新リース会計基準(リース会計基準の改正)の導入支援サービス

企業会計基準委員会(ASBJ)は2019年3月に、借手の全てのリースについて、資産および負債を認識する会計基準の開発に着手することを決定しました。その後、ASBJは関連する業界団体からの意見を取りまとめ、各論点について検討し、現行のリース会計基準の改正を目的として、2024年9月13日に以下の会計基準等(以下、これらを併せて「新リース会計基準」)を公表しました。

  • 企業会計基準第34号「新リース会計基準」
  • 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」ほか

ASBJは2007年3月、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下、これらを併せて「現行のリース会計基準」)を公表しました。これにより、リースに関する日本の会計基準は当時の国際的な会計基準と整合的なものとなりました。

しかし、その後2016年1月に国際会計基準審議会(IASB)が国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(以下、「IFRS第16号」)を公表し、同年2月には米国財務会計基準審議会(FASB)がFASB Accounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic 842「リース」を公表しました。

これらの会計基準は、借手の会計処理に関して、費用配分の方法が異なるものの、原資産の引き渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルにより、オペレーティングリースも含む全てのリースについて資産および負債を計上することとしています。この結果、日本の会計基準とは、特に負債の認識において違いが生じることとなり、国際的な比較において議論となる可能性がありました。

この状況を踏まえ、ASBJは財務諸表作成者および財務諸表利用者から幅広く意見を聴取したうえで、借手の全てのリースについて資産および負債を計上する会計基準の開発に着手することを決定し、検討を重ねて新リース会計基準等を公表しました。新リース会計基準は、現行のリース会計基準を置き換えるものとなっています。

新リース会計基準の適用時期

新リース会計基準は以下のとおり、2027年度から強制適用となり、早期適用も可能です。

  • 2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用する。
  • ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から本会計基準を適用することができる

また、新リース会計基準に関連すると考えられるIFRS第16号の経過措置を取り入れるとともに、実務上の負担に対応するために日本特有の経過措置を設けています。

新リース会計基準の内容

新リース会計基準において、借手はオペレーティング・リースを含む全てのリースについて、原則として、現行のリース会計基準におけるファイナンス・リースの会計処理に類似する会計処理を行います。

[借手の会計処理のイメージ]

貸借対照表
【リース取引開始時】

借方 貸方
使用権資産*1 リース負債*2

*1:リース負債の金額に所定の項目の金額を加えた金額を使用権資産として計上
*2:支払リース料総額の現在価値をリース負債として計上

損益計算書
【その後】

借方 貸方
減価償却費*3 使用権資産
支払利息*4
リース負債*5
現預金等

*3:リース期間等にわたって、定額法等(注)で償却。
*4:リース期間にわたって、原則として利息法で会計処理。
*5:支払いに応じて、減額。

(注)使用権資産の償却方法について

原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース:原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定。
上記リース以外のリース:定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定。

新リース会計基準の借手の主要な業績指標への影響

現行のリース会計基準上の借手のオペレーティング・リースがオンバランス処理され、関連する減価償却費および支払利息が計上された結果、以下のような借手の主要な業績指標が影響を受ける可能性があります。

  • EBITDA(利息、税金、減価償却費考慮前利益)の上昇、営業利益の上昇
  • 負債資本比率(D/Eレシオ)の上昇
  • 総資産利益率の低下
  • 自己資本比率の低下 など

新リース会計基準への対応のポイント

①リースの識別

リースとは「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分」であると定義されています。具体的には、下図の「リース判定Step」に示すように、契約において「特定された資産」が存在し、特定された資産の使用期間全体を通じて、①顧客が特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんど全てを享受する権利と②顧客が特定された資産の使用を指図する権利の両方を有している場合に、当該契約はリースを含むと判定されます。

同じような契約であったとしても、契約条件が少しでも違うと、契約がリースを含んでいるかどうかの判定結果が異なる可能性があるため、契約がリースを含んでいるかどうかを判断するには、契約条件を詳細に検討する必要があります。したがって、実務対応上は、リースを含んでいる契約をどのように洗い出していくかが課題となると考えられます。例えば、リースを含んでいる契約が紛れている可能性のある勘定科目に着目して、リースを含んでいる可能性のある契約書(不動産賃貸借契約、運送業務委託契約、IT業務サービス契約など)を絞り込んでいく方法や、契約書のひな形の一覧からリースを含んでいる可能性のある契約書を絞り込んでいく方法など、リースを含む契約を洗い出すための適切な方法を模索する必要があると考えられます。

②リース期間

新リース会計基準では、リースの延長または解約オプションの対象期間について企業の合理的な判断に基づき、資産および負債を計上することが財務諸表利用者にとって有用な情報をもたらすこと、また、IFRS第16号におけるリース期間の定めと整合させない場合には国際的な比較可能性が大きく損なわれる懸念があると考えられることを理由として、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間、および借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を加えて決定することを提案しています。

借手のリース期間の決定は、借手が貸借対照表に計上する資産および負債の金額に直接的に影響を与えるものであり、借手の会計処理上、重要な要素として位置づけられます。そのため、リース期間の決定に重要な影響を及ぼすことになる当該オプションの行使可能性の評価(すなわち、当該オプションを行使するまたは行使しない可能性が「合理的に確実」であるかどうかの判断)が重要な検討ポイントになると考えられます。

新リース会計基準への対応ロードマップ概要案

2027年4月以降に開始する事業年度から新リース会計基準が適用されるため、準備期間は2年半になります(3月期決算会社の場合)。新リース会計基準の適用にあたり、会計方針・注記の検討に加え、リースの網羅的な情報収集、計算プロセスの構築が必要となることから、プロジェクトの対応フェーズを4つに分割して、しっかりと対応していく必要があります。

PwCの支援

新リース会計基準およびIFRS第16号「リース」適用支援実績を豊富に有するメンバーが、新リース会計基準の適用に向けた会計方針の策定から、表示・開示の検討、業務プロセスの構築まで包括的に支援します。

新リース会計基準適用支援実績

既に多数の新リース会計基準適用支援を行っています。また類似したIFRS第16号「リース」適用時に、より幅広い業種に多数の適用支援を行った実績があります。

業界知見×会計専門性×デジタル

金融・事業会社それぞれの業種に知見を有するメンバーが多数在籍しており、業種特有の会計論点検討にも高い専門性をもって支援可能です。
さらにリース判定における生成AIの活用等、デジタルツールを活用した効率的な支援が可能です。

包括的かつOne Stopでのサービス

PwCネットワークを活かして、会計論点整理から業務プロセス構築、システム導入まで包括的にワンストップでのサービス提供が可能です。

新リース会計基準(リース会計基準の改正)の導入支援サービス パンフレット

主要メンバー

上村 哲司

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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杉田 大輔

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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稲田 丈朗

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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山田 哲也

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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本村 憲二

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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增田 裕一

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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