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2017-12-22
2017年12月15日の欧州理事会(EU首脳会議)は、Brexit交渉の第2段階入りを承認した。それは、12月8日、離脱交渉の第1段階で「十分な進展」があったとする英EU間の政治的合意(共同報告書)が成立したからである。第1にメイ英首相が離脱清算金で(欧州銀行庁EBAと欧州医薬品庁EMAの移転費用を除き)ほぼEU側の要求を受け容れる一方、第2にユンカーEUコミッション委員長は、EU市民権の保全についてEU司法裁判所の管轄権を離脱後8年間に限定することで譲歩した。第3に北アイルランド国境におけるハードな国境の回避では、当初より英EUとも異論がなかったが、どのように回避するのかという問題があった。そこで、この問題で最終的に合意できない場合、英国はEUの単一市場および関税同盟のルールとの「完全な適合性」(full alignment)を維持することを約束した。
以上の合意を受けて、EU27カ国首脳は新たな「交渉指針」を追加し、2018年1月より離脱協定の起草作業に入ることとした。双方の批准に要する時間を考慮して、18年秋までの署名が目標とされている。離脱協定には移行取決が含まれるとともに、将来関係枠組みに関する政治宣言が附属される。
移行期間については、英国がEUを離脱する2019年3月29日以降の約2年間を想定して、1月に閣僚理事会が「交渉指令」を採択することにより同月中に交渉を開始する予定である。EU側は移行期間を2020年末までと想定している。移行期間中、英国は関税同盟と単一市場にとどまるが、予算分担金を支払いつつ、EUの立法・政策決定やEU司法裁判所の判決には参加できない。
英EUは、移行期間中、通商協定、テロ対策や安全保障上の協力をはじめとする将来関係取決の大枠について予備協議を行う。3月にEU側がそのための交渉指針を採択する一方、英国も交渉上の立場を明確にするよう求められている。本交渉は英国がEUを離脱する2019年3月29日より後に開始される。移行期間中の合意は可能であるとしても、批准・発効にはその後数年を要する見込みである。英国が望む包括的自由貿易協定は、カナダEU包括的経済貿易協定(CETA)をモデルとして、それに大幅上乗せする「CETAプラス・プラス・プラス」をめざすこと(特に金融サービスの自由移動)が取り沙汰されている(以上について図表参照)。
Brexit後の包括的自由貿易協定は、最終的にどのような形にまとまるのだろうか。12月8日の英EU合意でソフトな離脱の可能性が高まったように思われる。それは、北アイルランドにおけるハードな国境の回避という目標を達成するには、英国がEUの単一市場および関税同盟のルールとの完全な適合性を維持するとした約束をいずれにせよ実行しなければならないからである。これは、英国が単一市場と関税同盟から法的に離脱するとしても、事実上残留することを意味する。何も合意のないまま離脱する「No Deal」の見込みは現時点ではほぼなくなったように思われるが、その可能性がゼロになったわけではない。例えば、離脱協定の批准を英国議会が否決するような場合、時間切れで「No Deal」離脱となるリスクもあり得る。
【図表1】Brexit交渉プロセス
作成:庄司 克宏
庄司 克宏
PwC Japanスペシャルアドバイザー
慶應義塾大学教授
ジャン・モネEU研究センター所長
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2017年10月19日、20日の2日間にわたり実施されたEU首脳会議の結果をふまえ、5回目を終えた英国とEUの離脱交渉の進展状況について、PwC Japanスペシャルアドバイザーで慶應義塾大学の庄司教授に解説いただきました。
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