品質不正問題に係るガバナンス強化とリスクカルチャー醸成の支援

品質不正問題とその対策:信頼向上に向けたガバナンス強化とリスクカルチャーの醸成

品質不正に係る行為は、企業の信頼を大きく揺るがし、ステークホルダーの信頼を失うという結果につながりかねません。品質に対する不正行為の原因は、一般的には品質より、コストや納期を優先してしまうことにあると考えられますが、事案の詳細を掘り下げていくと原因は多岐にわたります。製品の品質への信頼を維持・向上させるための打ち手としては、原因の性質に応じた「ガバナンスの強化」と、それを支える「リスクカルチャーの醸成」が有効と考えられます(図表1参照)。

ガバナンスの強化

ガバナンスの強化のための方策としては、内部監査人協会(IIA)の3ラインモデルに沿って各部署の役割および責任を明確化することが考えられます。

上記3ラインモデルに沿って品質コンプライアンスに関する各ラインの役割・責任を当てはめると、以下の役割が考えられます。

リスクカルチャーの醸成

リスクカルチャーとは、従業員のリスクに対する考え方や認識、行動の総体を指します。リスク管理は主に「守り」の側面から捉えらますが、リスクカルチャーはリスクをどのように取っていくかという「攻め」の側面も含むものであり、組織文化やガバナンスの根幹を成すものと言えます。

リスクカルチャーの構成要素としては、「リーダーシップと戦略」「説明責任と強化策」「人材とコミュニケーション」「リスク管理とインフラ」の4つがあります。

リスクカルチャーのフレームワークに品質コンプライアスを当てはめると以下のような取り組みが考えられます。

PwCの考える品質コンプライアンスフレームワーク

PwCでは、組織全体が品質に対する高い意識を持ち、持続的に品質管理を実施するための基盤となる品質コンプラアンスフレームワークを用いています。

ガバナンスの強化とリスクカルチャーの醸成は、PwCの考える品質コンプライアンスのフレームワークとも密接に関連しています。ガバナンスの強化により品質コンプライアンスの基盤を作り、リスクカルチャーの醸成によりその基盤を支えることで、品質不正行為の防止に寄与します。

図表6:PwCの考える品質コンプライアンスフレームワーク
品質コンプライアンスの要素 抑えるべきポイント

取締役会・委員会

マネジメント

  • 経営トップの品質コンプライアンスに対するコミットメント
  • 品質コンプライアンスの順守状況に関する取締役会、専門委員会への報告
3ラインディフェンス
  • 事業部門(1stライン)、品質保証部門(2ndライン)、内部監査部門(3rdライン)の品質コンプライアスに関する役割・責任の明確化
  • 品質保証部門が牽制機能を果たすための権限の確保
予算目標
  • 事業部門にコストや売上に関する予算目標達成への過度なプレッシャー
業績評価・人事評価
  • 事業部門の予算目標に対する達成への評価の適切性
  • 品質不備・不正に関する早期発見、品質目標の達成を評価する人事評価制度
賞罰
  • 品質管理に関するルールを逸脱した場合の罰則の規定および周知
人事異動
  • 品質管理に携わる人員の固定化による業務の属人化・ブラックボックス化

リスク

コミュニケーション

  • 品質コンプライアンスに関する方針および手続きの周知
  • 声をあげた人が守られる仕組みの構築(通報者保護)

ガバナンス強化、リスクカルチャー醸成に関するサービス紹介

PwCでは品質コンプライアンスフレームワークを用いて、ガバナンスの強化とリスクカルチャーの醸成に関する多岐にわたるサービスを幅広いクライアントに提供しています。

ガバナンス態勢の現状評価、実行支援

  • 品質保証のガバナンス態勢の現状評価、あるべき姿とのギャップの特定、特定したギャップに基づく改善策の策定
  • ガバナンス強化に向けた実行支援
  • 品質管理体制監査の実行支援

カルチャーの浸透度合いの定点観測

  • リスクカルチャーサーベイの実施(ジレンマシナリオを用いたカルチャーサーベイによる浸透状況の評価と課題の特定)

 

主要メンバー

辻田 弘志

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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石田 裕幸

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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