業所を対象とした研修受講が義務付けられておらず、令和5年度の調査研究によると実際に事業所の指定前に事業者向けの研修を行っている自治体は約1割程度となっている。

また、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定検討チームでは、「共同生活援助における障害者の特性に応じた支援や、サービスの質を評価するための具体的な基準の在り方について、支援に関するガイドラインの策定や、管理者、従業者等に対する資格要件や研修の導入等について、令和6年度以降検討する」と示されているところである。

上述の背景を踏まえ、本調査研究は、共同生活援助事業者の支援の質の担保・向上を図るため、共同生活援助の支援に関するガイドラインを策定して共同生活援助の制度趣旨・目的・実施すべき支援内容等を規定すること及び共同生活援助の開設者・管理者・従事者に対する開設前の研修カリキュラム案を策定することを目的として実施する。

知的障害者の恋愛、結婚等に係る情報提供、相談支援等に関する調査研究

人は恋愛や結婚等を通して精神的な安らぎを得たり、大切な人と支え合いながら活力のある生活を送ったりすることにつながっている。しかし、知的障害者については、適切な情報の取得や理解等に困難さがあり、性暴力の被害者等になるリスクや予期しない妊娠につながるリスク等があると言われている。また、そのようなリスクを回避することや、その後の生活への心配等から、性に関する情報に接する機会から遠ざけられたり、恋愛や結婚等に反対されたりすること等も指摘されている。

支援現場の職員や障害者の家族等についても、知的障害のある本人に対してどのように情報提供し、相談支援をしていくべきなのか分からないまま、対症療法的な対応や個々人の考え方による属人的な対応になってしまっている面がある。

本研究では、知的障害者の恋愛、結婚等に関して、自分自身だけでなく相手も尊重した人間関係の構築を含む性に関する情報提供や相談支援等について、先行研究や実践例の収集・分析、アンケート調査等を行う。また、支援者や家族等が活用できる手引きや、知的障害者本人が支援者や家族等と一緒に活用できる学習素材等を作成し、シンポジウムを開催することを目的とする。

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