【主要プラクティスについて語る:メンバー対談】 M&A法務

税務、ディールズ、コンサルティングなど
多様な領域のプロフェッショナルと協働し、
M&A法務で“基礎・応用・総合力”を磨く

企業成長の有力な手段として、世界各国・地域のさまざまな事業分野で企業買収が活用されています。PwC弁護士法人では、戦略立案からPMIに至るまでのM&Aディールを、PwC Japanグループの各法人やPwCグローバルネットワークと連携しながら、統合的に支援しています。この「M&A法務」を専門とするプラクティスのメンバーに、取り組み状況や仕事のやりがいなどを聞きました。

メンバー

PwC弁護士法人
パートナー/茂木 諭弁護士(53期)※写真中央
田上 薫弁護士(72期)※写真左
福井 悠弁護士(73期)※写真右

※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時(2023年1月)のものです。

クロスボーダーM&Aも国内中小規模のM&Aも網羅

――M&A法務に関する取り組み状況を教えてください。

茂木:PwC弁護士法人では、国内外のM&Aについて、法的ストラクチャーの立案から、法務デューデリジェンス(DD)の実施、買収契約の作成・交渉・クロージング、PMIまでの全プロセスを通じ、事案ごとの特性を踏まえた法務リスクの発見と対応策の検討・アドバイスを行っています。当事務所の最大の特長は、PwC Japanグループ各法人のプロフェッショナル(ディールアドバイザリー、税理士法人、コンサルティング、監査法人など)と密接に連携し、協働できることです。私たちは、クライアントの複合的な課題解決のために、案件に応じて最適なチームを組成し、One Teamでトランザクションの各フェーズを効果的に実行できるよう支援しています。各専門分野の“切り貼り”のようなアドバイス提供は決して行いません。2つ目の特長は、“グローバルの視点”を持っていること。買収対象が海外企業の場合、関連する法規制の調査や契約交渉支援などを、世界90カ国以上にあるPwC Legalのグローバルネットワークと連携して行います。国内はもとより、グローバルに展開する日本企業のM&Aや、海外における拠点のグループ再編なども万全の体制でサポートしています。

――近時、増加しているご相談はどのようなものでしょうか?

茂木:激化する国内外の競争環境において、事業規模の拡大や事業の「選択と集中」によって業績向上を企図する企業が、さまざまな形のM&Aを模索しており、その中で法的ストラクチャーや法的な実現可能性(Feasibility Study)の調査・検討から始まるご依頼が、より一層増えています。また、近年は各国が外資規制や投資規制をかなり強めている傾向にあり、これに関連するクライアントのニーズも高まっているため、私どもの行うクロスボーダーM&Aにおいても常に論点として上がってきています。一方で、世界各国をまたぐグローバルなM&A案件ばかりでなく、国内のM&A、中小規模のM&Aにも数多く対応しています。ゆえにご相談内容も案件規模もバラエティに富んでいます。

複雑・多層・緊急の案件にもOneTeamで対応

――具体的な取り組み例を教えてください。

茂木:例えば、合計数十社が関与する国内外のグループ再編がありました。その際は、10カ国以上のPwCのグローバルネットワークの法務チームと連携したほか、税務チーム、バリュエーションチームらとも協働してクライアントを全面的に支援しました。また、国内の緊急買収案件のサポート例もあります。この案件では、業績が悪化している国内の対象企業の買収を希望するクライアントに対して、PwC Japanグループの各法人のプロフェッショナルが連携し、各種DDから交渉戦略策定、英文による契約書作成、交渉、クロージングまで一貫して支援しました。この事例では先行するほかの買収候補者と競合していたため、迅速な交渉戦略策定が求められましたが、PwC Japanのさまざまなグループのプロフェッショナルが知恵を出し合うことで、私どものクライアントの提案の強みを引き出すことができ、短期間でDDおよび買収契約の検討を完了できました。ほかにも日本の上場企業同士の経営統合、ベンチャー投資および事業提携案件のサポート、国内メーカーと大手販売代理店との国内合弁事業の組成、事業の切り出しに伴う複雑かつ多岐にわたる法的問題点の整理および相手方との交渉などの案件において、PwC Japanグループ内のチームがそれぞれの専門性を生かして整理・交渉し、解決に導いています。

――田上弁護士と福井弁護士は最近どのような案件に取り組みましたか。

田上:“グローバル規模”とは対極の例ですが、最近携わった案件のなかでは、第三セクターの事業譲渡に関する中規模のM&A案件が印象に残っています。その件を含め多くの案件で、ビジネス・企業の成り立ちから売却などのタイミングまで、時系列的にも業務範囲的にも、案件および対象企業の全体を見る機会が少なくありません。法律家としての基礎体力を付けるという意味で、M&A法務のプロジェクトではさまざまな経験をさせてもらっています。

福井:私は、茂木弁護士のもとで国内企業のM&Aに関与しました。具体的には法務DDの中で会社・組織の部分などを担当し、法務DD報告書を作成する経験をしました。DDはM&Aの中で、かなり基礎的な部分ですが、私にとっては大変学びの多い仕事でした。あらゆる法分野と関係しますし、必然的に広範囲の知見を深めることができたと思います。特定のセクターなど限られた分野ではなく、多様な企業のビジネス・業界に触れられるM&A法務プラクティスへの参加は、キャリアを形成するうえで大きな糧になっていると感じています。

茂木:私たちが関与するM&Aは、事業承継やグループ再編、国内外の買収案件、上場企業が関連する案件、大型のクロスボーダーM&Aとさまざまで、特定の分野に偏ることがありません。このように広範で多層的な案件に関与することで、田上弁護士と福井弁護士が実感してくれたように、弁護士の基礎力から応用力まで鍛えることができますね。

――そうしたM&A案件に携わる中で、苦労することはありますか。

田上:グローバル規模の組織再編の場合、各国の細かい事情を全て考慮することは容易ではなく、また複数の国が関与することで全体としてかなりタイトなスケジュールになることがあります。現在携わっている案件もスケジュールがタイトで、しばしば緊急のグローバルのオンラインミーティングが行われ、グローバル規模の組織再編の苦労と醍醐味を同時に味わっています。

福井:具体的な事案に即した問題解決の実現は弁護士として最大の喜びですが、同時に非常に困難な課題でもあります。法務DD報告書を作成する際も、単に「違法の可能性がある」とだけ記載するのではなく、解決のための提案を依頼者の立場に立って行うことが重要であると考えています。また契約交渉の段階でも、個別の事情に即した利害調整とリスク分配を目指さなければ、依頼者に納得いただけるような成果を得ることはできません。このような事案に即した対応の難しさは、法律実務家ならではの楽しさである一方、最もシビアで苦労する部分でもあると感じています。

PwCにおけるネットワークを活用

――このプラクティスで得た知見・経験が、自身の仕事にどう役立っているか教えてください。

田上:DDを行うことで、企業の状況を幅広く知ることができ、また、企業経営を垣間見ることができます。そうした経験を通じて得た知見のおかげで、ほかの案件に携わる際も、企業経営の実態に鑑みたアドバイスができているのではないかと思っています。

福井:M&A法務の仕事を通じて、企業法務の“地力”を付けることができていると思います。例えば法務DDを通して、企業が法規範との関係で本来どうあるべきか、適法であると評価するためには何が不足しているかなどの視座を養うことができます。これは法律実務家として大変貴重な経験です。また、株式譲渡契約書のレビューやドラフトの場面では、文献リサーチをするだけでは知ることのできない、実務上のプラクティスに関するアドバイスを経験豊富な先輩弁護士からもらうことができています。このアドバイスは大変ありがたいですし、勉強になっています。

――今後どのように成長し、どのような弁護士となっていきたいか教えてください。

田上:M&Aの分野に関しては、まずは小規模なM&A案件を1人で対処できるようになりたいと考えています。弁護士としては、さまざまな分野に興味があるので、今は分野を絞り過ぎず、目の前の案件に丁寧に向き合い、そのなかで自分の適性を見つけていきたいと考えています。また、パートナーからは、当事務所やPwCの組織を活用して自分が何をやりたいか、という視点で考えるようアドバイスをもらっているので、今後はそういった視点も持ちつつ、広くクライアントの皆さんの問題解決の力になれるよう努力を継続していきたいと考えています。

福井:まずは、M&Aコーポレートを扱う弁護士として、最低限できなければならない仕事を自分で回せるようにならなければならないと感じています。例えば、法務DDの取りまとめ役として中心的役割を果たす一方で、M&A契約のドラフト作成を自信を持って行えるようになることが当面の目標です。将来的には国内外問わず、適切にディールを回せる実力を備えた弁護士として、クライアントの信頼を獲得していきたいです。加えて、今、興味のある労働法や「ビジネスと人権」のテーマなどでも専門性を身につけ、私にしか出せないバリューを示せる弁護士になりたいと考えています。

――PwC弁護士法人、PwCならではの魅力を教えてください。

福井:一人ひとりが責任感を持って案件に取り組める環境であることが魅力です。また、PwC税理士法人など、PwC Japanグループ各法人の同期入社者とのコミュニティもあり、それぞれの仕事や働き方に関する情報交換を、守秘義務に反しない範囲で行ったりもしています。これは大変刺激になりますし、純粋に楽しいですね。PwCのグローバルネットワークを活用する業務も多く、英語でのコミュニケーションが不可避であることも、若手弁護士のスキルアップには有効だと思います。

田上:監査、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務などPwC Japanグループ各法人やPwCグローバルネットワークの多種多様な専門領域をかけ合わせ、クライアントに多面的に価値提供できることは大きな強みだと感じています。また、PwC Japanグループ各法人やPwCグローバルネットワークのメンバーと協働することで、多くの学びの機会をもらえることが魅力であると感じます。

M&A法務は、“総合芸術”である

――当該プラクティスの今後の展望を教えてください。

茂木:弁護士としての力量を高めていくことはもちろん、各プロフェッショナルたちと協働することで「クライアントの課題解決」につながるアイデアを弁護士とは異なる視点から取り込み、多様なプロフェッショナルの知恵を集結させた結果をクライアントに提供できるリーガルアドバイザーがそろうチームを目指します。

――どんな方に参加してもらいたいですか?

茂木:私は、M&Aの分野を“総合芸術”と捉えています。渾然一体な状況を鳥瞰してビジネス全体を見渡す必要があるなど、カバー範囲も広いので、好奇心旺盛な方には非常にやりがいのある領域だと思います。一方で、さまざまな事項が複雑に絡み合った会社やそれを取り巻く社会環境の全体像を的確にとらえ、バランスを見ながら仕事を進めることを求められるのがM&Aの分野の特性ですから、ビジネスや社会情勢はもちろん、ファイナンス、税務、人事・労務などといった法分野、そのなかでの新たな法律の動きなど、あらゆることに対して常にアンテナを立て続けなくてはなりません。「目の前にある現在の仕事が、その先にどのようにつながっていくのか」という中長期的な視点を持ち、国内外のさまざまな専門家とコミュニケーションを取りながら自身の成長につなげていきたいという、意欲旺盛な方の参加をぜひお待ちしています。