
政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)のポイント解説 第1回:ISMAPの概要
本稿では、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の制度の概要や、制度導入の経緯などについて解説します。
ISMAP(イスマップ)は、内閣サイバーセキュリティセンター・情報通信技術(IT)総合戦略室・総務省・経済産業省が運営する、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(Information system Security Management and Assessment Program)の通称です。
ISMAPにのっとり、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスをあらかじめ評価・登録することで、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、クラウドサービスを円滑に導入することを目的としています。
2018年6月、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」(平成30年6月7日 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)の一つの方針として、政府情報システムを整備する際には、クラウドサービスを第一候補とする、「クラウド・バイ・デフォルト原則」が示されました。
一方で、諸外国と比較した場合、日本は国家としてクラウドサービスの安全性を評価・認定する仕組みが存在しておらず、評価・認定制度を検討することになりました。
2021年に予定されているISMAPの運用開始により、原則として登録簿に登録されているクラウドサービスから政府情報システムの調達が行われるため、政府情報システムにクラウドサービスが選定されるにはISMAPの登録簿への登録が必須になります。
さらに、ISMAP登録簿は一般に公開されるため、政府情報システムの調達のみならず、地方公共団体や民間企業がクラウドサービスを選定する場面においても活用される可能性があり、登録簿にクラウドサービスが登録されることが、数兆円規模と予想される国内クラウド市場に参入する上で重要な要素となり得ます。
ISMAPでは、クラウド事業者が統制の目標を実現するために選択し、満たすべき事項として、「管理策」と呼ばれる基準が設けられています。クラウド事業者が選択した「管理策」を、外部評価機関が「評価」することになります。「管理策」「評価」には、それぞれ以下のような特徴が存在します。
A.ガバナンス基準
ISO/IEC 27014をベースに作成されており、会社のセキュリティガバナンスの要求事項が記載されています。
B.マネジメント基準
ISO/IEC 27001をベースに作成されており、情報セキュリティマネジメントシステムの確立についての要求事項が記載されています。
C.管理策基準
ISO/IEC 27002/27017、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準」、National Institute of Standards and Technology(NIST) Special Publication 800-53の内容を組み合わせて構成されています。
「C.管理策基準」については、必須の管理策と選択適用の管理策があります。
必須の管理策は全て実施する必要がありますが、選択適用の管理策は「管理策の選定」で選択した管理策を実施することになります。
*1 なお、本制度の施行から1年以内に登録を行うクラウドサービスについては「整備評価」のみ実施されます。
クラウド事業者は、ISMAP認定のために、下記のような準備が必要になると考えられます。
PwC Japan有限責任監査法人では、ISMAP登録簿掲載を目指すクラウド事業者に向けて、以下のサービスを提供しています。
クラウド事業者が登録を予定しているクラウドサービスが、ISMAPで求められている評価手続に対応可能なレベルの管理策が実装されているかどうかを確認する事前評価サービスを提供します。
「ISMAPプレ評価」を実施することで、「ISMAP外部評価」に向けた事前準備ができます。また、登録を予定しているクラウドサービスが「ISMAP外部評価」を受けるレベルに到達しているかどうかを確認することが可能です。
「ISMAPプレ評価」では、ISMAPにて定義されている全ての管理策に対して評価手続を実施するのではなく、クラウド事業者と合意した管理策のみを対象とします。実施期間は通常1~2カ月ですが、対象となる管理策の数によって異なります。具体的な実施内容は、以下の通りです。
*1 改善案は一般的な推奨事項を提案するものであり、登録審査の通過を保証するものではありません。
対象管理策の選定から「ISMAPプレ評価」実施、成果物提示までの流れは以下の通りです。
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