次世代女性リーダー育成プログラム「Design your future 2021」を開催 ~Diversity and Inclusion (多様性とは。インクルージョンとは。)」を考え尽くした1週間~

2021-09-28

次世代を担っていく女性リーダーの育成に向けて、PwC Japanグループ(以下、PwC)と一般社団法人スカイラボ(以下、SKY Labo)は2021年7月26日から6日間、日本の女子中高生を対象にした教育プログラム「Design your future 2021~デザイン思考で未来を描こう」をオンラインで開催しました。今年で3回目となる同プログラムには、全国から32名の女子高生が参加。画面を通じて活発に意見交換し、実際にアイデアを表現するプロトタイプ作成を通じて、イノベーターやアントレプレナーのマインドセットにつながる「デザイン思考」にチャレンジしました。

バーチャルプログラムの 様子

バーチャルプログラムの様子

「人」を中心としたデザイン思考を養う

「Design your future」は、イノベーターやアントレプレナーとしてのマインドセットの育成を目的とした次世代女性リーダー育成プログラムです。イノベーションを支えるSTEAM*人材育成を目指すSKY Laboが独自に開発した教育プログラムを提供し、課題発見力やコラボレーション力、課題解決力など、これからの社会で必要なスキルとマインドセットを身につけてもらうことを目的にしています。

(*Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(エンジニアリング)、Art(アート)、Math(数学)それぞれの頭文字を取った造語です)

今回、プログラムの柱となったのが「デザイン思考」「SDGs」「Diversity and Inclusion」という3つの考え方です。

デザイン思考とは、ものづくりの原点を、技術や作る側の視点に置くのではなく、ものを利用する人間(ユーザー)側の視点に置いた「人間中心の発想プロセス」で、製品やサービスを開発するアプローチを指します。デザイン思考を取り入れたSTEAM教育の特徴は、「ユーザーのニーズを理解し、その実現のためにどのような技術を活用すべきか」を考える力を養えることにあります。

この「デザイン思考」のフレームワークを使って、参加者は持続可能な「Diversity and Inclusion」の実現に向けた課題解決のアイデアを具現化する一連のプロセスを実践しました。

プログラム開催にあたり、PwC Japanグループ代表の木村浩一郎は、デザイン思考において重要なこととして、他者に対する「Empathy(共感)」を挙げ、プログラムの意義を以下のように語りました。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、貧困や格差、特に社会的弱者が困窮する課題が浮き彫りになりました。こうした社会では多様な視点で課題を見つけること、そして課題解決には当事者の声に耳を傾け、複雑に絡み合う社会構造を理解し、アイデアを出し合うことが大切です」

今回のテーマ「Diversity and Inclusion」は、グローバル化が加速する世界においてますます重要になることは間違いありません。木村は「多様性とインクルージョンと聞くと、『性別、国籍、障がいの差を解消する』と捉えがちです。これからの時代は、それらに加えて『個々人の考え方、育ってきた環境、得意なことなどを尊重し、自分と異なる人たちと連携していく』という視点が大切です」と述べました。

画面越しに実施した、 ユーザーインタビュー

画面越しに実施した、ユーザーインタビュー

対話による課題解決を学ぶ

6日間のプログラムは、「Diversity and Inclusion」という大テーマを構成する「平和と正義」「健康と福祉」「インフラとイノベーション」など8つのサブテーマごとに少人数のチームに分かれ、議論を進めました。

また、デザイン思考で要となる「ユーザー役」として、各チームに1名ずつ、計8名のPwC社員が参加しました。参加者はまず「どのユーザー役に」「どのような質問をしたいか」をチームで話し合い、ユーザー役との対話前から、自分たちの思いを意見として出し合います。

そして、ユーザー役に対するインタビューやチーム内での議論の中から課題を探究し、フィードバックを得ながらチームでブレーンストーミングを重ねて、課題を解決するサービスやプロダクトのプロトタイプを作成しました。

プログラム初日には、インタビューを通してユーザーの潜在的なニーズを汲み取るアプローチを学びました。「こちらが聞きたいことを引き出す」のではなく、ユーザーの意図や気持ち(インサイト)を汲み取るにはどのようなアプローチが必要なのかを考え、「ユーザーに寄り添って感情を共有すること」の大切さを学びました。

2日目にはユーザー役であるPwC社員にインタビューを行い、ニーズを詳らかにして理解していきました。「平和と正義」のチームでは、インタビューを通じて、「そもそも『平和』の定義って何だろう」「自分が正しいと思っている『正義』は、他者にとって正義ではないのでは」といった議論が交わされました。

インタビューのトピックは、今世界で起こっている紛争や人種差別といったグローバルな課題から、学校教育や学習指導要領のあり方といった身近な話題まで多岐にわたりました。どのチームもインタビューをする中で質問の幅がどんどん広がっていきました。ユーザー役を務めたPwCの社員の1人は、「質問力のレベルの高さに驚きました」と振り返ります。そして、「例えば、私が学校について言及した際、すぐに平和と学校を結びつけて、『平和を実現するためには学校教育の現場でどんなことを取り入れたらよいか』という質問が挙がる。その積極性に頼もしさを感じました」と続けました。

また、このPwC社員にとっては、「平和と正義」を自分ごととして捉えていたことが印象的だったといい、このように感想を述べています。「『今の日本は平和ですか?』という生徒の質問に対し、『平和だけど、個人単位では幸せを感じているだろうか』と問題提起をしたところ、『では、みんなが幸せになるために、自分たちは何ができるのか』といった観点から議論を深められていて、高いレベルの議論展開に感銘を受けました」。

3日目には先のインタビュー内容をもとに、ニーズを具現化する作業を行いました。具体的には「エンパシーポートレート」というツールを用い、ユーザーのインタビューを分析して、ニーズを抽出していきます。これに「ニーズステートメント」という別のツールを用いてプロトタイプの作成に取りかかりました。

4日目には完成したプロトタイプをユーザー役のPwC社員に披露し、フィードバックを受けました。「平和と正義」チームは、障がいを持っている人も誰もが楽しめる人工島(遊園地)「Universal Design Island」のプロトタイプを作成。インタビューを行ったユーザー役のPwC社員がADHD(注意欠如・多動性障がい)の子供を持つ母親であり、みんなと同じことができて当たり前ではなく、みんな違ってみんないい、と子供たちが思える学校教育であってほしいと述べていたことから、メンバーの1人は「どのような個性を持った人でも楽しめて、だれもが受け入れられる空間と時間を作りたかった」と背景を説明します。そのうえでこのメンバーはユーザー役のPwC社員の「幸せや正義はひとそれぞれ。大切なのは、誰もが自分とは違う個性を持っていることを理解すること。そのためには、相手の話に耳を傾け、じっくり話を聞くこと」という言葉に影響を受けたと語りました。

メンバーのアイデアに、ユーザー役のPwC社員は、「自分のインタビューから『誰もが楽しめる遊園地』というアイデアが生まれるとは考えもつきませんでした」としたうえで、以下のように語ります。

「課題解決を考える時、大人はネガティブな要素を改善しようとします。しかし、今回の参加メンバーは現状をポジティブに受け入れて、『みんなが楽しめる』というベクトルに考えを向けました。この発想こそがDiversity and Inclusionであり、すばらしいと思います」。

ニーズ抽出の アイディエーション

ニーズ抽出のアイディエーション

エンパシー ポートレート

エンパシー ポートレート

私たちは世界を変えられる、自信がついた6日間

プログラム最終日のクロージングセレモニーでは、各チームが作り上げたプロトタイプについてのプレゼンテーションをそれぞれ英語で行い、他チームのメンバーやゲスト審査員からの質問を受けました。審査員として、スタンフォード大学教育学大学院副学長のシェリー・ゴールドマン教授と、PwC Japanグループ エクスペリエンスセンターの藤本佐百合が参加しました。

「平和と正義」チームは、「Universal Design Island」のアイデアを紹介し、「人によって、その人が考える“普通”は異なります。だからこそ、誰もが受け入れられ、自分の個性を発揮できる社会が平和と正義の実現だと考えました」と発表しました。

これに対して審査員のゴールドマン教授は、「一般的に(すべての人に受け入れられる)ユニバーサルデザインを考えることは難しいと言われています。しかし、ユーザーのニーズに共感し、チームで果敢にチャレンジしてすばらしいプロトタイプを作り上げました」と高く評価しました。

審査員として参加したPwC Japanグループの藤本は全体の総括として、コロナ禍ではクリエイティブに物事を解決するデザイン思考が求められていることに触れつつ、「プログラムではさまざまなバックグラウンドを持つ人と協業することと同時に、自分の意見を発信して共感を広げることの重要性を学ばれたと思います。今後のビジネス界では人間にフォーカスして理解を深め、ビジネスと技術、そして人に対する共感力を伸ばしていくことが大事です」とコメントしました。

プログラムの締めくくりとして、ゴールドマン教授と藤本は、「今回のプログラムを通じて考えてほしいのは、『これから先に自分は何ができるのか』です。皆さんはこれからの変化を担う人材であり、世界を変えることができる人たちです」と参加者へのメッセージを送りました。

参加者からは、「自分の意見をみんなが認めてくれたので、自分のアイデアに自信が持てるようになった」「物事をいろんな視点からみて、問題を解決しようとすることの重要性を学びました」「私はもともと自分に自信がなくて、私なんてたいしたことない…と思いがちでしたが、このプログラムがお互いのことを受け入れる環境であったからこそ自分に自信を持つことができました」などの感想が寄せられました。


PwC Strategy&パートナーで、PwCグローバルのイニシアチブ「New world. New skills.新たな世界。新たなスキル。」の日本におけるリーダーを務める唐木明子は今回のプログラム開催にあたり、参加者へ以下のメッセージを寄せています。

「多様性に富んだチームで働くためには、『期待値をオープンにすること』『互いに話をすること』『共通の達成したい目標を持つこと』が必要になります。これからは今まで以上に、『声をあげる』『言う』ことがとても大切です。自分は何を、どのようにしたいのか。そして、他の人の“らしさ”とどのように一緒にやっていくのか、たくさん考え、話していただきたいと思います」

PwC Japanグループはこれからも、地域社会やクライアントとのコラボレーションによる次世代の人材育成に向けた取り組みを通じて、変化に強い、インクルーシブな世界の実現を目指します。

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