WP29 CSMSに基づくセキュアな製品開発の実践― 脆弱性テスト/ペネトレーションテストの実践とポイント

WP29 CSMS(※1)に対応する製品開発実践のポイントを紹介する連載「WP29 CSMSに基づくセキュアな製品開発実践」。第4回は開発の最後に実施する「脆弱性テスト」と「ペネトレーションテスト」に焦点を当てます。第3回までは「どのくらいの脅威があるのか」「それを防ぐにはどうすればよいか」を体系立てて考えるという防御側の視点をご紹介しました。一方、脆弱性テストやペネトレーションテストは「相手の隙を突いて攻撃する」という攻撃者側の視点に立って考える必要があります。攻撃者有利と言われているサイバーセキュリティの世界において、「攻撃者視点で製品の脆弱性をテストする」ことは、堅牢な製品をリリースする上で重要なプロセスになります。

※1 CSMS(Cyber Security Management System):サイバーセキュリティに関連するリスクを処理し、自動車をサイバー攻撃から保護するための組織的なプロセス、責任及び管理を明確化したリスクベースアプローチの管理システム。

4回にわたりセキュアな製品開発の実践ポイントを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。WP29 サイバーセキュリティ法規は2022年7月から順次法規制対応が義務付けられています。PwCが2021年6月にOEM40名とサプライヤー61名を対象に調査したところ、OEMでは80%がCSMS対応に着手していると回答しましたが、サプライヤーで着手しているのは49%にとどまっています。

対応が遅れている背景には、2022年7月から法規制が適用されるのは、無線によるアップデート機能を持った新車だけであることも一因として挙げられます。しかし、将来的なことを考えれば、準備は待ったなしの状態です。特にプロセス認証のために社内体制の整備を推進してきたOEMは、より実践的な現場での作業が必要になることは間違いありません。そうした意味においても、開発プロセスの最初と最後を担う「分析と検証」は重要であると言えます。

多くの企業がどこまでやればよいのかといった「相場観」を試行錯誤しながら見極めている状態です。今後の鍵はどのように情報を収集するかでしょう。監査が始まっていない現状では、こうした手探りの状況がしばらく続くと推測されます。

WP29対応への素朴な質問

【質問】

ペネトレーションテストを行うタイミングは、量産が開始される直前の開発終了間際になると思います。実際問題として、この段階でテストすることは困難であると考えますが、ペネトレーションテストは必須でしょうか。実施基準などはあるのでしょうか。

【回答】

現場で働く多くの方が、同じような疑問を抱えていると拝察します。量産直前の段階でなければ、ペネトレーションテストを実施するためのコンポーネントは揃っていません。また、量産直前の段階において、ハッカーによる攻撃を想定した網羅的な検証を実施する時間がないことは、現在の開発プロセスでは大きな課題として捉える必要があります。

「ペネトレーションテストは必須なのか」という問いに対する端的な回答は、「必須ではありません。ただし、“やらない根拠”と“やる根拠”をエビデンスとして正確に残すことが重要です」となります。

製品の妥当性やセキュリティレベルの検証は脆弱性検査でも可能であり、必ずしもペネトレーションテストをしなければならないわけではありません。ただし、「時間がないのでペネトレーションテストをしませんでした」という理由は、検証の根拠になりません。「なぜペネトレーションテストを実施するのか/しないのか」の根拠は、明確にする必要があります。

WP29 CSMS対応ツール活用メリットを2分で解説

自動車に関する国際法規であるWP29 UNR155に適合するため、車両OEMとサプライヤーは、適切なサイバーセキュリティ要件を導出し、それを満たす製品を開発することが求められています。PwCが提供する「WP29 Cyber Security Management System(CSMS)支援プラットフォーム」は、セキュアな製品開発において最も重要である脅威分析を効率的に実施するためのウェブツールであり、脅威や攻撃に関する最新の情報を提供します。

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執筆者

山田 素久

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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