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ビジネスのグローバル化、リモートワークの浸透、AIの利活用、労働関係諸法令の頻繁な改正など、環境の変化により企業経営は人事・労務の分野においても多くの変革を迫られています。PwC弁護士法人にはインハウスロイヤーとしての経験を持つ弁護士が多数所属しており、そうした変革の過程における人事・労務のさまざまな課題に対して、豊富な労働法の知見に基づいて法的側面から助言を行うのはもちろんのこと、企業経営や法務部の実状を踏まえたうえで解決に導くためのサポートを提供できることを強みとしています。この中心的役割を担う人事・労務プラクティスのメンバーが、その取り組み状況や仕事のやりがいなどについて語りました。
PwC弁護士法人
パートナー/小林 裕輔弁護士(61期)※写真中央
福井 悠弁護士(73期)※写真右
松本 安未弁護士(74期)※写真左
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時(2024年7月)のものです。
小林:人事・労務プラクティスでは、労働法に関するアドバイスを日常的に提供しているほか、就業規則や雇用契約書などの人事・労務関連文書の作成、取締役などの役員任用関連、非正規雇用、外国人雇用、ハラスメント関連、懲戒処分、出向・転籍、解雇・退職勧奨関連、労組対応、役職員の個人情報保護、M&A・企業再編における人事労務問題、労災事故、訴訟・労働審判等の紛争解決など、労働法を軸とした企業の多様な人事・労務問題をサポートしています。
その際、PwC Japanグループ各法人の税理士、社会保険労務士、人事コンサルタントといったプロフェッショナルと連携する機会が多々あります。そしてその専門性や知見を結集させることで、労働法にとどまらない広い視点でクライアントの労働問題を捉え、より付加価値の高いアドバイスを提供しています。
小林:日本企業はもちろん、日本で事業を展開する外資系企業の支援も広く行っています。日本企業に対しては、国内での事案に限らず、個々の海外拠点における事案やグローバルな企業再編に伴う事案などにも関与しています。クロスボーダーの要素を含む人事・労務問題については、PwCグローバルネットワーク内のプロフェッショナルと協働する機会が多く、日本企業の海外拠点あるいは外国企業の日本拠点における労務問題といった案件にワンストップで対応できる体制を構築しています。国内外の複雑な人事・労務問題の解決に、効率的かつ効果的なソリューションを提供できることが、当プラクティスの特長です。
小林:コロナ禍の影響もあって、世界各国でリモートワークが普及し、日本の企業に在籍する労働者が海外に居住しながらフルリモートで働くといったケースも可能となってきました。逆に、日本国内に居住する労働者が、日本に拠点を有しない外資系企業のためにフルリモートで働くといったケースも然りです。このように、国をまたいだフルリモートワークが増えるに伴い、「日本法と現地法それぞれに照らすとどのような問題が生じるか」といったご相談が増えています。そうしたご相談に対して私たちはPwCグローバルネットワークを活用して、現地の弁護士と連携し、日本法と現地法の両面からクライアントに対してアドバイスを提供しています。
また、最近は副業や兼業を認める企業が増えたり、企業に雇用されないフリーランスや単発で仕事を請け負うギグワーカーの活用が広がったりしています。1つの企業に雇用されてフルタイムで勤務するという伝統的な枠組みには当たらないさまざまな“新しい働き方”に対して、実務上、企業としてどのように対応していけばよいかといった問題は、今後ますます増えていくでしょう。そうした新しい問題に対応して付加価値の高いサービスが提供できるよう、各国の法規制、労働関係諸法令の最新動向は常にアップデートすることをメンバー全員が日々心がけています。
小林:クライアントのグループ内再編に伴う従業員の承継などに関する支援をPwCアドバイザリーの組織人事アドバイザリーチームと協働して行うこともしばしばあります。これらのケースでは、従業員とのコミュニケーションや再編後の人事制度の設計といった人事面のアドバイスをアドバイザリーチームが行い、私たちは会社分割における労働契約承継手続など法律的な側面からサポートを行うことが通例です。両チームが密接に協働して、クライアントの経営者・従業員と集中的に議論を重ねていくなかで、法律家の視点からはなかなか気づきづらい、人事実務の現場での法的な課題が次々と表出し、一つひとつ丁寧に対応することも少なくありません。
こうした協働を通じて、現場への落とし込みまで配慮した、より付加価値の高い法務アドバイスをクライアントに提供でき、また、私たち自身にとっても、アドバイスの引き出しを増やすことができ、多くの気づきを得られます。人事・労務領域に限らず、PwC Japanグループ内の他の領域のプロフェッショナルと協働する機会は非常に多く、良い刺激を得られる環境が整っていると思います。
福井:私は、就業規程の作成・レビューや、労務デューデリジェンス、クライアントにおける問題社員対応、PwC Japanグループ内のメンバーに向けた労働法問題やハラスメントに関する研修の講師などに従事しています。クライアントが外資系企業であるケースも多いため、日本法のリサーチ結果を英文の成果物にまとめる機会も珍しくありません。日本と海外では法制度も文化も異なりますから、アドバイスの伝え方・言葉の選び方などの熟慮も不可欠で、小林弁護士とディスカッションしながら取り組んでいます。
一例を挙げると、会社の“合併”といった日本法では当たり前となっている法概念が存在しない国もあります。そういった国のクライアントに対しては、冒頭で日本法の基礎的な概念の解説を行い、総論から各論に落としこんでいくアプローチが必要です。そのような手法を学んでいく中で、自分自身のドラフト力の向上を実感しています。小林弁護士は、私のファーストドラフトをレビューしてくださる際に、修正すべきポイントにフォーカスし、“濃淡”をつけて丁寧なコメントをくださいます。そのような配慮をいただけることが、自身の業務品質改善のモチベーションにつながっています。
小林:私自身が先輩弁護士からそのような指導を受けてきたので、後輩弁護士の方々にも同じように、励みとなるかたちで指導できるよう心がけています。
福井:一番の魅力は、自身の知識・経験を有機的に結び付けて活用することで、多種多様なクライアントの役に立てるという点です。クライアントの規模、業種に関わらず、また外資・内資を問わず、そこで働く人がいる限り、あらゆる企業で必ず問題となるのが、人事・労務です。そういったプラクティスとしての普遍性は、自己研鑽の大きなモチベーションになりますし、さまざまな業種・業界に興味を持つ私にとって非常に魅力的です。
また、単純な“法解釈力”を鍛えるだけでは不十分で、クライアントの“生のニーズ”に応えるために想像力を働かせて実務的・実践的な解決策を提供しなければならないという点にも大きなやりがいを感じます。さらに、人事・労務プラクティスでは、クライアントから緊急の問い合わせをいただくケースが少なくなく、それに対して迅速に回答するという日々の訓練も、自分自身の成長を促してくれていると思います。
松本:私は大学時代に参加した国際労働機関(ILO)での研修や大学院での学習を通じて労務に興味を持ち、弁護士になってからも人事・労務に関係する業務に携わりたいと考え、当プラクティスに入所しました。現在、入所2カ月目(2024年3月時点)で、当プラクティスでの活動を始めたばかりですが、業種や規模にかかわらずあらゆるクライアントのサポートができるという点が魅力と考えています。
直近では、企業再編の案件でスケジュール案の作成を担当しましたが、手続の中で労働者の承継に関する対応などが発生しました。このことからも労務の知識は企業法務を扱ううえで必須であると実感しました。資金があっても適切な人材がいなければ事業は前に進みません。人材は企業にとって資本であるからこそ弁護士として労務分野に関与していく意義は大きいと考えます。
小林:弁護士は、独立した立場からアドバイスを行いますが、特に人事・労務は「人」に関わる領域であるため、クライアントの抱える課題は個別具体的な事情によって大きく異なり、教科書的なアドバイスでは、実質的な問題解決にはつながらないことが多々あります。
例えば、ある企業が従業員の賃金制度を変更しようとする場合の法的なアドバイスとしては、労働協約や人事諸規程の状況、想定される変更内容などを踏まえた必要な法手続が考えられます。しかしそれに加えて、従業員に対するコミュニケーションやその記録に関する要領・留意事項など、クライアントが実務の現場に落とし込む際に、より有益になるかたちのアドバイスを提供していくことが大切です。
これを実現するには、クライアントとディスカッションしつつ、現場の声を丁寧に拾い上げながら考える作業を日常的に行う必要があります。松本弁護士は事業会社での経験があるので、企業内の労務プラクティス運用の機微に聡いと思いますし、ぜひその特性を発揮し、当プラクティスで活躍してもらいたいと思います。
福井:当プラクティスでは、若手弁護士でもクライアントと直接やり取りする機会を持つことが可能です。そのチャンスを存分に生かしつつ、労働法の“土地勘”――事象を捉える法的観点のバリエーションを充実させていきたいと考えています。案件を通じ、一つひとつの経験を積み重ねていく中で、労働法に強い弁護士として事務所メンバーとクライアントの双方から頼られる存在になりたい。まずは、そこが当面の目標です。
松本:クライアントから労務の相談をいただいた際、事業を安心して進めていただけるよう、ポイントや問題となる点を的確かつ迅速に提供できるスキルを磨いていきたいです。そのためには、労働法のさらなる理解と労働実務を適切に理解していく努力が必要だと考えています。短期的には案件を主導できる立場になること、長期的には人事・労務の専門性に軸足を置きつつ、労務だけでなく関連する分野も含めてクライアントのビジネスを全体的にサポートできるようになることを目指していきたいです。
小林:当弁護士法人内において、人事・労務分野はプラクティス横断型でさまざまな情報発信活動を行っています。例えば最近では、ジェネラル・コーポレート・プラクティスとして発信するニュースレターで労働基準法施行規則の改正を取り上げたり、リスク&ガバナンス法務ニュースレターという枠組みで、越境リモートワークの問題を取り上げたりしています。今後は当プラクティス主体で、労働法務に関するニュースレターを体系立て、定期的に配信する体制を整えていきたいと考えています。
小林:人事・労務分野では、法律に関する形式知と、経験の積み重ねから得られる実践知の両方が必要になります。これらは一朝一夕に習得できるものではありませんが、当法人では経験豊富な同僚の弁護士、時にはPwCの他領域のプロフェッショナルと協働しながら、多種多様な労働法上の課題を解決する機会を通じて着実にスキルアップしていける環境が整っています。また、海外法令の仕組みとは異なる日本法のバックグラウンドを外国の方に説明する機会が多く、グローバル対応ができる能力も身に付きますから、弁護士として活躍できる幅を広げていけるのではないでしょうか。
人事・労務に限らず、全体として若手メンバーには今後はクライアントやPwC Japanグループ内のさまざまなチームとの会議などに参加して、どんどん新しい視野を広げていってほしいと思います。企業経営やビジネスの理解をより一層深めたい方、クライアントやPwCグローバルネットワーク内のコラボレーションを経験してみたいという意欲にあふれる弁護士の方々の参加をお待ちしています。