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2018-02-07
2018年1月29日、EUの閣僚理事会はBrexit移行期間とその間の取り決めに関する交渉指令を採択した。これに基づきEU側のMichel Barnier首席交渉官は英国側と交渉を開始する。次席交渉官であるSabine Weyand氏は、閣僚理事会が合意に至るまでに2分とかからなかったことをツイッターで明らかにした。このようにEU27カ国は依然として結束を保っている。
2019年3月29日に英国がEUを正式離脱した後に続く移行期間は、その翌日から2020年12月31日に設定された。ただし、閣僚理事会は同日の声明で、必要に応じて更新する可能性に言及している。
移行期間の設定により、英国はEU離脱後も単一市場と関税同盟にとどまり、将来関係の取り決めについて交渉するため、少なくとも約21カ月間の時間的余裕を得ることになる。本年秋に合意をめざしている離脱協定(昨年12月の英EU共同レポートで合意した事項などを条文化したもの)には移行取り決め(EU側はその条文ドラフトをすでに作成済みである)が含まれ、将来関係取り決めの枠組みが政治宣言として附属される見通しである。
しかし、そのために英国が払う代償は小さくない。EUが交渉指令で示した条件は、第1に英国はEU加盟国と同じく、人の自由移動を含むEU法全体などに拘束され、それを国内法に優先して適用しなければならない。これには、EUが締結した自由貿易協定、EU司法裁判所の判決、また、移行期間中に制定されるEU立法も含まれる。第2に、EUの立法・政策決定に英国は原則として参加できない。また、EU司法裁判所の判決に加わることもできない。英国は独自の通商協定を交渉してもよいが、移行期間中に発効させることはできない。以上の点について、図表を参照されたい。
こうした条件に、英国保守党内の強硬離脱派は「属国」のような扱いであるとして反発を強めている。特に移行期間中の人の自由移動の扱い、また、移行期間中のEU立法に対する協議や異議申し立ての可否が、移行取り決め交渉での対立点として浮上している。英国は本年3月中に移行期間取り決めの原則合意に達することを希望しているが、メイ首相にはEU側が交渉指令で示した条件を押し返す交渉チップはほとんどない。メイ首相としては、移行取り決めで譲歩しても、Brexit交渉の第2段階である将来関係取り決めで英国に有利な条件を確保して国民の支持を得たいところである。それができなければ、メイ首相の退陣、総選挙、再度の国民投票など、英国国内政治の混乱が待ち受けている。
[追記]
移行取り決めに関する条文ドラフト(EUコミッション案)には、移行期間中におけるEU司法裁判所の管轄権が規定されているが、その条文の脚注には別途、離脱協定の(移行取り決めだけではなく、それを含む)紛争解決規定として、裁判の長期化に備えて必要な場合には英国の単一市場参加の恩恵を一時停止する手続きを盛り込むべきであるとの見解が示されている。
【図表1】Brexit移行取り決めに関するEU交渉指令(2018年1月29日閣僚理事会)
作成:庄司 克宏
庄司 克宏
PwC Japanスペシャルアドバイザー
慶應義塾大学教授
ジャン・モネEU研究センター所長
英国のEU離脱に伴い、現在までの英国/EU間の交渉とその結果、主な政治イベントと関係者のコメントをまとめました。
離脱の期限である2019年3月末を控えて「時間との闘い」が始まった離脱交渉の中、PwC JapanスペシャルアドバイザーでEUの法と政策が専門の慶應義塾大学の庄司教授と、PwC Japanブレグジット・アドバイザリー・チームの舟引 勇が、2018年のブレグジット予測および日本企業がなすべき対応について語ります。
2017年12月15日のEU首脳会議は、Brexit交渉の第2段階入りを承認しました。交渉展望について、PwC Japanスペシャルアドバイザーで慶應義塾大学の庄司教授に解説いただきました。