【主要プラクティスについて語る:メンバー対談】テクノロジー/情報法制

生成AI、ブロックチェーン、Web3などを用いた
最先端ビジネスに挑戦するクライアントを、
法的な観点から支援

今、企業経営において競争力を向上させ、優位性を獲得するには、DXと多様なデータの利活用が不可欠です。そうした流れと表裏一体であるデータ保護、各国法規制の最新動向などの情報を集約しつつ、特に生成AI、ブロックチェーン、Web3、メタバース、DAO(分散型自律組織)といった変化の著しいテクノロジー分野におけるクライアント企業のビジネス創出を支援するのが、PwC弁護士法人のテクノロジー/情報法制プラクティスです。同プラクティスのメンバーに、取り組み状況や個々の仕事のやりがいなどを聞きました。

メンバー

PwC弁護士法人
パートナー/山田 裕貴弁護士(61期)※写真右から2人目
ディレクター/日比 慎弁護士(58期)※写真左から2人目
矢野 貴之弁護士(70期)※写真左
加藤 勇太弁護士(73期)※写真右

※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時(2024年7月)のものです。

多様な法律を複合して問題解決にあたる

――まず、テクノロジー/情報法制分野に関する、各取り組み状況を教えてください。

山田:私はテクノロジー/情報法制プラクティスで、データ保護法制などに関するアドバイスを提供しています。例えば、日本企業がグローバルに事業展開する際のデータ保護関連の法的サポート、海外企業が日本の個人情報保護法やデータ保護関係の法律を遵守するために必要となる対応が挙げられます。データ保護に関連する社内規程改訂などのサポートも行っているほか、不正競争防止法などもかかわってくるので、その対応にもあたっています。

日比:私は個人情報以外のビックデータが絡む、金融機関などの金融事業者におけるフィンテック関連の案件や、官公庁からの委託調査、PwCコンサルティング合同会社の「Blockchain Laboratory」などとの連携を主に担当しています。その1つ目は、金融規制の検討・対応です。ブロックチェーン技術を活用したデジタルアセット(各種トークンなど)や、取引で用いられる決済手段(メタバース内通貨など)をビジネスに取り入れるにあたり、銀行法、金融商品取引法、資金決済法などの法規制への対応が必要となる場合があります。PwC弁護士法人では、金融機関での職務経験を有し、各種法規制に精通した弁護士が実践的なアドバイスを提供しているほか、許認可取得に際しての行政対応などをサポートしています。2つ目は、事業スキームの構築や、利用規約の策定です。これらによって、各種の金融規制、トークンの保有・移転に関する権利関係、NFTやメタバースに関する知的財産法の内容を踏まえ、クライアントに対して適切な事業スキームの構築や、利用規約の策定などを支援しています。

――PwC弁護士法人のテクノロジー/情報法制プラクティスにおける強みを教えてください。

山田:PwCには、世界151カ国に及ぶグローバルネットワークがあり、Legalチームは100カ国以上に存在しています。各国のプロフェッショナルと連携しながら、多くの国・地域をカバーできることが私たちの最大の強みです。例えば、EUのGDPRとアジア各国のデータ保護の法規制対応がセットになるようなケースを全体として扱いますが、その際には関係各国のメンバーとチームアップし、当該国の最新の法規制の理解を深めたり、どのように対応するかなどの議論を行ったりしながら案件を進めていきます。

日比:フィンテック関連では、ビジネス面の支援をPwCコンサルティング合同会社が、法規制面についてはPwC弁護士法人が担当します。さらには税務の観点も重要となるためPwC税理士法人が加わり、PwC Japan有限責任監査法人はガバナンスなどを受け持つ。そうした複層的な連携によって、クライアントにおける最適解を検討・提示していることも、大きなアドバンテージになっていると思います。

――近時、どのような相談が増加しているのでしょうか。

日比:ステーブルコイン、NFT、リアルワールドアセット(RWA)といった各種のトークンを活用したビジネスに関する相談が増えています。これらに関しては、金融規制対応/金融取引、税務などのプラクティスメンバーや「Blockchain Laboratory」、PwC Japanグループの各法人と連携しつつ、クライアントにワンストップでサービスを提供しています。また、近年はDAO(分散型自律組織)に注目が集まっていることから、その組成に関する相談を受けることが多いですし、生成AIに関する問い合わせも増えています。クライアントは日本企業、海外企業、伝統的な金融機関をはじめとする大手企業もあれば、スタートアップ企業もあるといった具合で、業種も規模も多様です。

情報をいち早くキャッチアップしビジネスに伴走する

――具体的な取り組み例を教えてください。

加藤:日本のクライアントや海外の企業がEUや日本を含むアジアで事業を展開する際のデータ保護法制等の対応に携わりました。EUにおいては、EU法だけでなく、各国の個別の法令に関して、PwCグローバルネットワークの各国のLegalチームと協働しながらサポートしました。テクノロジー/情報法制プラクティスの案件は、Legalチーム以外のメンバーとの協働機会も非常に多く、ある案件にはテクノロジーの専門家チームも参加し、仕組みの構築を技術面からサポートしました。そうした場でITを専門とするメンバーと議論しつつ、かなり具体的な点までアドバイスが行えたことは得難い経験となりました。弁護士がそこまでビジネスに踏み込める機会があるのは、PwC弁護士法人ならではだと思います。

山田:加藤弁護士は、弁護士になる前は外資系IT企業にも在籍していましたしね。

加藤:そうですね。このプラクティスでは、過去の経験が生かせていると思います。先ほど例に挙げた案件では、関連する事業に必要な法令の調査や法令遵守の観点だけでなく、事業の経験を踏まえて一歩踏み込んだアドバイスをすることもありました。法律を理解していることは当然ですが、ウェブサイトやクラウドの仕組み、IT関連の専門用語からジャーゴン(業界の特殊な言い回し)まで理解していることが私自身の強みになっていると思います。

矢野:私は加藤弁護士の例とは逆に、日本に拠点を持つ海外の企業が個人情報を含む情報を使用してグローバルにビジネスを展開したいという要望を受け、日本の個人情報保護法制についてのアドバイスを提供したことがあります。このケースは特殊な業界に関する情報が関連していたので、個人情報保護法のみならず、日本政府が定めるガイドラインも確認・整理しながらアドバイスを行う必要がありました。また、日本の個人情報保護法制を理解していただくために、GDPRの規制との異同を意識して説明する必要があり、そのような比較検討を行ったことも大変勉強になりました。

日比:矢野弁護士は、生成AIの絡む法分野にも取り組んでいますね。

矢野:生成AI関連の法律問題は、個人情報保護法、著作権法、不正競争防止法など、さまざまな分野にまたがります。例えば生成AIを機械学習させる場合をとってみても、他人の著作物を学習させていいのか、学習データに個人情報が含まれるときはどのような点に留意する必要があるのかなど、さまざまな論点があります。テクノロジー/情報法制プラクティス全体に言えることかもしれませんが、「その行為についてはどういった法律の論点があり得るか」といったことを多角的に考えていかなければなりません。1つの問題に対して、さまざまな角度から論点を探っていく必要があるので、広い視野を持てるようになると思います。

――ご自身の役に立った、テクノロジー/情報法制プラクティスでの経験を教えてください。

加藤:テクノロジー/情報法制プラクティスの案件とは別に、「労働法制の調査をしてほしい」「日本にある子会社が、日本の労働法制に適切に遵守しているか調べてほしい」といった、労働法制に関する調査依頼を受けたことがあります。採用時に求職者のバックグラウンドチェックをする際に留意すべき点や、従業員の個人情報の取り扱いなど、個人情報・データ保護法制へのコンプライアンスも踏まえたうえでクライアントにアドバイスしました。どのような分野の案件でも、“情報の取り扱いを適切に行う”という視点が重要であることを実感しましたし、当プラクティスでこのスキルを得たおかげで、クライアントに付加価値を提供できたと思っています。

――これからどのような成果を上げていきたいか教えてください。

加藤:当プラクティスで扱うテクノロジー/情報法制の分野は、ITやAIなどの動向に関心を持ち、目まぐるしく変化するビジネス環境をキャッチアップしていく意欲があれば、若手であっても主体的に活躍できると思います。私はフランス系の法律事務所で働いた経験があるため、フランスやスイスなどの判例やEU圏の法令に関する情報の収集を積極的に行い、そこから得た情報をPwC弁護士法人やPwC Japanグループ各法人のメンバーに継続的にアウトプットすることで組織に貢献していきたいと思っています。そのように、“欧州の法制とテクノロジーの融合”をもって、自分自身の強みも確立していきたいです。

矢野:私は以前、PwCコンサルティングが主催した生成AI関連の研究会で、生成AIと著作権法に関するセミナーの講師を務めました。また、PwC Japanグループのメンバーが担当した新聞への連載寄稿で、生成AIの法的問題に関するコラムを担当しました。その後、政府がガイドラインを発表したり、法律の解釈が進んだりと、生成AIに関連する法的な議論は速いスピードで進んでいます。今後もそのような動きを漏れなくキャッチアップしながら、ニュースレターなどで情報発信していきたいです。生成AIについては、PwCの注力領域でもあるので、関連するビジネスの動向も即座に確認できる環境にあります。PwC Japanグループのネットワークもうまく活用しつつ、今後も積極的に取り組んでいきます。

クリエイティブに新たな分野を切り拓く

――テクノロジー/情報法制プラクティスが、これから強化していく取り組みを教えてください。

山田:現在行っていることの延長線上にある業務と、生成AIが絡む法分野はホットなトピックであり続けると思います。当プラクティスで扱う法分野はいずれも変化のスピードが著しく 速いため、常に情報をアップデートし続ける必要があります。なおかつデータに関しては国境がないので、海外と日本をシームレスにつなぎ、クライアントが世界を舞台にビジネスを展開していけるよう、メンバー一人ひとりが時代の流れをしっかりつかみ 、新しい情報をキャッチアップしてクライアントに還元していきたいと考えています。

日比:私も基本的には、フィンテックなどに引き続き取り組んでいく予定です。テクノロジー/情報法制プラクティスが扱う法分野は、時期によって社会の注目度が変わるという特徴もあります。例えば少し前なら、世界の投資ファンドが資金を投じたのは暗号資産やメタバースでした。それが今は、生成AIに移っています。社会の変化とともに注目される分野は変化していきますが、必ずしも一般の注目を受けていない時期にも技術革新や新たなビジネスモデルの検討は進められています。クライアントが推進する事業をしっかりと継続的にサポートしていけるよう、法規制面や新たなビジネスモデルの創出に関するアドバイスを常に行っていくことが重要であると考えています。

――どんな弁護士に参加してほしいですか

山田:テクノロジー/情報法制プラクティスは、コーポレートやM&Aなどの伝統的な法分野と異なり、プラクティスが固まりきっていないことが特徴です。生成AIのような近年ビジネスに使われ始めたテクノロジーもあり、これに関連する法分野を扱う弁護士はまだ多くありません。生成AIに関連する、著作権や個人情報保護法制などを得意とする弁護士はいても、前提となるビジネスを理解し、それらを組み合わせた状態でアウトプットできる弁護士は多くない――ということです。当プラクティスに参加する弁護士ならば、当該ビジネスにいち早く着手できる可能性が大いにあるわけです。

当プラクティスの弁護士はPwC Japanグループの各法人との協働により、ビジネスの早期段階からクライアントに関与する機会に恵まれています。裏を返せば、既に顕在化した法的課題を提示され、それに答えるといった仕事のみではありません。ですから、法的な知識を背景として、新しいビジネスモデルについて、「どのような法規制の適用があり得るのか」「法規制や税務などを踏まえて、ビジネスモデルをどう調整すればベターな方向に進めるのか」と、多角的に物事を考えていく力が求められます。

私たちは、そのような新しい法分野に挑戦するための時間が取れるよう、意識的に業務時間の割り振りを配慮し、最適な職場環境を用意しています。自ら新たな分野を切り拓き、クリエイティブな弁護士活動に挑戦したいという方の参加をお待ちしています。