2016-07-15
2016年6月23日に実施された英国の国民投票にて、欧州連合(EU)の離脱が僅差で選択されたことは既に周知のとおりですが(いわゆるブレグジット)、「離脱」決定は想定外であったため、円相場は対米ドル、英ポンドおよびユーロで52週連続の円高となっており、日経平均株価も投票結果判明日に1,000円以上値を下げる等、金融市場が大きく変動しています。ブレグジットによる潜在的な影響については、市場においてもさまざまな臆測が流れていますが、日系保険会社にとっても、影響分析の実施が喫緊の課題となっています。
日本は持続的な低成長とマイナス金利に陥っており、日系保険会社は、近年、より高い収益機会が期待できる英国およびヨーロッパへの投資を拡大してきました。日系保険会社は、ユーロ/ポンド建公私募債あるいは株式投資に加え、英国および欧州で事業展開しています。例えば、三井住友海上火災保険株式会社は2015年に50億米ドル以上で英国の保険会社Amlinを買収しました。
下表は、大手日系保険会社の英国/欧州における拠点(保険業を営む子会社あるいは支店、ブローカー、投資顧問、駐在員事務所が対象)と6月24日の株価変動を示したものです。
ブレグジットにより英国もしくは欧州の規制が直ちに変更されることはありませんが、英国のEU離脱(Brexiting)は今後、何年もかけて交渉され、実行されているものと考えます。また、日系保険会社が潜在的な影響を一覧化し、それぞれの影響を見積もった上でビジネス全般にまたがる詳細かつ全体的な分析を行い、短期的および長期的にも、これらの影響に対応できるよう計画立案を始める最適な時期と言えます。
短期的に、英国および/もしくは欧州で事業を展開している日系保険会社は、以下の事項について速やかにフォーカスすることが特に推奨されます。
日系保険会社は、短期的に起きうる影響を評価し、緩和策を立案した後、下記の長期的な影響に速やかに目を向ける必要があります。
要約すると、日系保険会社は、財務面、オペレーション面および戦略面といった全社的観点から自社がどのような影響を受けるかについて詳細な分析を行い、包括的な対策を策定することが奨励されます。そして、不安定な環境が継続する状況で、これらの分析および対策を定期的に見直し、全社的な経営計画プロセスに統合することが望まれます。