戦略的リスクマネジメント(ERM)

ERMとは

ERMとは、Enterprise Risk Managementの略称であり、全社戦略の実現のため、あらゆるリスクを総合的・包括的に管理し、迅速かつ適切にリスク対応を行うためのリスクマネジメント手法です。

日本企業におけるERM再構築の必要性

国家・地域間の紛争や経済的衝突、政権交代、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生や、生成AIをはじめとしたさまざまなイノベーションなど、日本企業にとっての外部環境は、歴史上類を見ないスピードで目まぐるしく変化しています。これら外部環境の変化は、ステークホルダーの価値観を変えるだけでなく、働き方など自社の内部環境にも変化を引き起こしています。また、これら外部環境の変化に伴い、伝統的な株主資本主義の時代からマルチステークホルダーの価値を重視するサステナブルな資本主義の時代へと変わりつつあります。結果として、株主をはじめとした外部ステークホルダーからの要請や改訂コーポレートガバナンス・コードの要求、非財務情報の開示要請などが強まっており、企業の存続のためには不確実な時代の変化に合わせて自社のビジネスモデルや戦略を見直すことが急務となっています。

ビジネスモデルや戦略の見直しにあたっては、その機会・脅威の影響を予測し、現状のリスクシナリオ、重要性の識別基準、体制、インフラをはじめとしたERM全体の枠組みが不確実な時代において機能するかどうかを見極めることが重要です。

現状のERMの問題点と戦略的ERMへの移行への課題

COVID-19の影響により、DXは個別の業務プロセス改革から経営戦略としての改革へと進化し、業務オペレーションのデジタル化が急速に進展しました。その一方で、ロシアによるウクライナ侵攻などの危機事象は多くの企業に大きな影響を与え、リスクの抽出や評価など、従来のERMやBCPの根幹に係る部分において問題が顕在化しました。企業は事業運営リスクだけでなく、戦略リスクも含めてERMの中で扱う必要がありますが、リスクシナリオが不十分であるなど、いまだ課題は多く、ERMを全社戦略策定の前提と位置付けられている企業はほとんど存在していないのが実情です。

そのような事業環境下において新たなビジネスモデル・戦略を遂行するためには、ERMを全社戦略と融合させ、適切な経営資源配分のもと経営目標を達成することが求められます。そのためにも、企業としてのレジリエンスを高め、外部ステークホルダーからの評価を高めることで企業価値を向上させる「戦略的ERM」の構築が必要とされているのです。

戦略的ERM支援メニュー

PwCコンサルティングは、企業のERMの成熟度診断から、ERM態勢の再構築まで幅広く支援を提供します。

①ERM成熟度クイック診断

COSO ERMフレームワークやISO31000の要求事項に加え、ESGや開示要請の高まりなどの環境変化も勘案した網羅的なチェック項目を用いることで、2週間程度でERMの成熟度を診断します。診断にあたっては、社内文書や開示資料のレビューをメインとし、必要に応じて関係者インタビューも行います。最終的に現行のERMの課題や、ERMの再構築に向けた改善点をとりまとめ、クイック診断報告書を作成します。

クイック診断を通じて、ERMにおける会社の重要課題を特定し、対応方針策定につなげていきます。

リスク抽出アプローチ

  • リスクの抽出アプローチは適切か(ボトムアップ/トップダウンでのリスク調査を併用しているかなど)
  • 抽出したリスク項目に抜け漏れはないか(戦略リスク・ESGリスクが抽出されているかなど)
  • 原因・事象・結果のリスクシナリオに沿って、リスクの抽出がなされているか

リスク評価手法・対応方針

  • リスクの影響度評価方法は適切か、リスクを評価する際の観点(軸)に抜け漏れはないか(財務影響の他、経営理念、重要なステークホルダーやレピュテーションへの影響の考慮など)
  • リスクへの対応方針の策定方法は適切か(各リスクの主管部・責任者・対応期限を定めているかなど)

ERM体制・コミュニケーション機能

  • ERM体制(責任者・事務局・会議体の整備状況、役割分担、KRIモニタリングなどの運用方法)に不足・重複する機能がないか(経営陣の関与が主体的か、サステナビリティとERMが統合されているかなど)
    ※Key Risk Indicator
  • 必要かつ正確なリスク情報の取得、分析、伝達を行うためのコミュニケーション機能に不足・重複する点がないか(データを活用し、エクスポージャーの集中度・依存度を把握できているかなど)

クイック診断後、診断結果を踏まえて課題の詳細を把握し、再構築に向けた構想策定を経て、新ERM体制を再構築します。PwCコンサルティングは、ERM体制の基盤構築から運用・高度化まで、多くの支援実績を有しており、必要に応じ、クイック診断後の活動についてもサポートを行うことが可能です。

インサイト/ニュース

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主要メンバー

山崎 幸一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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山本 直樹

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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