【主要プラクティスについて語る:メンバー対談】 税務アドバイス/税務調査対応/税務争訟

税務コンプライアンスの徹底に向け、
取引検討段階から事後対応までを支援する
精鋭“タックスローヤー”集団

近年の企業経営は「税務に関するコーポレートガバナンスの充実」を図るため、「税務コンプライアンス」の徹底が強く求められています。PwC弁護士法人では、それらを含む企業に関する税務のさまざまな課題を、PwC Japanグループ各法人のプロフェッショナルと連携しながら一貫してサポートすべく、税務アドバイス/税務調査対応/税務争訟(以下税務)プラクティスを有しています。同プラクティスのメンバーに、取り組み状況や個々の仕事のやりがいなどを聞きました。

メンバー

PwC弁護士法人
パートナー代表/北村 導人弁護士(53期)※写真中央
柴田 英典弁護士(66期)※写真左
髙松 礼奈弁護士(73期)※写真右

※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時(2023年1月)のものです。

ストラクチャリングから関与

――税務分野に関する取り組み状況を教えてください。

北村:租税法の解釈・適用に関する助言などを主に行うプラクティスです。税務・法務の双方を考慮したストラクチャリング、税務調査対応、事前照会、税務争訟対応、外国の税務訴訟マネジメントなど、かなり広範囲の業務となります。これらのなかで、昨今、争訟を見据えた税務調査対応、否認リスクの検討、私法と税法の交錯する相談、税法解釈に関する意見書作成、外国子会社の税務訴訟のマネジメント、事業承継・相続に関する法務・税務などが、クライアントからのご相談として増えています。

――税務分野を扱う魅力は何でしょうか。

北村:税法の条文自体が複雑であることから、法律家としての条文解釈の力量がまず問われます。さらには、税法の前提となる私法の理解が必須なので、さまざまな法知識と経験も要求されます。税法と聞くと一歩下がってしまう弁護士もいるかもしれませんが、税務分野は法律家としての能力を存分に発揮できる魅力のある分野です。とはいえ、米国のような“タックスローヤー”は、日本ではまだまだ少数。そうした状況下、複数のタックスローヤーを擁し、税務分野のプラクティスを有していることは、当事務所の強みといえます。

――PwC弁護士法人の税務分野における強みを教えてください。

北村:日本では税務アドバイスを、主に税理士が担っています。ですから一般に依頼者が法律事務所や弁護士にご相談に来る際には、すでに取引が実行され、関連書類も作成されていることが多く、税務調査や税務争訟での主張・立証の際に困難を伴うことがあります。他方、M&A、金融取引その他新しいビジネスモデルの構築など、さまざまな取引に係る税務・法務双方の観点から適切なストラクチャーを助言するストラクチャリング助言業務や、さまざまな税務・法務リスクを考慮した契約書その他関連書類の作成業務など、取引を検討・実行する段階から税務専門弁護士(タックスローヤー)が入ることで、後の税務調査や税務争訟において的確な対応が可能となります。私自身、そのような日本における税務プラクティスの特徴を踏まえて、税理士法人とタックスローヤーの強みを融合させた税務サービスを提供したいと考え、PwCにはそれを実現できる環境があることに魅力を感じてPwC弁護士法人に入所した経緯があります。実際、現在はPwC税理士法人と協働して、税務調査や税務争訟の前のストラクチャリング助言業務や、SPAなどの税務関連条項を含む契約書や関連書類のレビューといった案件に多数関与しており、税務調査や税務争訟での的確なディフェンスにつながっていることを実感しています。このように税務プラクティスにおける上流段階から弁護士が参加できる環境であることが、リーガルマーケットにおける当事務所の大きなアドバンテージとなっています。

――髙松弁護士が、当該プラクティスに参加した理由を教えてください。

髙松:従前、新たなビジネスの法的ストラクチャーを検討する際など、クライアントから「税務面にも配慮したアドバイスがほしい」とのご要望をいただくことが多々ありました。税法の知識を有することで、よりクライアントのニーズを満たした法的サービスを提供できると考えたため、税務分野に強い当事務所に入所しました。現在は、コーポレート・M&Aを主軸に税法にも長けた弁護士になることを目指すべく、さまざまな案件に携わらせていただいています。

柴田:どのような取引の場合も税は必ず発生するものですし、税法は弁護士にとって、非常に面白い分野だと思います。税法が絡む案件は、税法自体をテクニカルに解釈するタイプのものがある一方で、民法や会社法などの“根本”に立ち返らないと解決できないタイプのものもあります。後者の例としては、外国法に基づく取引きが日本税法上どのように取り扱われるか、といったものです。このような案件では、海外ネットワークに各国の法制度を確認した上で、日本法の観点から私法的な分析・検討を基礎まで立ち返って行う必要があるため、弁護士としての力量が試されるという点でやりがいを感じます。また、税務の専門的なバックグラウンドがない弁護士であっても十分に活躍することができると思います。

業界団体に所属しロビイングも推進

――近時のホットトピックはどのようなものでしょうか。

北村:柴田弁護士は、暗号資産やブロックチェーンを活用したサービス開発・事業活動などの新規ビジネスにも積極的に関わってくれていますね。

柴田:税務はPwC税理士法人が中心で行いますが、私も税務をフォローしつつ法務のアドバイスを行っています。企業が新しいビジネスを展開する際、不安を感じるポイントが大きく2つあります。それは、金融規制を含めた各種規制と税務面への対応で、「ここが改正されたらいいな」という声もよく聞きます。PwC弁護士法人として、ブロックチェーンに関する業界団体に所属しており、業界団体を通じてクライアントの声を官公庁や議員に伝えるという活動もしています。

北村:柴田弁護士が行っているのは、いわゆるロビイングですね。法律事務所が業界団体に所属してロビイングを行うケースは、日本ではまだあまり多くないと思います。税制改正に関するロビイングの機会はそれほど多くはないものの、私たちは商社や製薬など各業界が抱える特有の問題について、各社の代表とディスカッションする一方で、税制改正要望を提出して検討してもらうなど、さまざまなアプローチで企業をサポートしています。

他分野のプラクティスにも応用できる税務分野の知見

――具体的な取り組み例を教えてください。

髙松:PwC税理士法人の移転価格税制チームから、「移転価格税制に関して、クライアントが税務当局から質問を受けたため、クライアントの主張を裏付ける法的主張を検討してほしい」との依頼があり、主張の検討とリサーチを担当しました。移転価格税制チームと議論を行い、税務のプロフェッショナルにも納得していただける法的主張を組み立てるという過程で、PwC Japanグループの他の分野のプロフェッショナルと連携してクライアントの課題を解決するという当事務所ならではの醍醐味を味わいました。

北村:髙松弁護士の関与した移転価格税制は非常に難しい領域でしたが、議論のベースは対価の法的性質が絡む問題であったため、民法や契約法を紐解く案件でした。まさに当事務所ならではの、税法と私法の交錯する案件です。今後もそうした経験をたくさん積み、私法はもちろん、税法についての知見を深めてくれることを期待しています。

――当該プラクティスで得た知見・経験が、自分の仕事にどう役立っているか教えてください。

柴田:コーポレートの場合はある程度パターン化できる業務もありますが、税務はパターン化できる案件が多くはなく、そこに難しさとともにやりがいがあると思います。また、コーポレート案件でも、特にPwC税理士法人などの他法人と一緒に案件を進める場合、ある程度の税務の知識があれば、税理士と議論をしながらディールストラクチャーを検討することができるという強みとなるケースは多いですね。

髙松:税務の専門知識は勉強過程ですが、先輩弁護士のやり方を見て学び、また他のプロフェッショナルとコミュニケーションを取りながら案件を進める中で、案件においてどこが税法上の論点になりそうか、事前に相談しておくべきポイントはどこかなど、勘所が少しずつ分かるようになってきました。こうした勘所の蓄積は、他の案件にも応用可能であり、随所で役に立っていると感じます。

――当該プラクティスに参加してよかったことを教えてください。

髙松:当該プラクティスとの関係では、日本経済新聞社の弁護士ランキングやLegal500などで高く評価されている北村弁護士の下で学べることでしょうか。貴重な学びの機会を頂けていることに感謝するとともに、自らも積極的に貢献しなければならないと日々感じております。また、北村弁護士をはじめとする当事務所の先生方からの学びはもちろん、PwCのグローバルネットワークを生かして、海外のLegalネットワークと共同したグローバルのコーポレートトランザクションにも積極的に取り組むことができる点も当該プラクティスの強みであり、私自身も積極的に取り組んでいきたいと考えています。

国内ナンバーワンのタックスローファームを目指して

――当該プラクティスの今後の展望を教えてください。

北村:当事務所の税務分野の特長を強化していきます。すなわち、日本における税務プラクティスでクライアントの皆様に有効かつ価値あるサービスを提供するためには、税理士法人と弁護士法人(タックスローヤー)の協働が極めて重要です。PwC Japanグループにはそれを実現できる環境が整っており、それぞれの強みを融合させた税務サービスの提供を推進していきます。また、私法と税法の交錯領域を的確に助言していきたいと考えています。税法解釈だけでは解決できず、そのベースにある私法の問題を税法と絡めながら解釈し、助言を行っていく。このような私法と税法の交錯領域を的確に助言できるのが、タックスローヤーの醍醐味の1つであり、その点を強みとしていきたいです。最後はグローバルネットワークの活用です。柴田弁護士や髙松弁護士が話したとおり、海外のLegalネットワークを活用して各国の法制度やプラクティスを確認した上で、日本法を含めた総合的なアドバイスをしていきたいです。これらの特長を生かしつつ、税務に関するグローバルガバナンスに力を入れていきます。

冒頭でお話ししたように、税法は法律家にとっては馴染みの薄い分野ですが、実は、税法プラクティスは民法や会社法など馴染みのある法律の解釈などが深く関係する場面が多いのです。ですから本来、弁護士であれば誰でも参加し得る領域であると考えています。当事務所では、税法のバックグラウンドがない若手弁護士にも、税務調査や税務争訟の案件に入ってもらうことが多々あります。それは、税法の前提となる私法の分析から入ってもらい、それらがどのように税法解釈につながるかを知ってもらうことで、税法分野の面白さに気付いてほしいからです。まだまだ日本においては少ないタックスローヤーをたくさん育成し、日本の弁護士業界のなかでも一目置かれるタックスローファームにしていくこと。所属弁護士全員がタックスローヤーを名乗れる力量を身に付けること。これが、当事務所の立ち上げ時から掲げている目標です。例えば、M&A法務を得意とする、人事・労務を得意とする、ESG/サステナビリティ関連法務を得意とするタックスローヤーなど、異なる得意分野を持ったタックスローヤーで堅固な体制を構築していきたいと考えています。私たちのこの取り組みに興味を持ってくれる若手弁護士の参加をぜひお待ちしています。