PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

需要拡大による物価高がないまま、米関税引き上げの影響が重しに(2025年2月)

  • 2025-03-07

I.2025年2月のまとめ:需要拡大による物価高がないまま、米関税引き上げの影響が重しに

日本経済の足元の動向につき確認していこう。まず国内消費をみると、12月の家計調査において、実質消費支出が前年比+2.7%、前月比+2.3%と前年比・前月比で増加した。実質可処分所得(勤労者世帯)の動きをみると、12月は前年比+3.0%と3か月連続で増加した。実質可処分所得の伸びは強まっているものの、伸びは2024年5月~7月よりは弱く、毎月勤労統計等の比較からは2025年以降は再びマイナスとなる可能性も十分あり得る。引き続き政府は早期に手取り所得を増やす方策を行う必要性が増していると言えよう。一方、1月の商業動態統計では、名目の小売業販売額は前年比+3.9%、前月比+0.5%となった。業態別の前月比でみると、特にドラッグストア、家電大型専門店、コンビニなどで増加した。また、実質化した小売業販売額は2024年に入りやや持ち直しの動きがみられるもものの、2024年終盤からは横ばいで推移している。次に設備投資動向をみておこう。12月の機械受注統計は、「船舶・電力を除く民需」(コア受注)は前月比-1.2%となり、3か月ぶりに減少し8,893億円となった。10-12月期のコア受注は、前期比+2.9%となり、3四半期ぶりの増加となった。しかし、内閣府の見通しによると1-3月期のコア受注は-2.3%と再び減少に転じる見込みである。1月の鉱工業生産は、前月比-1.1%と3か月連続の減少、前年比でも+2.6%と3か月ぶりの増加となった。10-12月期生産の対7-9月期比は+1.1%であったが、10月期生産の対7-9月期比は+2.9%となった。生産は11月以降減少が続いていることもあり、1月生産の対10-12月期比は2%程度の減少となっている。これまでの弱めの生産の動きから判断する限り、1-3月期の生産が前期比で増加する可能性は低いように思える。外需に目を転じると、1月の貿易統計では、名目輸出金額は前年比+7.2%となり、4か月連続で増加した。地域別には米国・アジア向けが増加も、EU・中国向けが大幅に減少した。輸出数量は、前年比-1.7%となり、減少傾向が継続している。以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。12月の景気動向指数における一致指数は116.8となった。11月から1.4ポイント上昇して2か月ぶりに上昇した。3か月後方移動平均や7か月後方移動平均の前月差をみると、CI一致指数の3か月後方移動平均は0.93ポイント上昇と4か月連続の上昇、7か月後方移動平均は0.06ポイント下降し、こちらは6か月ぶりの下降となった。物価面をみると、1月の企業物価指数では、国内企業物価指数が前月比+0.3%(前年比+4.2%)、輸出物価指数は円ベースで前月比+1.3%(前年比+4.5%)、契約通貨ベースで同+0.2%、輸入物価指数は円ベースで前月比+1.5%(前年比+2.3%)、契約通貨ベースで同+0.1%となった。1月の全国消費者物価は、総合で前年比+4.0%、生鮮除く総合で同+3.2%となり、12月から伸びが強まった。食料(酒類除く)及びエネルギー除く総合(欧米型コア指数)は同+1.5%と、1%台半ばの伸びであり、2%を下回って推移する状況が続いている。

日本では12月は冬のボーナスもあり、所得の伸びはみられたものの、消費主導で経済・物価を押し上げる姿からは遠い。さらに足元でトランプ大統領による中国・カナダ・メキシコに対する関税の引き上げ、各国からの報復関税の実施を受けて貿易・経済縮小への懸念が高まっている。また、トランプ大統領は日本に対しても為替レートや国内税制に関する政策を発動する可能性があり、その内容や時期を含めて注意深くみていく必要がある。


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執筆者

薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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