PwC Japan、「第23回世界CEO意識調査」の日本調査結果を発表

世界経済および自社の成長に対し、日本のCEOは悲観的見方を強める

以下は、日本のCEOに見られた主な傾向

  • 今後12カ月の世界経済の成長に対する見通しは昨年から大幅に低下、自社の成長については、世界で最も悲観的
  • 自社の成長にとって重要な国は、昨年に引き続き中国が1位、米国は2位、3位はタイに代わりベトナムがランクイン
  • 自社の成長見通しに対する3大脅威として、「鍵となる人材の獲得(53%)」、「技術変化のスピード(47%)」、「貿易摩擦(45%)」および「不透明な経済見通し(45%)」を懸念
  • テクノロジー領域において、政府による規制の制約は比較的緩やかであると感じている
  • デジタル化する世界において、従業員のスキルアップへの対応は遅れており、特に「従業員の学習とその活用意欲を高める施策(40%)」に強い課題感を持つ
  • 気候変動を企業の成長機会と認識するCEOが増加傾向

2020年1月21日
PwC Japanグループ

PwC Japanグループ(グループ代表:木村 浩一郎)は1月21日、「第23回世界CEO意識調査」の日本調査結果を発表しました。同日PwCグローバルが発表した調査から、日本企業のCEO139名の回答に焦点を当て、世界全体や他地域と比較を行い、日本企業が置かれている状況や今後の課題について考察したものです。

今後12カ月の世界経済の成長が「減速する」と回答した日本のCEOは、昨年の27%から68%へ大幅増、世界全体よりも高い水準で懸念を示す

今後12カ月間で、世界経済の成長に対する見通しが「改善する」と回答した日本のCEOは12%で、昨年の33%より21ポイント下がる結果となりました。一方、「減速する」と回答した日本のCEOは昨年の27%から68%へと大幅に増加しました。世界全体でも同様の傾向が見られ、「改善する」とした回答は昨年の42%から22%と大幅に減少し、「減速する」と回答したCEOは昨年の29%から53%まで大幅に増えました。そのような中で、中国のCEOは11ポイント伸ばして84%が「改善する」と回答しています【図表1】【図表2】。

世界全体で「減速する」と回答したCEOの比率が「改善する」を大きく上回っており、世界経済の今後に対して警戒感が広がっていることがうかがえる結果となりました。

また、今後12カ月間の自社の成長に対し「非常に自信がある」と回答した日本のCEOは、昨年の19%から11%に減少しました。これは主要国の中で最も低い割合となりました。世界全体においても、昨年の35%から27%へと減少し、世界経済の成長見通しと同様に、自社ビジネスの成長についても自信を低下させています【図表3】。

自社の成長にとって重要な国は、昨年に引き続き中国が1位、米国は2位、3位はタイに代わりベトナムに

日本のCEOが自社の成長のために重要視する上位2カ国は、中国(70%)、米国(67%)と、昨年同様の顔ぶれとなりました。3位は、昨年のタイ(昨年20%)に代わってベトナム(21%)がランクインしました【図表4】。

世界全体では、昨年に引き続き1位米国(30%)と2位中国(29%)が拮抗する一方で、「他になし」という回答が3位(18%)になりました。

「鍵となる人材の獲得(53%)」、「技術変化のスピード(47%)」、「貿易摩擦(45%)」および「不透明な経済見通し(45%)」は日本のCEOの3大脅威

日本のCEOは、1位から3位まで昨年と同じ結果となりました。それに加えて、今年は「不透明な経済見通し」も3位に入りました。一方、世界のCEOは、2019年はトップ10の圏外にあった「不透明な経済見通し(34%)」が、過去1位をとり続けている「過剰な規制(36%)」と、2位の「貿易摩擦(35%)」に迫る3位に躍り出ました【図表5】。

「貿易摩擦」が自社の事業モデルや成長戦略に与える影響について、日本のCEOは「サプライチェーンと調達戦略を調整(32%)」、「成長戦略を代替国・地域にシフト(24%)」と回答する一方で、「事業モデル・成長戦略に変更はない(29%)」との回答もありました【図表6】。

世界全体でも同様に、「サプライチェーンと調達戦略を調整(43%)」、「成長戦略を代替国・地域にシフト(26%)」に加え、「事業モデル・成長戦略に変更はない(32%)」という結果になりました。一方で、中国のCEOは、「サプライチェーンと調達戦略を調整(58%)」、「成長戦略を代替国・地域にシフト(58%)」、「生産を代替国・地域にシフト(63%)」と回答しました。

テクノロジー領域における政府による規制の制約は、比較的緩やかであると感じている

世界全体では3分の2を超えるCEOが、「政府は民間部門にインターネット(ソーシャルメディアを含む)コンテンツを規制するよう強制する法令を次第に導入する」、「政府は支配的な技術企業を解体するために、競争法/独占禁止法を次第に導入する」と考えています。また、半数を超えるCEO(51%)は「政府は民間部門が収集した個人データに対して、金銭的報酬を個人に支払うように強制する法令を次第に導入する」ことも予測しています。

一方、日本のCEOは、約半数(47%)が「政府はほとんどの場合、民間部門がインターネット(ソーシャルメディアを含む)のコンテンツを自主規制することを許可し続ける」と予測しています。支配的な技術企業に関しては、「政府は、支配的な技術企業を解体するために、競争法/独占禁止法を次第に導入する」が49%、「政府は、支配的な技術企業が競争法や独占禁止法に左右されないまま成長できるようにする」が41%と、意見が分かれる結果となりました。そして、61%が「政府は、民間部門が収集した個人データに対して、どのように個人に報いるかを自主決定することを引き続き認める」と見ています【図表7】。

デジタル化する世界において従業員のスキルアップに対する取り組みは中国、米国と比べて圧倒的に後進国

自社のスキルアップに関するプログラムの導入進捗について、日本のCEOが「大きく進展している」と回答した割合は2%で、世界全体(18%)、中国(35%)、米国(8%)から大きく遅れをとっています【図表8】。

「将来の成長戦略を推進するために必要な技能の定義」については、日本(1%)、中国(41%)、米国(21%)。「テクノロジーとその潜在的な意味合いについて、従業員およびリーダーの知識向上」は、日本(2%)、中国(35%)、米国(8%)となり、日本企業のスキルアップへの取り組みはほとんど進捗していない実態が明らかになりました【図表9】。

現在のスキルアップの取り組みにおいて直面している重要な課題について質問したところ、日本のCEOは「従業員の学習とその活用意欲を高める施策(40%)」、「必要なスキルアッププログラムを実施するための資源(予算、人材、時間、知識など)の不足(16%)」、「獲得すべきスキルの定義(13%)」と回答しました。世界全体では、「既に必要なスキルを獲得している従業員の定着(15%)」、「必要なスキルアッププログラムを実施するための資源(予算、人材、時間、知識など)の不足(14%)」、「将来必要とされる新しいスキルを学ぶ従業員の能力(14%)」と回答しました【図表10】。

日本のCEOも気候変動への取り組みを企業の成長機会と捉えようとしている

10年前と比べて、気候変動への取り組みに対する世界のCEOの意識が変化しています。「従業員を含む主要な利害関係者に有利な評判をもたらす」との考えに「強く同意する」と回答したCEOの割合は現在2倍に上っており(2010年の16%に対し2020年は30%)、「自社にとって重要な新しい製品やサービスの機会につながる」と考えるCEOの割合は2010年の13%に対し、2020年は25%となりました。

日本のCEOも「自社にとって重要な新しい製品やサービスの機会につながる(22%)」、「従業員を含む主要な利害関係者に有利な評判をもたらす(19%)」に強く同意する一方、「グリーンな投資に対する政府基金や財務的インセンティブから恩恵を受ける(6%)」となりました【図表11】。

日本および世界全体で、CEOが気候変動を企業成長の機会と捉えていることが分かりました。

以上

※世界CEO意識調査の翻訳プレスリリースは以下に掲載しています

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注記

本調査は、2019年9月から10月にかけて実施され、全世界83カ国1,581名のCEOから回答を得ました。データのサンプル数は、全ての主要国におけるCEOの見解を公平に反映するために、各国のGDP加重で算出されています。インタビューは電話(7%)、オンライン(88%)、郵送または面談(5%)によって行いました。定量インタビューはいずれも匿名で実施されました。売上高別では、10億米ドル以上の企業のCEOが46%、1億~10億未満の企業のCEOが35%、1億米ドル未満の企業のCEOが15%でした。非上場企業のCEOは55%でした。

日本のCEOの回答数は139名で、売上高別では10億米ドル以上の企業のCEOが54%、1億~10億未満の企業が42%、1億米ドル未満の企業が1%、また非上場企業のCEOは55%でした。

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