PwCコンサルティング、幸福学の第一人者・前野 隆司氏と共同実施した「全国消費者実態・幸福度調査2020」を公開

幸福度マーケティングにおける協業開始

2020年12月24日
PwCコンサルティング合同会社

PwCコンサルティング合同会社(東京都千代田区、代表執行役CEO:大竹 伸明)は12月24日、幸福学の第一人者・前野 隆司氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)と共同で全国の消費者を対象に実施した「全国消費者実態・幸福度調査2020」を公開しました。同時に、「幸福度測定理論」と顧客起点・データ起点での企業変革を実現する「データドリブンマーケティング」を活用したコンサルティングサービスにおいて前野氏が代表取締役を務めるEVOL社との協業を開始しました。

近年、SDGs、サステナビリティ、パーパス・ドリブンといったテーマで活発な議論が展開されています。こうした時代に、企業が持続的に成長するためには、経済的利益を追求するだけでなく、社会の期待に応えていくことが強く求められています。当社は、企業が顧客の「幸福」にとことんまでコミットし、経済的利益と社会的利益を同時に最大化することこそが目指すべき姿であると考え、幸福度研究を専門としている前野氏との調査を実施しました。

「全国消費者実態・幸福度調査2020」の主な調査結果

当調査の目的は、日本における消費者像の詳細把握および消費者の幸福度合いとそのメカニズムの把握です。幸福度を測定※1した上で、前野氏が定義されている幸せの4因子(やってみよう!因子、ありがとう!因子、なんとかなる!因子、ありのままに!因子)に影響を及ぼす要因を特定するために、決定木分析※2・共分散構造解析※3を用い、分析しました。以下は、今回の調査から特に浮き彫りになった点です。

※1 測定には、米国イリノイ大学名誉教授Ed Diener氏が開発した「人生満足尺度」と、前野氏が開発した「幸せの4因子」を採用

※2 「予測」や「判別」、「分類」を目的として使われるデータマイニング手法。 目的変数に影響する説明変数を見つけ、樹木状のモデルを作成する分析方法

※3 直接観測できない潜在変数を導入し,潜在変数と観測変数との間の因果関係を同定することにより社会現象や自然現象を理解するための分析方法

1. 日本人の幸福度に影響を与えるのは、「信じる拠りどころ」「自信」「考え方」などの「心の持ちよう」

今回明らかになったのは、年齢や年収、学歴などの属性だけでなく、消費者の幸福度には、家族、恋人、自分の能力などの「信じる拠りどころ」、コミュニケーション力や頭の良さなどにおける「自信」、そして楽観性や他者からの感謝に喜びを感じるなどの「考え方・価値観」などの「心の持ちよう」が大きく影響を与える点です。また、実際に幸福度が高い方は、家族・恋人・友人・科学・自分などを信じ、あらゆる点において自信が高い傾向にあることが分かりました。これは、幸福度とは、年齢や年収などのコントロールがしにくいものというよりも、個人個人の主観的な「心の持ちよう」によって、幸福度を高めること(逆に、下げてしまうこと)ができるものであることを示唆しています。

2. 新型コロナウイルス感染症が幸福度に与えた影響は限定的

新型コロナウイルス感染症が幸福度に与えた影響について、約75%の調査対象者が、主観的には、変化がないと回答しています。調査実施時期が9月(新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、東京都を含む7都府県にて緊急事態宣言が4月7日に発出されてから半年弱が経過)ということを加味すると、新型コロナウイルス感染症との付き合い方についての一定程度の慣れが出てきたことで、本調査が主眼とする「長期的な意味での幸福度」への変化が限定的であったのではないかということが1つの仮説として考えられます。

3. 日本人は、家族など何らかの信じる拠りどころを持ち、比較的、慎ましい幸せを幸福に感じ、自分の信念を貫き、人に感謝されることに喜びを感じる傾向にある。一方で、多くの日本人は、コンプレックスが強く、リーダー気質や楽観性も弱い

本調査の分析に基づくと、「信じる拠りどころ・自信があり、特定の価値観を有する(楽観的、感謝を喜びとするなど)という「心の持ちよう」が、幸福度の高い日本人の典型的な特徴と考えられる事を踏まえて、日本人の多くはどういった「心の持ちよう」なのかを調査しました。結果、多くの日本人は、家族・恋人などの対人関係や、科学、市場経済、自分の能力など何らかの「信じる拠りどころ」を持ち、大きな野心よりも、「慎ましい幸せ」を幸福に感じることが多く、周囲との調和よりも「自分の信念を貫く」ことを重視し、また、人に勝つよりも「人に感謝されること」に喜びを感じる方が多いことが明らかになりました。

一方、多くの日本人は、外見や収入を中心に、全体的に自信よりもコンプレックスが強く、リーダー気質というより「控えめ」で、未来は明るく楽しみというより「未来は不確実で不安だ」と考える方が多いなど楽観性もやや弱いことが分かりました。この調査結果には、従来、日本人の国民性として言及されることが多い特徴(「控えめ」、「感謝を喜びとする」など)だけでなく、近年のテクノロジー進化の速さや新型コロナウイルス感染症の感染拡大を含む「VUCA※4」時代の環境変化の激しさによる時代性(「未来は不確実で不安だ」、「自分の信念を貫く」など)も反映されていると推察されます。

※4 VUCA(ブーカ)とは、Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)という4つのキーワードの頭文字をつなげた造語

前野 隆司氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)の調査に関するコメント

幸福学研究者である私にとって、幸福感と「信じる拠りどころ」「自信」「考え方・価値観」の関係解析を行ったのは初めてでしたので、興味深い結果に満足しています。幸せな人は、家族・恋人・友人・科学などを信じるとともに、自分を信じて自信を持つことが重要であることを確認できました。
また、新型コロナウイルス感染症と幸福度との関係はマクロには強くないと考えられるという結果となりましたが、ミクロには様々な変化が起きていると考えられ、詳細の変化についてはさらに検討する余地が残されていると考えられます。新型コロナ、グローバルイシューなど、先の読めない事態が山積した現代社会であるからこそ、周りと自分を信じ、幸福度を高めて行動を起こすことが必要であると考えられます。このたびはPwCとの協業により興味深い結果を得ることができました。今後も、様々な皆様と協力し、個々の多様性を生かすことによって、さらに幸せな社会を創っていきたいと考えています。

プロフィール

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。キヤノン株式会社でのエンジニア職、慶應義塾大学理工学部での教員職を経て現職。研究分野は人間システムデザイン(社会・コミュニティー、教育、地域活性化、農業、NPO、ヒューマンインタフェース、認知科学・哲学など)、幸福学など。著書は「思考脳力のつくり方」(角川新書)、「幸せのメカニズム」(講談社)など多数。幸福学に関する豊富な学術研究実績を基盤に、社員の幸福度と創造性を高めるためのコンサルティング・研修や、個人の幸福度とレジリエンスを高めるためのコンサルティング・ダイアログを実施するEVOL株式会社代表取締役も務める。

「全国消費者実態・幸福度調査」2020概要

  • 調査目的 日本における消費者像の詳細な把握および消費者の幸福度合いとそのメカニズムの把握
  • 調査方法 調査会社パネルを活用したインターネット調査
  • 調査期間 2020年9月18日(金)~2020年9月23日(水)
  • 調査対象 日本全国の15歳~79歳の男女
  • 有効回答 5,016件
  • ダウンロード先 URL:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/well-being-report2020.html

データアナリティクスを活用した幸福度マーケティング支援サービス

幸福度マーケティングは、クライアント企業が、「幸福度」を起点に顧客との長期的かつ親密な関係性を構築するための手法です。このたび新たに提供開始するサービスの主な内容は、(1)顧客の幸福度調査の設計・実査、(2)AIアナリティクスを活用した、財務指標と幸福度の相関関係や幸福度要因の分析・示唆出し、(3)幸福度決定要因に基づいた幸福度向上の打ち手設計です。当社がさまざまな企業変革やマーケティング、そしてデータアナリティクス支援プロジェクトで培った知見に加え、幸福度研究を専門としている前野氏の知見を活用することで、幸福度を軸とした顧客とのより的確な関係性構築が可能になり、クライアント企業の経済的価値(ライフタイムバリュー)、そしてSDGs目標の達成貢献も含む社会的価値の最大化を同時に実現することを支援します。

以上

本調査について 

「全国消費者実態・幸福度調査2020」は、全国5,000人のアンケート調査をベースとした日本人の価値観・生活・お金・消費および幸福度について調査したPwC独自のデータソースです。「幸福度」を起点とした顧客との長期的かつ親密な関係性の構築、それを通じた、経済的価値・社会的価値の最大化を実現するための施策を検討する上での指針となるインサイトやデータをご紹介しています。

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データドリブンマーケティングチームについて 

PwCコンサルティングのデータドリブンマーケティングチームでは、幸福度マーケティングを含む「AIアナリティクスを活用したデータドリブンマーケティング」、および、「データドリブンマーケティング成熟度向上」をミッションとしたチームです。

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PwCコンサルティング合同会社について

PwCコンサルティング合同会社は、経営戦略の策定から実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供しています。PwCグローバルネットワークと連携しながら、クライアントが直面する複雑で困難な経営課題の解決に取り組み、グローバル市場で競争力を高めることを支援します。

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PwCについて

PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界157カ国に及ぶグローバルネットワークに276,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。

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PwC Japanグループについて

PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社の総称です。各法人は独立した別法人として事業を行っています。

複雑化・多様化する企業の経営課題に対し、PwC Japanグループでは、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして法務における卓越した専門性を結集し、それらを有機的に協働させる体制を整えています。また、公認会計士、税理士、弁護士、その他専門スタッフ約9,000人を擁するプロフェッショナル・サービス・ネットワークとして、クライアントニーズにより的確に対応したサービスの提供に努めています。

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