
CBAMは、EU政府によるクロスボーダー取引に関連するカーボンプライシング制度です。同制度では、鉄鋼製品を始めとする特定の製品をEU域内に輸入する場合、その製造過程で排出された温室効果ガスの量(GHG排出量)に基づいてコストが課されます。2023年10月から、本格実施前の移行期間として、製造段階でのGHG排出量報告が義務付けられました。2026年1月からの本格実施以降、GHG排出量に基づいたコスト負担も開始されます。
CBAM対象品の取り扱いがある企業は、GHG排出量算定に関する情報の提供を求められる可能性があることを念頭に、排出量可視化に取り組む必要があります。
CBAMでは、製品1トンあたりに配賦されるGHG排出量を報告する必要があります。また、複数のサプライヤーから材料を調達し製造されたCBAM対象品については、多くの場合、GHG排出量を算定するために上流サプライヤーからの情報収集が必要になります。
一方で、CBAMは制度自体が複雑です。また、GHG排出量算定のための情報共有基盤が確立していないことが多く、複数の製造工程における排出量算定には関係企業の協力と丁寧なコミュニケーションが必要不可欠です。さらに、製品のHSコード管理が不十分であることにより、CBAM対象品を見誤るケースも散見されます。
GHG排出量算定のための情報収集・管理を実現し、さらに業務効率化を推し進めながら適切にCBAM要件に対応するためには、本格実施導入前の情報収集体制構築および管理プロセスの整備が急務です。また、長期的には、企業の環境投資に向けた取り組みとして、CBAMで求められるGHG排出量の管理と可視化に取り組むことで、CBAM対応が新たなビジネスの機会や企業価値創出の機会となることが期待されます。
PwC関税貿易アドバイザリー合同会社は、PwC税理士法人と協力し、企業のCBAM対応とGHG排出量の可視化を支援するため、社内CBAM体制の構築やプロセス確立をはじめ、サプライヤーコミュニケーションや、CBAMの観点からのESGや調達戦略まで一貫して支援します。
図表3:CBAM対応支援サービス一覧
CBAM対象品は、EU域内への輸入時に適用される品目ごとのHSコードによって決定されます。つまり、欧州向け輸出製品を扱う企業は、まずその製品がCBAM報告の対象かを確認する必要があります。
HSコードの判断理由が不明確である、輸出国と輸入国で異なるHSコードを使っている、また、HSコードは通関業者に一任しており企業側で管理をしていないというような場合は、改めてその品目がCBAMの対象かどうかを確認することが推奨されます。PwC関税貿易アドバイザリー合同会社では、CBAM対象品のHSコードを十分検証できていない企業に対し、HSコードの判定理由の整理および報告も含む、HSコード付番や見直しに関する支援を提供します。
CBAMに対応するためには、輸出者・輸入者だけでなく、関連サプライヤーにも説明を行い、理解を得ることが重要です。
PwC関税貿易アドバイザリー合同会社では、欧州向け輸出製品を扱う企業がCBAM制度について理解を深め、自社の対応を検討するためのワークショップを実施します。また、関連サプライヤー向けの説明会にも対応しています。
CBAM実施規則に基づいたGHG排出量算定では、上流サプライヤーからのGHG排出量に関する情報を収集する必要があります。関連する上流サプライヤーからのGHG排出量報告にかかる協力を得るためには、サプライヤー向けの報告テンプレートを作成することが効果的です。
PwC関税貿易アドバイザリー合同会社では、企業のCBAM対象品の製造工程情報について整理し、その企業と関連サプライヤーにとって現実的な情報提供・回収を実現するためのテンプレート作成を行います。
複数のサプライヤーから情報を収集し、GHG排出量の算定を効率的に実施するためには、情報収集方法や算定方法の自動化の検討が推奨されます。業務プロセスを整理し、作業を自動化することで、GHG排出量算定業務の効率化を図ることができます。
PwC関税貿易アドバイザリー合同会社では、PwC税理士法人と協力し、各企業の取扱品と製造工程に合った情報収集テンプレートを活用して、各サプライヤーから提供される複数段階にわたる製造工程のGHG排出量情報を一元化し、製品に紐づけ、さらに製品単位のGHG排出量を自動計算することができるプラットフォーム構築を支援します。関係サプライヤーがプラットフォームに直接アクセスし、提供情報を入力することも可能となるため、情報収集のやりとりを効率化できます。
CBAM情報管理プラットフォームでは、関係者の教育目的の概要情報のほか、各サプライヤー報告状況の一覧管理、さらには、GHG排出量の可視化とレポート出力も可能です。
図表5:CBAM情報管理プラットフォームの画面イメージ