食品業界

食品業界とネイチャーポジティブ

食品バリューチェーンのネイチャーポジティブには、コモディティ生産の土地利用削減、リジェネラティブ農業やスマート農業による食料システムの温室効果ガス(GHG)削減、代替肉・代替タンパク・昆虫食による畜産のGHG削減、食品ロス削減、持続可能な養殖、パッケージ削減などが求められます。

2030年のネイチャーポジティブ実現に向けたイメージ

食品業界のバリューチェーンは、原材料となる農業・漁業、輸送、加工、流通、廃棄から構成されます。その中で、自然資本に大きな影響があるのは、農業における土地利用・GHG排出・汚染、漁業における過剰採取、パッケージの廃棄、食品ロスなどです。

2030年のネイチャーポジティブ実現に向けては、これら影響が拡大するトレンドを全て逆転することが求められます。特に、世界全体の土地利用変化の80%1を占めるとされる農業における土地利用、世界のGHG排出の21~37%2を占めるとされる食料システムからのGHG排出量削減が重要です。土地利用については、森林破壊の26%3の原因となっているとされる7つのコモディティ(畜牛、パーム、大豆、カカオ、コーヒー、ゴム、プランテーションによる木質繊維)のうちの農作物における土地利用の削減、GHG排出については、畜産におけるメタン排出削減、炭素を吸収するリジェネラティブ農業や環境負荷を低減するスマート農業の促進、さらには、代替肉や昆虫食の普及などが期待されます。また、大きな環境負荷を伴う食料システムからの生産を廃棄し、世界のGHG排出の8-10%4の原因となっているとされる食品ロスを削減する、トレーサブルでムダのないバリューチェーンの構築も必要です。

さらには、マーケティング活動を通じて消費者の意識を変え、ネイチャーポジティブに貢献する商品や企業が選好される市場を創っていくことが求められます。

上記などを通じて、既存の食品のバリューチェーンがネイチャーポジティブに変革されている、ネイチャーポジティブな新しい食品のバリューチェーンが構築されているというのが、2030年に求められるイメージです。

ネイチャーポジティブな取り組みの事例

コモディティ生産のサステナビリティ

  • NGOと協働して持続可能な認証制度を策定
  • 認証の信頼性を高めるためのブロックチェーン技術により、サプライチェーンの透明性を確保
  • 人工衛星を用いて農園における森林破壊を監視

リジェネラティブ農業

  • NGOと協働し農家のリジェネラティブ農業導入を支援
  • 作物用監視システムとインセンティブを用いて効果的にリジェネラティブ農業導入を推進
  • 炭素貯留量の多い多年草穀物を原料とする飲料を生産

スマート農業・品種開発

  • 施肥量を最適化する点滴灌漑システムを構築
  • 窒素肥料抑制可能な農作物を開発

畜産におけるGHG削減

  • 畜牛のげっぷを減らす飼料を開発
  • 畜舎からのメタンを回収しエネルギーとして利用

持続可能な養殖

  • データに基づく給餌量の最適化(エサによる汚染削減)、IoTセンサーを活用した水温・酸素濃度・塩分などの環境データを自動測定(養殖効率化)などによりスマート養殖を実現
  • 環境負荷の小さい昆虫などを養殖のエサに活用

代替タンパクの開発

  • 代替肉(植物肉・培養肉)を提供

食品ロス削減

  • 食品ロスを可視化
  • 余剰食品と利用者をマッチングするプラットフォームを構築
  • 廃棄食品を原料とする飲料を生産

パッケージ削減

  • プラスチックパッケージを紙へ代替
  • リサイクルしやすい単一素材のパッケージを開発
  • リサイクルの仕組みを構築し、消費者を啓発

PwCのサービス 

自然資本関連のアップスキリング

  • 自然資産関連の基礎研修・社内の理解浸透支援
  • 自然資本を巡る国内外の規制・イニシアチブ・企業対応の最新動向

現行事業のリスク・機会評価

  • バリューチェーンの自然資本への影響・依存分析
  • 外部環境分析を踏まえたビジネス機会・リスクの特定

ネイチャーポジティブビジョン・戦略策定と実行支援

ビジョン・戦略策定

  • 食料システムの未来シナリオを踏まえたバックキャスティングでのビジョン策定
  • 経営戦略と整合するネイチャーポジティブ戦略策定

戦略実行支援

  • ネイチャーポジティブ戦略に基づく目標/KPI設定支援
  • リジェネラティブ農業等、ネイチャーポジティブ戦略推進支援

自然関連情報開示支援

  • 国内外の先進開示の事例集とGap分析
  • TNFD開示案作成支援

1 Ecology and Society, VOL.22 No.4(2017),"Agriculture production as a major driver of the Earth system exceeding planetary boundaries"(2020年11月3日閲覧)
https://www.ecologyandsociety.org/vol22/iss4/art8/

2 IPCC (2019)"Climate Change and Land"(2020年 11月3日閲覧)
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2019/08/4.-SPM_Approved_Microsite_FINAL.pdf

3 WRI(2021)”Just 7 Commodities Replaced an Area of Forest Twice the Size of Germany Between 2001 and 2015”(2022年9月29日閲覧)https://www.wri.org/insights/just-7-commodities-replaced-area-forest-twice-size-germany-between-2001-and-2015

4 UNEP(2021)“Food Waste Index Report 2021”(2022年9月29日閲覧)
https://www.unep.org/resources/report/unep-food-waste-index-report-2021


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主要メンバー

齋藤 隆弘

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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