【主要プラクティスについて語る:メンバー対談】 金融規制対応/金融取引

伝統的な金融規制対応、金融取引をベースに
金融と非金融の垣根を超えた
新たなファイナンスの潮流を捉える

テクノロジーの著しい発展に伴って新しいタイプの金融取引が生まれ、金融規制の適用関係は年々複雑化しています。PwC弁護士法人では、そうした金融市場における法規制などの影響をタイムリーにとらえ、適切に対応すべく、PwC Japanグループ各法人のプロフェッショナルと連携し、伝統的な金融規制対応/金融取引をベースにファイナンス分野の新たなリーガルサポートを積極的に開拓・推進しています。ファイナンス分野のプラクティスのメンバーに、取り組み状況や個々の仕事のやりがいなどを聞きました。

メンバー

PwC弁護士法人
パートナー/神鳥 智宏弁護士(55期)※写真中央
矢野 貴之弁護士(70期)※写真右
望月 賢弁護士(71期)※写真左

※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時(2023年1月)のものです。

金融法務だけでは括れない新たな動き

――金融分野に関する取り組み状況を教えてください。

神鳥:PwC弁護士法人にはインハウスローヤーなど金融機関での勤務経験を有する弁護士が多数所属し、金融規制対応や金融取引サポートなどのサービスを提供しています。金融規制対応については、関連する法規制・監督指針・ガイドラインなどへの対応、コンプライアンスに関する各種照会への対応、法律意見書の作成などに係るアドバイスをクライアントに提供しています。近年急速に成長しているブロックチェーン技術を利用したSecurity Token Offering(STO)やNon-Fungible Token(NFT)などのフィンテックに関しては、法務のみならずテクノロジー、税務、会計などあらゆる要素の知識と経験が必要ですが、PwCコンサルティングが2020年に設立した「Blockchain Laboratory」をはじめとするPwC Japanグループの各法人と連携することで、ワンストップでのサービス提供が可能となりました。

金融取引サポートについては、アセットファイナンスを中心に、バンキング取引、不動産ファイナンスなどのプロジェクトファイナンス取引、デリバティブ取引、キャピタルマーケッツなどの各種取引について、ストラクチャーの検討から、契約書の作成・交渉、意見書の作成、クロージングまで、一貫した法務サービスをクライアントに提供しています。税務・会計上の取り扱いやクロスボーダー取引がからむ複雑な案件についても、PwCの各プロフェッショナルと連携し、One Teamで対応しています。

――近時、増加しているご相談はどのようなものでしょうか?

神鳥:伝統的な“金融法務”では括れない事案の取り扱いが増えていることが、まず挙げられます。不動産M&Aや既存プロジェクトそのものの譲渡などのように、当プラクティスのメンバーがジェネラル・コーポレートやM&Aのプラクティスなど、ほかのメンバーと協働するような案件です。また金融規制対応においては、ペイメントビジネスの拡大により、金融機関と非金融機関の垣根が下がってきました。これにより、非金融機関における資金決済法関連のライセンス取得など、新たな金融サービスの提供を目指すクライアントからの相談も増えてきています。この流れは今後も続くことが予想され、私たちがカバーする範囲はさらに広がっていくものと考えています。

‟業界のトレンド”に即した案件多数

――具体的な取り組み例を教えてください。

望月:神鳥弁護士がお話しした「従来の“金融法務”では括れない事案」の一例として、PwCのグローバルネットワークからの紹介で、海外投資家による日本での学校法人設立(インターナショナルスクールの設立)案件に関与しました。これは、政府が推進している「高度外国人材の受け入れ政策」を踏まえ、そうした人材と一緒に来日する家族(子供)の教育環境などの整備に着目した、ある種の投資案件です。当プラクティスのメンバーが投資手法やリースなどの側面を主に担当し、私立学校法などファイナンス以外の部分をほかのプラクティスのメンバーが担当することで協働して進めました。この案件に携わったことで、ファイナンス分野はもちろん、コーポレート分野の知識も蓄えることができ、さらに他の分野の案件に応用できる多角的な視点と知見を身に付けることができました。

――このプラクティスの特長はどんなところにありますか。

神鳥:金融関連業界の“トレンド”に非常に近い立ち位置にいることです。ここ数年、コロナ禍によるリストラクチャリング案件が国内外で増えました。PwCの海外法人から「プロジェクトファイナンス案件のスポンサー企業の(米国の倒産手続の1つである)Chapter11手続への対応のため、日本チームも関与してほしい」との要請を受け、グローバルチームと協働する形で当該案件に関与しています。また、Web3.0、NFT、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)などのトピックについては、日比慎弁護士(58期)や柴田英典弁護士(66期)が中心となって取り組んでおり、望月弁護士もチームに入って頑張ってくれています。

望月:日比弁護士と柴田弁護士と一緒に10カ国弱の法制度を調査しています。日本ではビジネス先行で、まだDAOに関する法規制ができていませんが、米国では州によっては“DAO法”といった法律がすでに制定されています。そうした先行例を調査し、日本の市場にフィットさせるにはどういったアレンジが必要か、法律的にどのように規制をかけていくべきかなどの観点を持ってリサーチし、意見交換もします。「前例がなく、具体的なリサーチの前に、まずは調べ方を模索しなければならない」といった難しさを感じる反面、整備されていないところから新たなものを創出していくことに、大きなやりがいを感じています。

神鳥:そうした案件は、弁護士法人だけでなくコンサルティング、アシュアランス、ディールズアドバイザリーなどPwC Japanグループの横断的なチームで取り組んでいます。ほかにもPwC Japanグループでは、東日本大震災からの復興に向けて岩手県沿岸広域振興局と協力体制を構築し、同地域の被災事業者に対して、経営相談をはじめとしたさまざまなプロボノ支援活動を行っています。望月弁護士もその活動に参加し、現地事業者向けの法律相談に参加しました。同様に、地方銀行の経営統合支援やeスポーツビジネスの支援など、多様なサービスで同様の横断的なチームが組成されており、私たちもそこに参加してディスカッションを重ねています。そうしたやり取りをすることで、今、どんなことが経営課題となっていて、これからどう展開していきそうかといった、いわばビジネスの芽、トレンドを掴むことができるわけです。今後もこうしたトレンドに近い部分について、積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

ファイナンスの知見を企業価値の向上につなげる

――ご自身の役に立った当該プラクティスでの経験を教えてください。

矢野:神鳥弁護士や望月弁護士が例をお話ししたように、当事務所では多くの案件でPwC Japanグループ各法人のメンバーと協働する機会があります。プロジェクトごとにコンサルタントや税理士などのプロフェッショナルがチームを組み、私たち弁護士もスキームの検討段階から入るのですが、各プロフェッショナルによって考え方や切り口に違いがあり、判断や処理スピードもそれぞれ異なることを実感する刺激的な毎日です。弁護士はどうしても、法律を用いて解決したくなりますが、プロジェクト全体から見るとリーガルはビジネスの一面に過ぎないということにも気付かされます。仕事を通じて、新たな視点・多角的な視点が得られることは、これからの自分のキャリアに間違いなく役に立つと感じています。

神鳥:矢野弁護士は信託に関する専門知識を有しており、そうした金融の一技術をコーポレートの取引にも生かしていこうと積極的に取り組んでいます。“金融は経済の血液”と言われるように、ファイナンス分野の知見は、M&Aやコーポレート、あるいはパブリックセクターなどの案件でも必ず生きてきます。単に債権を回収したり保全したりするといったピンポイントの対応ではなく、「企業価値そのものの向上をいかにして図っていくか」という視点で法律の活用を考えると、リーガルサービスとして提供できる可能性はさらに広がっていきます。これから活躍が期待される若手の弁護士には、ぜひその部分を一緒に考えていただきたいですね。

個々の興味・関心がファイナンスの可能性を広げる

――当該プラクティスの今後の展望を教えてください。

神鳥:PwCのグローバルネットワークとのコラボレーション、PwC Japanグループの各法人とのコラボレーション、当事務所内部のコラボレーションという3つの強みを生かし、ファイナンス分野の知見を、企業の価値向上にどのように役立てられるか、という観点からクライアントに対する法務サービスを行っていきたいと思います。

――どんな方に参加してほしいですか?

望月:当事務所には、一般的にはパートナーが決定するような事案でも、若手弁護士の意見を聞いてくれる風土があります。「いい経験になるし、やってみては」と、新しい分野にもどんどんチャレンジさせてくれます。私自身はそうしてWeb3.0やNFT、eスポーツなどのプロジェクトに参加しています。それらに関与して感じるのは、“ビジネスを捉える力”が鍛えられること。法的な視点だけでなく、ビジネスの視点を持ち、クライアントの背中を押すようなアドバイスのできる弁護士になることが目標の1つです。私のような志向の方であれば、必ずここでやりがいが得られるはずです。

矢野:私は、「自分自身の業務の幅を広げて、さらなる成長をしたい」と考え、当事務所を選びました。法律のみならずビジネスについてもしっかり理解して、クライアントに伴走し、一緒に道を切り拓いていける弁護士になることを目標にしています。実際、入所してからさまざまなプロジェクトに参加させてもらっていますし、グループ内の各プロフェッショナルとの協働、プロジェクトのスキーム検討段階から入ることで、ビジネスや経営者により近いところで仕事ができていると感じています。ビジネス感覚を身に付けながら法律家としての幅を広げたいという方には最適な職場ではないでしょうか。

神鳥:現在、当プラクティスでは金融規制対応と金融取引を扱っていますが、いずれもPwC JapanグループやPwCのグローバルネットワークとのコラボレーションを通じて、多様性と可能性が大きく広がってきています。よって、「新しいトレンドに興味がある方」に、ぜひ参加いただきたいと思います。さまざまな分野に幅広く興味や関心を持てる好奇心旺盛な方であれば、新たな分野に取り組むためのチャンスは十分に用意できる環境です。メンバーが増えればコラボレーションの幅がさらに広がり、当事務所全体の発展にもつながるでしょう。ぜひ、自分自身とファイナンス分野の可能性を広げてみたいという意欲ある方の参加をお待ちしています。