
「デジタルエコシステムの最前線」コラム 第13回「地域経済エコシステム【後編】」
地域経済エコシステムとは、行政や企業などのさまざまなプレイヤーがデジタルやデータを活用し、地域の魅力を発信することで地域経済・地域コミュニティを活性化するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
2020-12-07
前回解説したように、スマートホーム・エコシステムとは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などのデジタルを駆使し、個々のライフスタイルに応じた多様なサービスを提供することで、より便利・安全・快適な暮らしを実現するエコシステムです。スマートホーム・エコシステムにおけるデジタルの影響としては、住宅内での提供サービスの拡大と、ヒト・モノに関するデータの利活用によるサービスの高度化が挙げられます。
こうしたデジタルの影響を踏まえると、スマートホーム・エコシステムの戦略は、事業領域・データの利活用の広さという切り口から大きく4つに分けられます。
オーガナイザーはこのような状況を踏まえ、自社・既存の業界に捉われずにスマートホームのエコシステム、ビジネスモデルをデザインし、顧客の需要を喚起すると共にエコシステムとしての価値を提供できるパートナーを集める必要があります。この際には、シームレスで高度なサービスを提供するために、デジタルコマースやデジタルヘルスなど、他のデジタルエコシステムとの連携が必要とされます。その一方で、サービスの拡大・高度化に伴って取得される住宅内のデータが増加するため、他のエコシステムとの接続に必要となる豊富なAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)と併せて堅牢なセキュリティやプライバシーへの配慮も求められます。
このため、リアル/バーチャルの両面からデータを分析する環境を整備し、顧客ニーズを先読みすることで、顧客がスマートホーム化を進める道筋をデザインすることがKSFとなると考えられます。例えば、音楽再生をはじめとする基本機能の使用に留まっているスマートスピーカーで、画面を見ずとも購入可能な消耗品を購入することに始まり、住居内で蓄積されたデータを元にリコメンドの精度を上げたり、自宅で視聴していた番組で紹介されていたレストランの近くを通るとスマートフォンにレストランの情報が通知されるなど、UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させることで顧客が徐々にスマートホームの利便性を実感し、スマートホームの活用範囲を広げるための道筋をデザインすることが該当します。加えて、各プレイヤーの参加や、他のエコシステムの参画を促すためのビジネスモデルをデザインし、魅力的なプレイヤーを集めることも必要です。
サービスプロバイダー/カスタマーデータホルダー
住宅内で使われるスマート家電のメーカーや住宅メーカー、セキュリティサービスを提供する企業などが主なサービスプロバイダー/カスタマーデータホルダーとなりえます。スマートホームにおいて両者に求められることは、既存の製品の機能を果たすことはもちろん、他のデバイスと連携することで、これまで収集されなかったデータを活用し、利便性・快適性・安全性向上につながるサービスを提供することです。近年はデバイスのハード面での性能差がメーカー間で小さくなっているため、サービス面で新たな付加価値を提供することは特に重要です。
例えば家電や住宅内の設備に備え付けられたセンサーから居住者の生活履歴データを取得して、複数のデバイスを連携させたサービスを提供するなど、単一プロバイダーでは行えなかった新たな付加価値の提供が求められます。このようなサービスの提供を受ける際には多くのデバイスが必要であり、初期費用が増加することから、顧客が導入に二の足を踏む可能性があります。この際には、複数のサービスプロバイダーと連携してサブスクリプションサービスを取り入れるなどし、導入のハードルを下げることが考えられます。これは、サービスプロバイダー側にとって新たなデータ収集が可能になると共にブランドのロイヤリティの構築にも寄与し、買い替え需要などによる予測可能な収益機会となりえます。
このため、KSFとしては、住宅内の直接的な行動データや、ハードに関わるデータなど、過去に蓄積が困難だったデータを継続的に蓄積し、オーガナイザーと共有することでオーガナイザーがサービスを拡大していくサイクルに確実に取り込まれることと考えられます。そのためには住宅にデバイスをビルトインできる設計にすることも必要になるかもしれません。
デジタルプロバイダー
デジタルプロバイダーとしてはAIやIoTなどのように、住宅内のヒトやモノのデータを収集・分析するテクノロジーを有する企業が該当します。
デジタルプロバイダーに求められることは、オーガナイザーが設計したサービスの全体像を踏まえ、サービスプロバイダーと連携して収集したデータに基づいて家電や家具を居住者に替わって自動的に操作したり、居住者に操作を提案するなどニーズを先読みした利便性の向上をはかることや、バイタルデータに基づいて運動や通院を促すなどの付加価値を提供したりすることが挙げられます。このように、居住者の行動データに基づいて生活パターンを読み解き、パーソナライズしたサービスを提供していくことが必要となります。
このため、住宅内での行動データから行動パターンを抽出し、天気や気温、曜日などの住宅外のデータもかけ合わせて居住者ごとの属性情報、体調などのコンディションや趣味嗜好を明らかにし、パーソナライズした適切なリコメンドを導出できることがKSFとなると考えられます。
スマートホーム・エコシステムは黎明期にありますが、スマートホームそのものの認知度は高く、顧客満足度も高いと言われています。このため、市場が立ち上がったフェーズでユーザーをいかに増やすか、そのためにパートナーとどのような形でアライアンスを行うかは非常に重要な論点です。
ユーザーを増やしていくには、サービスの拡充が必要ですし、そのためにはユーザーのデータは欠かせません。スマートホーム・エコシステムの特徴として他のエコシステムと親和性が高い点が挙げられます。この特徴を活かし、住宅内のリアルデータを多数有する企業だけでなく関連性が高いエコシステムのオーガナイザーとアライアンスを構築することも重要となります。また、他のエコシステムと比べると、消費者の価値が多様化することによって大きな影響を受けるエコシステムであり、GAFAなどのメガテックプレイヤーの参入度合いも強いため、自社の現状保有するアセット・ポジショニングをしっかりと踏まえた上でどの方向性に進んでいくべきか検討することが重要です。
地域経済エコシステムとは、行政や企業などのさまざまなプレイヤーがデジタルやデータを活用し、地域の魅力を発信することで地域経済・地域コミュニティを活性化するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
地域経済エコシステムとは、行政や企業などのさまざまなプレイヤーがデジタルやデータを活用し、地域の魅力を発信することで地域経済・地域コミュニティを活性化するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
スマートホーム・エコシステムとは、IoTなどのデジタルを駆使し、個々のライフスタイルに応じたサービスを提供することで、より便利・安全・快適な暮らしを実現するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。
スマートホーム・エコシステムとは、IoTなどのデジタルを駆使し、個々のライフスタイルに応じたサービスを提供することで、より便利・安全・快適な暮らしを実現するエコシステムです。前編・後編の2回にわたり解説します。