年金

英国のEU離脱(ブレグジット)支持という結果は、確定給付(DB)と確定拠出(DC)の両年金制度に影響を及ぼし、それは今後も続くと予想されます。

金融市場の混乱を受けて、DB制度には大幅な積立不足が発生し、DC制度加入者の予想受給額が引き下げられています。中・長期的な積立計画(と短期的な予算)への影響はもとより、DB制度の積立不足の会計処理という即時の影響により、バランスシートを悪化させ、分配可能積立金に影響を及ぼすおそれがあります。

DB制度を導入している企業は、トラスティーと連携して、完全積立年金制度を目指して現行の戦略を評価する必要があります。トラスティー運用委員会は今のこの時期を切り抜ける戦術的なアプローチと、中・長期的な計画への影響を検討する必要があります。また、ブレグジットがDB制度のスポンサーコベナント(母体企業の資金提供能力)に与える影響についても検討し、理解しておかなければなりません。場合によっては過去の積立戦略を詳細に調べてみてもよいかもしれません。例えば、仮定の設定に用られる保険数理の方法論は、新しい市場条件においても目的に適っているのか?あるいは新たに発生した積立不足のうち現実的な額はどの程度で、単純に保険数理モデル上の人為的な結果によるものはどの程度なのか?といった点を検討します。

DC制度の場合、英国のEU離脱の影響を直接被るのは年金制度の加入者です。雇用主はこれら加入者、特に退職が目前に迫っている加入者に対してどのような情報と支援を提供するのか、綿密に検討する必要があります。

ブレグジットの影響が明らかになる中、年金制度の母体企業とトラスティーは健全なガバナンスに注力し、警戒感を高める必要があります。また、年金契約の本質に合致した長期的で包括的な視野を維持することも重要になります。