DXの地域格差は乗り越えられる

2020-08-17

PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。

ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。

※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進は本社が先行していて、地方の支店や支社では追いついていない……。そんな課題をお持ちの企業は少なくないのではないでしょうか。東京以外に名古屋、大阪、福岡に拠点を持つPwCあらたでは、各地区事務所でどのようにDXを推進しているのか。名古屋事務所と大阪事務所で働く職員2名が、その取り組みを紹介します。

本社以外でこそDXを推進しやすい?

DX推進は重要ということは日々のニュースや本社からの発信により理解していても、情報に格差があり、思うようには進まない……。そんな声を、本社以外の地域で勤務する方から耳にします。しかしながら、業務効率を高めたい、顧客に価値ある製品やサービスを提供したいという思いは、本社とその他の地域で変わりはないはずです。支店や支社においては全社的な情報の共有が本社より遅れる傾向があるため、より早く情報をキャッチしたり、分析を行ったりする必要性は、本社以外の地域のほうがより強く感じているのではないでしょうか。

果たして本社と支店や支社の間には情報の格差が存在し、それがDXを妨げてしまっているのでしょうか。中にはそうした事例もあるかと思いますが、名古屋事務所と大阪事務所で働く私たちは、これを乗り越えられる課題だと考えています。実はDX推進のための材料は揃っています。全員が同じプラットフォームやデータベースを共有し、オンライン会議システムにより、いつでもどこでも誰とでもつながることができる時代です。また、支店や支社など、一定の機能を有しつつ本社と比較してコンパクトな組織である場合、小回りが利き、一人ひとりの意思をDX推進に組み込むこともしやすいと言えます。さらに、その結果を本社にフィードバックすることで、支店や支社からDXをより推進できるチャンスがあるとも言えます。

名古屋事務所 の様子

名古屋事務所の様子

名古屋事務所 の様子
大阪事務所 の様子

大阪事務所の様子

大阪事務所 の様子

地区事務所におけるデジタル化の取り組み

もちろん、慣れ切った業務プロセスやサービス提供フローを変えるのは簡単なことではありません。本社より組織の規模が小さいとはいえ、デジタル化を推進するにあたっては本社の意思を汲み取った上で、多くの働きかけをする必要があるでしょう。

そこで大事なのが「トップからの明確なビジョンの共有」と「共感するメンバー」です。必要なものはこれだけと言っても過言ではありません。DXが進む本社においても、「共感するメンバー」は初めは1人だけだったかもしれません。したがって、本社以外の地域においても共感するメンバーが1人いれば、本社と同様の条件でスタートすることになり、あとは「トップからの明確なビジョン」が後押ししてくれます。

PwCあらたにおいては、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファームを目指す」というトップからの明確なビジョンのもと、共感するメンバーが名古屋、大阪、福岡においてもデジタル化の推進活動を行っています。以下に具体的な取り組みを紹介します。

1.デジタルアンバサダーの設置

東京事務所の各部門と同様にデジタルツールを使いこなし、デジタルを当たり前に受け入れる文化を醸成するべく、各事務所にDX推進の旗振り役として「デジタルチャンピオン」、「デジタルアンバサダー」を数名配置しています。現場のプロフェッショナルおよび職員により近い距離で、デジタルに関する情報発信や、デジタルに対する意識調査アンケートなどの活動を行っています。「トップからの明確なビジョン」に沿ってDX推進への意識の向上を図ることで、名古屋、大阪、福岡の各地区事務所にも、DX推進に「共感するメンバー」がパートナー、マネージャー、スタッフといったすべての職階から登場しており、現場レベルでの積極的なDX推進の原動力となっています。

2.事務所単位でのワークショップの実施

デジタルチャンピオン、デジタルアンバサダーが中心となって、小規模のワークショップを機動的に開催しています。ワークショップにおいては、実務で頻繁に使用するデジタルツールの機能を操作しながら学んだり、事務所内のデジタルツールの実例を紹介したりと、各事務所の実務現場により即した内容でスキルアップを図っています。また前述の通り、デジタルツールの習熟度に関するアンケートを事務所単位で実施し、その結果に応じて事務所のスキルレベルの底上げを図る活動を策定するようにしています。

地区発でさらなるデジタル化を目指す

私たちは、名古屋、大阪、福岡事務所からDX推進をリードできるという実感を抱いています。人員および執務スペースの規模が東京事務所と比較して小規模であることから、各監査チームでのデジタルツールの導入事例といったナレッジを共有しやすく、それをすぐに実務に落とし込むことができるからです。実際に、デジタルスキルが高いのはどの部門の誰か、デジタルツールの導入が進んでいるチームはどこかといった情報は事務所内で広く知られており、高いスキルを持つ個人やツールを多く使用しているチームに、直接相談を行うことができています。

こうした体制により、地区事務所でのDX推進は着実に進んでいます。機動力を活かして好事例の共有を進めることにより、導入ツールのさらなる品質向上と標準化、ひいては業務改革を推進できると確信しています。東京事務所との連携を強めつつ、法人が開発する最新のデジタルツールの導入も促進していきます。

地方発でさらなる デジタル化を目指す

執筆者

神戸 寛史

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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