海外の税務調査・国内争訟のプロセス：マレーシア

机上調査と現場調査（一般法人税調査・移転価格調査）の2種類

• 一般法人税調査
  リスク評価基準に基づき、さまざまな情報源を用いコンピューター化されたシステムより調査対象を選定。
• 移転価格調査
  関連者間取引の取引規模・割合が高い場合（TP audit Framework）や、複数年度の損失計上、特定の関連者間取引（特にロイヤルティ・マネージメントフィーの過大な支払い）がある場合に選定されやすい。

• 机上調査
  1．当局からの資料提出要求
  　↓（14日以内）
  2．納税者による回答資料提出
  （場合によっては、複数回に及ぶ場合もある）
  　↓
  3．検出事項がレター形式で提示される
  　↓（18日以内）
  4．納税者による検出事項に対する回答の提出
  　↓
  5．更正通知書（Form JA）の発行
  （※机上調査は、3に進まずに現場調査の1に移行することが多い）
• 現場調査
  1．調査開始通知
  　↓（14日以内）
  2．調査官が納税者を訪問
  （一般法人税調査では1～3日、TP調査では4～5日で終了）
  　↓
  3．資料のやり取り
  （依頼資料・質問に対する資料・回答の提出）
  　↓
  4．検出事項がレター形式で提示される
  　↓（18日以内）
  5．納税者による検出事項に対する回答の提出
  　↓
  6．更正通知書（Form JA）の発行

• 一般法人税調査
  実地調査開始日から90日以内（延長可）
• 移転価格調査
  通常は6カ月程度の時間を要する（長期化すると1～2年かかるケースも見られる）

更正通知書（Form JA）を受領後30日以内

• ペナルティ
  法令上、更正税額の100％のペナルティを課すことが可能。
  ただし、調査フレームワークに基づき運用は以下の通りとなっている。
  • 一般法人税課税：更正税額の45％
  • TP課税のペナルティ料率
    （従来からのペナルティフレームワーク）
    • TPD未作成：追徴税額の50％
    • TPD作成済、ガイドラインに非準拠：追徴税額の30％
    • TPD作成済、ガイドラインに準拠：0％
      （サーチャージ制度）（2021年1月1日適用開始）
    • 移転価格調整額の5％

（注）
2021年7月現在、従来からのペナルティフレームワークとサーチャージ制度は併存している（同時適用不可）。

• 延滞税・遅延利息
  • なし

収益認識時期、費用の事業関連性、資本的取引／収益的取引、固定資産の償却（優遇措置含む）や除却、移転価格（ロイヤルティ、マネージメントフィー、役務提供取引）、源泉税

異議申立
　↓
税務当局内の組織であるSpecial commissioner of Income tax（SCIT）に転送
　↓
High Court
　↓
Court of Appeal

納税者による異議申立（Form Q）の提出
　↓
DRDによる審査
　↓
納税者による追加資料の提出（必要であれば）
　↓
DRDによる事案解決案（仲裁案）の提示（提案に対する回答期限の日数は特に規定されていない 合意しなければSCITに転送されることが予定されているためと思われる）
　↓
納税者が合意すれば更正通知書発行
原則12カ月以内に合意しなければSCITに事案を回付
（SCITにおける聴取前であれば納税者とDRDはさらなる協議可能）

異議申立のSCITへの転送
　↓
Case Management（Commissioner、納税者、DRDの打合せ）
DRDでの議論の報告や、SCIT外での議論の内容や当事者の最新の見解についての報告がなされる
　↓
ヒアリング
SCIT下における正式な手続き。Commissionerによる当事者の主張の聴取
　↓
決定通知（Deciding Order）の発行

SCITでの決定に不服の場合、High Courtへ控訴可能
　↓
High Courtでの判決にも不服がある場合は、さらにCourt of Appealへ上告可能