気候変動の物理的リスクの分析支援サービス

近年、気候変動に伴う自然災害の頻発や激甚化の傾向は強まり、民間企業においては、自然災害が自社のビジネスへ及ぼすリスクを把握し、その結果に基づく対策を検討する必要性が高まっています。

気候変動の影響による異常気象や自然災害などにより顕在化するリスクは「物理的リスク」と呼ばれ、脱炭素化に伴う市場の変化などによってもたらされる移行リスクとともに、気候変動関連のリスクとして、各社固有の事業の実態に即して分析する企業が増えています。中でも、投資家からの注目が高く、プライム市場に上場する企業に対して対応が求められるTCFD*1提言やSSBJ*2によるサステナビリティ開示基準の公開草案においては、移行リスクだけでなく、物理的リスクに関する影響把握や財務インパクトの定量化、戦略策定などの情報開示が求められています(図表1)。

図表1:TCFD提言において企業に求められる対応と物理的リスクの位置付け

図表1 TCFD提言において企業に求められる対応と物理的リスクの位置付け

洪水や台風などの急性物理的リスクに加え、熱ストレスや干ばつなどの慢性物理的リスクは、業種を問わず幅広い企業の事業活動の継続に重大な影響を及ぼす可能性があるため、リスク管理の一環として詳細な分析を実施することが重要です。

一方で、物理的リスクを定量的に把握するためには自然災害リスクに関する高度な専門知識やデータ分析のスキルが必要とされます。社内リソースの不足などの課題を抱え分析を行うことが容易ではない企業や、何らかの分析を行っているもののさらなる高度化を検討している企業が多い状況です。

こうした状況を踏まえ、PwC Japanグループは気候変動の物理的リスクの分析支援サービスを強化しました。日本において重要な洪水・高潮リスクの分析に加え、グローバルな観点で重要性の高い熱ストレス・干ばつ・山火事などの分析支援体制を構築することで、企業の幅広い分析ニーズに対応します。

本サービスの対象

PwC Japanグループでは、これまで金融機関や事業会社など業種を問わず幅広い企業を対象に、洪水リスクの分析支援サービスを実施していましたが、今般以下の12種類のペリルに分析対象を拡大します。

図表2:分析対象ペリル

図表2 分析対象ペリル

企業ニーズへの対応

これまで提供してきた「まずは日本において重要な洪水リスクの分析から始めたい」というニーズに加え、「グローバルに事業拠点やサプライチェーンを展開しているため、幅広いペリルの物理的リスクを分析したい」というニーズにも対応します。また、リスクの重要性の定性的な評価に加え、事業拠点やサプライチェーンの位置情報に基づく損害額の定量評価にも対応します。

さらに、分析ニーズにあわせたカスタマイズだけでなく、物理的リスクの分析結果に基づいた戦略策定や事業変革、レポーティングやエンゲージメントなど、必要となる重要アクションの検討についても、ご要望や分析の段階にあわせて一貫した支援の提供が可能です。

リスク分析の概要

① リスクの定性的評価

リスク分析の最初のステップとして、企業を取り巻くリスクの重要性を網羅的かつ定性的に評価することが考えられます。PwC Japanグループでは、前述の12種類のペリルについて、各地域や拠点のリスクの重要性を判定するアプローチを採用します。評価結果を以下のように地図上で可視化することも可能です。

図表3:リスクの重要性の可視化の例

図表3 リスクの重要性の可視化の例

② リスクの定量的評価

定性的評価で重要と判定されたリスクについては、リスクの定量的評価を行うことが考えられます。例えば、洪水リスクを定量的に評価するためには、河川の氾濫が発生する確率やその規模だけでなく、事業に関連する施設・設備の所在地、浸水に対する脆弱性、被災した場合の被害額などを考慮した複雑かつ大量の計算が必要になります。PwC Japanグループでは、急性物理的リスク(突風を除く6種類のぺリル)に対して、独自分析ツールを用いて、リスクの定量的評価に必要な計算を効率的かつ説明可能な方法で実施します。

分析を行う際には、財務情報(売上高、原材料費など)や非財務情報(地理情報、建物情報、在庫情報、サプライチェーンの情報など)を基に、それぞれの要素間の定量的関係を明らかにします。また、IPCC*3などの気候変動シナリオを適用することで、将来における物理的リスクの変化についての分析も行います。

リスクが顕在化した場合の定量的な損害額としては直接損害と間接損害の両方が考えられますが、それらの平均損害額や各再現期間(100年に一度規模、200年に一度規模など)の損害額を計算し、財務諸表の各勘定に与える影響を示すことによって、分析結果を事業戦略の策定やリスク管理の高度化に活用することを支援します。

図表4:リスクの定量的評価の例

図表4 リスクの定量的評価の例

リスク分析結果の活用

気候変動関連情報開示への活用

具体的なシナリオとともに将来予想される物理的リスクの財務インパクトを開示することにより、物理的リスクに対する自社の経営戦略のレジリエンスを投資家などに示すことができます。気候変動リスクを懸念する投資家の意思決定に寄与する有益な情報を提供することで、安定した資金調達へとつなげられる可能性もあります。

リスク適応の高度化

リスクの定量的な財務インパクトが分析できれば、リスク適応の効果を含めた事業の投資対効果の分析が可能になります。これにより、防災体制の構築や、BCP(事業継続計画)の強化を行う際に、想定される財務的な影響を含めた検討が可能となり、リスク適応をより前進させることができるようになります。

リスクモニタリングの高度化

リスクの重要性やそれに基づく指標を適時にモニタリングする態勢を構築することにより、リスクの発現を適時に捉えることが可能になります。現時点で重要性が小さいリスクであっても、リスクの重要性が高まった場合には、リスクの定量化やリスク適応策の策定などを迅速かつ実効的に進めることができます。

リスク分析モデルの検証

気候変動のシナリオ分析を既に行っている場合は、物理的リスクの計算モデルの内部検証や内部監査において、外部の知見を取り入れた検証や高度化提案を行うことが可能になります。

*1:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

*2:サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan)

*3:気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)

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主要メンバー

鈴田 雅也

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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日浦 優吾

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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