ISO 24089_Software Update Engineering 発行編

2023-03-09

はじめに

ISO 24089(Road vehicles-Software update engineering)のIS(国際規格)版が2023年2月8日に発行されました。「ISO/DIS 24089 Software Update Engineering 詳細編」で紹介したように、ISO 24089はUNECE WP29(自動車基準調和世界フォーラム)のUNR156(SUMS:Software Update and Software Update Management System)に関連する国際標準規格として位置づけられています。UNR156については、2022年7月よりOTA付き新型車に対して日本国内および欧州を中心とする各国にて適用が開始されており、OEMおよびサプライヤー各社は、これまでUNR156への対応を推し進めてきました。しかし、ISO24089は法規適用時には未発行であったため、これからISOへの対応を始められる企業が多いのではないかと考えられます。

また、「CASE時代におけるソフトウェア更新のあり方―静的管理から動的管理への転換―」で紹介したように、今後市場でのソフトウェア更新頻度は増加することが見込まれています。そのため、各企業は法規としてUNR156へ対応しつつ、ソフトウェア更新活動の運用に向け、ISO 24089も考慮したソフトウェア更新の仕組み作りを進める必要があります。本稿では2022年1月に発行されたDIS(国際規格原案)版からの変更点を整理し、UNR156とISO 24089への向き合い方について解説します。

なお、ISO24089の原文は英語表記のため、本稿で使用する日本語訳は全てPwCによるものであることをご承知おき下さい。

DIS版とIS版の比較

ISO 24089のIS版において、Clause(以降CL.)の名称に一部変更がありましたが、CL.構成はDIS版から変更はありませんでした。一方で図表1に示すようなCL.4~CL.9の関係性が追記されています。こちらは「ISO/DIS 24089 Software Update Engineering 概要編」に記載の関係性から変更はありませんでした。一方で各CL.の目的については一部変更があり、CL.5ではソフトウェアの完全性検証が追加され、CL.6ではキャンペーン中の障害管理の目的が外されていました。

図表1 ISO 24089 CL.4~CL.9の関係性*1*2*3

*1 主要な依存関係のみの表現としており、詳細な依存関係は上記の限りではない
*2 機能要件、およびプロセス要件に対するガバナンス要件
*3 車載機能用のソフトウェアの開発は対象としていない

各CL.のうち、内容の変更があった項目を図表2に示します。プロジェクトレベルでのソフトウェアの完全性検証の目的が追加されました。機能要件では、インフラストラクチャー(CL.6)/車両および車両システム(CL.7)レベルで完全性検証についての要件が追記され、CL.7ではさらに互換性検証の要件も追記されました。

図表2 IS版のDIS版からの変更点

UNR 156に対するISO 24089のギャップ

UNR156に対するギャップの一覧を図表3に示します。例えば、組織レベルで実施するソフトウェア更新エンジニアリングに対する「プロセス監査」、車載ソフトウェア更新前の「ユーザー承諾」、そして、キャンペーン期間の終了をユーザーに通知する「キャンペーン終了通知」などが、UNR156に対するISO 24089の主なギャップとして挙げられます。先述したIS版での変更点であるソフトウェア更新パッケージの配信方法の特定もUNR156とのギャップに含まれています。

図表3 UNR156に対するISO 24089のギャップ

*4 DIS版からの変更点

OEM・サプライヤーに求められる今後の主な対応事項

図表4に示すように、継続車への対応やSU認証更新に向けた対応など、今後発生しうる外部要因も考慮した活動計画の立案も必要であると考えられます。特にサプライヤー各社は各OEMの要求を社内で取りまとめ、包含するような対応ができることが望ましいです。また、Tier2サプライヤーを含めた対応が求められると考えられます。

図表4 OEM・サプライヤーに求められる今後の主な対応事項

*5 国内の場合、OTA機能無し車両への対応含む

まとめ

UNR156とISO 24089それぞれの対応状況により、各社の取り組み課題は異なりますが、「CASE時代に求められる車載ソフトウェア更新」を実現するためには、それぞれのギャップを理解し、必要に応じて活動計画を検討していく必要があると言えます。また、今後発生しうる外部要因を考慮したプロセスや社内体制の整備にも計画的に取り組む必要があると考えられます。

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執筆者

渡邉 伸一郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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糸田 周平

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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山本 将之

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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