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M&Aにおける意思決定サポートを通じて培われたノウハウと、プロフェッショナルサービスファームとしての強みを結集し、事業計画の見直しから再成長戦略の立案、実行支援までを一貫して支援します。
私たち人間には、ヒトやモノ、情報の物理的、時間的距離を縮めることで文明を発展させてきた歴史があります。ところが新型コロナウイルス感染症は、「Social Distancing」という言葉に象徴されるとおり、世界各国で、人間に「距離をとる」ことを求めています。今こそまさに、歴史的転換点と呼ぶにふさわしいと言えるでしょう。
2020年は、既に地政学的リスクが顕在化し、景気循環も後退局面に入り、かつグローバル化の反動で分断が進み、これまでのトレンドや価値観が大きく変化するタイミングにありました。今回の新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延は、その流れをさらに加速させ、ニューノーマル(新たな常識・状態)を生み出しつつあります。
社会機能の一翼を担う企業のあり方や存在意義、求められる姿が大きく変容する中、新型コロナウイルス感染症蔓延以前に整備された戦略や事業計画の多くが効力を失っています。特に、ホテル・観光・飲食・エンターテイメントのような人々が移動し集まることを前提とした事業や、対面業務を中心としてきた人材派遣業などは、その前提が大きく覆されています。
従前の戦略や事業計画が効力を喪失した状況下では、企業の迅速な意思決定は、非常に困難なものとなります。また従来の事業計画でコミットしていたアクションについても再考が必要となり、企業活動は停滞しかねません。
先行き不透明な状況下においても企業活動を前進させるために、企業がとるべきアクションは何が挙げられるでしょうか。短期的には、経営環境の変化に対する応急処置として、迅速な経営環境分析に基づく既存の事業計画の見直しやキャッシュフロー改善が求められます。中長期には、新たな経営環境における成長を目指し、各事業の勝ち筋を踏まえた全社的な事業ポートフォリオの見直しや個別事業の収益改善といった事業再構築が必要となります。
前述のとおり、COVID-19収束後、企業を取り巻く環境や業界構造は大きく変わることが想定されます。まずはこれらの環境におけるリスク要因を早急に特定し、企業内で新たな共通認識を醸成する必要があります。
なお、事業環境の網羅的な再整理には多大な時間を要します。そのため、まず既存事業を成立させる要件に絞り、これまで自明の理とされ深く検証されてこなかった成立背景の理解と、環境変化による影響有無・インパクト評価を優先すべきでしょう。
また、大きな環境変化が起きた際には、事業計画の蓋然性や継続性に疑義が生じ、企業活動が停滞しかねません。例えば、売上の大幅な下振れが発生しそうな状況下で、どこまでコストをかけ活動すべきかの判断は困難です。
このような状況においては、売上・コストの再試算、バランス・シートへの影響分析および資金確保・事業存続に向けたアクションプラン(従来アクションプランの一部取りやめ・コストリダクション施策の追加、など)を再考し、応急処置を図る必要があります。その際、今後の環境変化に応じて企業がとるべき打ち手が変わるため、状況変化に即応できるよう、幾つかシナリオを用意しておくことが重要です。
短期的取り組みにより、事業継続性の確保ができた段階では、新たな環境下でのさらなる成長に向けて、中長期的な観点からの事業再構築が必要となります。ニューノーマル下の事業再構築の検討においては、第一に、各事業の前提を見直し、それに基づき自社にとっての勝ち筋の再考が求められます。
ここではまず、COVID-19の蔓延がもたらしたマクロ環境の変化が、自社を取り巻く市場環境・競争環境にどのような変化をもたらすかを予測し、ビジネスモデルや事業戦略を見直すうえでの事業環境の前提を置き直します。
その際、環境変化や事業影響が“不可逆的であるか”を見極めることが肝要です。例えば、COVID-19感染拡大によるマクロ環境変化として、人々の衛生管理意識の高まりによる対面コミュニケーションの忌避という現象が表出していますが、これはCOVID-19の感染が沈静化すれば、落ち着くかも知れません。しかし一度リモートコミュニケーションによるミーティングの利便性に慣れたビジネスマンが忙しい時間を割いて、これまで同様の頻度で出張に行くかと言うと疑問が生じます。これは航空業界、鉄道業界のビジネス需要に影響を与えます。一方、人々の旅行に対する意欲が従来どおりに回復するとなると、旅行業界はビジネス需要より個人のレジャー需要を重視すべきと考えるかも知れません。これは例えば地方都市のホテルの営業戦略に大きな影響を与えるでしょう。このように“不可逆な変化”を見抜けば、将来の環境変化に速やかに対応することができます。
また、市場環境の変化は市場におけるKSF(Key Success Factor)や競争優位性を塗り替えます。例えば非対面のコミュニケーションが定常化すれば、企業の営業活動のあり方が大きく変わります。拠点網の広さは無力化され、営業マンは「数より質」となるかも知れません。同様に教育産業は多くの講師を確保するより、カリスマ講師が1人いることが重要となるかも知れません。
このように今後の市場におけるKSFを特定しつつ、今後の競争環境における自社の競争優位性をいかに構築するかを考え、勝ち筋を導出することが求められます。
また今後企業が注力すべき市場は、必ずしも新たな環境下における成長市場であるとは限りません。例えば、今後縮小が予想される市場であっても、KSFを満たす経営資源に恵まれれば、残存者利益を享受する、ニッチポジションを築き生き残るというオプションが描けるかも知れません。勝ち筋導出には、あくまでも新たな市場でのKSFとそれに対する自社の競争優位性の見極めがカギとなります。
事業ポートフォリオ検討にあたっては、まず新たな環境下における企業全体の戦略を再考する必要があります。事業ポートフォリオの見直しは通常「戦略適合性」「収益性」の2軸で各事業を評価し、事業の「継続・拡大」「縮小・撤退」を初期的に判断します。収益性の高い事業はそれだけで継続・拡大と判断されがちですが、全社戦略と整合しているかの視点は欠かせません。ここでも新たな経営環境を前提とした考察が必要です。
ポートフォリオ縮小時には上記2軸において、初期的には事業の継続または撤退の方向性を判断しますが、この4象限の中で戦略適合性が低いが収益性の高い事業はどう考えるべきでしょうか。通常これらは「原則売却」がセオリーです。収益性が高い、つまり事業価値が高いうちに売却し、得た資金を戦略適合性、収益性ともに高い事業に再投資すべきという考えです。
しかし多くの日本企業では撤退は「ギブアップ」を意味し、戦略的な判断に基づく売却は行われません。特にポートフォリオ縮小時は、キャッシュフローを生む事業が貴重であることは理解できますが、売却価値も高い点に着目すれば、また違った判断ができるかも知れません。
最後に、企業全体のポートフォリオを俯瞰し、全社戦略の実現が可能かといった観点から検討が必要です。景気後退局面においては、キャッシュフロー確保のためにコア事業への集中を志向する企業も多いと思いますが、その場合、低成長の成熟したコア事業のみに傾注し、中長期的な成長領域への投資をおろそかにすることは避けなくてはなりません。成長に向けて必要な投資余力を確保し、収益維持のために将来の成長を犠牲にすることがないように全社戦略に基づく最適なバランスを考え、ポートフォリオを構成することが肝要です。
戦略適合性が高く事業継続と判断されたものの、今後の収益性に改善を要する事業に関しては、速やかに打ち手を立案し、実行に移します。
不採算事業であれば、まずは不要資産の売却によりバランス・シートを圧縮し、営業レバレッジの抑制によりコスト構造を改善するといった応急的なキャッシュフロー改善施策が定石ではあります。しかし同時に、新たな事業環境における勝ち筋を踏まえた、ビジネスモデル・事業戦略の再構築を進める必要があります。
PwCはこれまで、窮境状態に陥った企業を数多く支援してきましたが、窮境要因の多くは、大きな経営判断の失敗よりも、「環境変化に対応してこなかった」ことにあります。再生企業の多くは採算性の悪い事業や商品・サービスから撤退し、事業規模の縮小により利益の確保を図りますが、その過程でさらに競争優位を失い、縮小均衡できずに衰退し続ける例が散見されます。事業を根本から見直し、ビジネスモデルを環境変化に適合させることなくして、事業の再生は果たせないと言えます。
ビジネスモデルを再構築するには、まず顧客の価値観の変化を捉え、それに基づきターゲット顧客と提供価値を再定義します。そのうえで、その価値を提供するために最適な事業構造(オペレーティングモデル)を再設計します。その過程で、事業構造の設計そのものがコスト構造を決定づけるため、並行してコストの最適化を図り、収益構造を強固にします。
次に、他社との競争を念頭に事業戦略を描きます。先述のとおり、事業の勝ち筋は新たな市場のKSFとそれに対する自社の競争優位性を見極め導出しますが、事業戦略は一時の競争優位ではなく、永続的な優位性を築く視点が重要です。事業領域、すなわち「ターゲット顧客」や「提供価値」を見直すことで得られる「戦略的ポジショニング」による競争優位は短期で構築できる反面、模倣されやすいという側面があります。そのため中長期的には、事業構造(オペレーティングモデル)を高度化することで得られる「組織能力」による競争優位を築く必要があります。
今回の環境変化における傾向の1つとして、リモートコミュニケーションの浸透に端を発するデジタル化の加速が挙げられます。事業構造(オペレーティングモデル)を設計するうえでは、デジタルテクノロジーの活用により、競争優位を築くことが有力な選択肢となるでしょう。
なお、この先でM&Aを含む投資戦略を検討するためにも、上記の競争優位を築くにはどのようなケイパビリティや経営資源を獲得すべきかを見極めておくことが肝要です。
ビジネスモデルと事業戦略を再構築した後に、それらを実現するための事業計画を立案・実行します。事業計画においては、具体的な「活動計画」と、その施策を実行するための人材や投資などの「資源配分計画」、それらの結果として見込まれる「収支計画」を立案し、実行に移していきます。
活動計画は資源配分計画に制約を受けるため、各計画間の整合性に留意する必要があります。収益改善に向けては、経営資源の裏付けを伴った活動計画、その施策効果が適切に反映された収支計画を策定し、着実に実行することが肝要です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延に伴い、不確実性が高まっている現状だからこそ求められるのは、徹底した前提条件整理に基づく確実な応急処置と、再成長に向けた力強いビジョンの提示です。PwCコンサルティングは、クライアント企業のM&Aにおける意思決定サポートを通じて培われた事業性評価・事業計画策定・新規事業構想に関するノウハウと、グローバルネットワークを活用した各国からの迅速な情報収集能力、官民さまざまなステークホルダーとのリレーションや、会計・税務・法務・リスク・テクノロジーなどあらゆる知見を内部に有するプロフェッショナルサービスファームとしての強みを結集し、事業計画の見直しから再成長戦略の立案、実行支援までを一貫して支援します。
ニューノーマルを迎えることは、企業にとって“脅威”である反面、“機会”でもあります。有事に直面した企業は、“脅威の除去”に目をとらわれがちです。しかし、環境変化は新たなニーズを生み出す転機となり、全ての企業に等しくスタートラインに立つ機会が与えられます。その機会を捉えるためには、先んじて新たに湧き起こる市場の萌芽を見いだし、迅速に行動に移す必要があります。環境変化の大きい今だからこそ、俯瞰的な視点で経営を軌道修正する力が企業には求められています。