PwC Japan有限責任監査法人(東京都千代田区、代表執行役:井野 貴章、以下「PwC Japan監査法人」)は、徳洲会インフォメーションシステム株式会社(大阪府大阪市、代表取締役社長:尾崎勝彦、以下「徳洲会インフォメーションシステム」)、一般社団法人医療ISAC(東京都中央区、代表理事:深津博、以下「医療ISAC」)、東京工科大学(東京都大田区、学長:香川豊) の片柳研究所 デジタルヘルス・イノベーションセンター(以下、「DHIC」)とともに、国内の医療現場の実態に適した医療AIの利活用に向けたガバナンスモデルを検討するとともに、それらを医療分野の課題解決に向けた技術・製品に活用していく共同研究を開始します。
この医療AIガバナンスの共同研究は、国内医療分野固有の業務・環境特性を考慮した観点より、現場志向性の高い医療AIガバナンスモデルを共同で検討するとともに、今後の医療機関が直面する課題解決につながる技術・製品への活用を目的としています。共同研究の内容は2つのフェーズで構成されています。第一フェーズの研究は「国内医療分野の実態に適したAIの利活用に向けたガバナンスモデルの設計」です。そして、第二フェーズは、第一フェーズで得られた成果を活用し「医療分野の課題解決に向けた技術・製品に活用していく産学共同研究」を行います。
第一フェーズ:国内医療機関の現場・実態に適した医療AIガバナンスの設計
2025年には国民の約3人に1人が65歳以上となる高齢化社会を迎える日本において、医療提供体制の維持は重要な課題です。24年4月からは医師の働き方改革に伴う時間外労働の制限が開始され、この課題はより深刻な状況に直面しています。限られた医療従事者の人的リソースを適正に配分し、本来取り組むべき業務に集中させるための取り組みがさまざまに検討されるなか、生成AIを含む人工知能技術の利活用は重要な解決策の一つとして取り上げられています。
しかしながら、こうしたAI技術を国内の医療分野で適切に利活用するためのガバナンスモデルは未だ明確に整理されていません。また、海外の医療分野で運用されるガバナンスモデルを日本国内へ持ち込んだとしても、医療という領域自体がその国固有の法令や規制、または社会慣習や国民感情等、さまざまな条件が複合的に絡み合うなかで成立しているため、十分な成功を期待することは難しいといえます。そのため、国内における実効的な医療AIガバナンスの設計にとって、国内の医療業界固有の特性をしっかりと反映させることが不可欠です。
さらにAIという新たな技術を適切に利活用するには、その技術基盤自体に係るセキュリティの確保も重要です。国内の医療機関が安全にAI技術を利用するために、現行の医療機関における院内セキュリティにどのような課題があり、その対応をいかに合理的に行うかという観点も含めた検討が必要です。しかしながら、こうした検討もいまだ端緒の段階にある状況です。
PwC Japan監査法人は、監査法人として培ってきたリスクアシュアランスの方法論に基づく、AI技術のガバナンスに関するナレッジを有しています。徳洲会グループのシステム統括を担う徳洲会インフォメーションシステムが保有する医療AIの豊富なユースケース群をもとに、医療ISACが有する国内医療機関におけるセキュリティ実態の豊富な知見とPwC Japan監査法人が有するナレッジを組み合わせ、国内の医療機関の実態に寄り添う、現場志向型の医療AIガバナンスモデルを3社共同で検討します。
第二フェーズ:医療分野の課題解決に向けた技術・製品に活用していく産学共同研究
第一フェーズから導かれる国内の医療機関の実態に適した医療AIガバナンスのモデルは、東京工科大学DHICが医療現場に即した技術・製品の基礎・応用研究開発を行っていく活動へも共有されます。
DHICにおける医療AR・VRも含めた幅広い研究開発の観点より、医療AIガバナンスモデルへのフィードバックを受けるとともに、その内容を、今後、医療機関が直面するさまざまな課題を解決するための技術・製品の研究開発にも活用していきます。このように、「産」と「学」が一体となり、循環的な相互フィードバックを行うことを通して、国内の医療機関における効果的なAIガバナンスの高度化を促進します。
これらのフェーズのなかで、PwC Japan監査法人は、国内の医療機関の現場・実態に適した、セキュアなAI利用のガバナンスモデルを産学一体の体制の中で構築し、継続的な高度化を推進することを通して、医療提供体制の継続性を揺るがす、医療従事者のリソース不足という社会課題を、AIという新たなテクノロジーによって解決する取り組みに貢献していきます。
<PwC Japan監査法人 執行役 パートナー 宮村和谷のコメント>
医療分野におけるAIの導入を実現し、効果を最大化していくには、AIで想定される正と負の双方のインパクトにかかわるリスクを把握し、幅広いステークホルダーの目線を意識して適切にコントロール・ガバナンスする態勢の構築と運用が必要になります。私たちは監査法人として長年培ってきたリスクアシュアランスの方法論を活かし、AIのガバナンスの確立に取り組み、AIを活かした医療現場の課題解決に貢献していきたいと考えています。
<徳洲会インフォメーションシステム 代表取締役社長:尾崎勝彦氏のコメント>
徳洲会グループのシステム基盤を管轄する企業として、グループ病院でもAIの利活用をさまざまに推進していますが、国内の医療現場の特徴を踏まえた、体系的な管理方法の確立は喫緊の課題と考えています。こうした共同検討を外部の知見も含めて検討できることは貴重だと思われますので、こうした取り組みを確実に進め、国内医療分野への社会貢献ができることを期待します。
<東京工科大学 片柳研究所 デジタルヘルス・イノベーションセンター センター長 田仲浩平氏のコメント>
当センターで研究する製品に医療AIのセキュアな活用モデルが採用できることは非常に有益な取組と考えています。XRトレーニング、AIグラス、メタバーストレーニング等、さまざまな技術要素を活用した当センターの研究開発においてこうしたAIガバナンスモデルを活用するとともに、研究開発上の成果をモデルにフィードバックしていくことで、産学共同の円滑なシナジーが発揮されていくことを期待します。