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2024-02-13
PwC Japanグループは「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパス(存在意義)を追求しています。PwC税理士法人もグループの一員として、重要な社会課題の解決に取り組むという観点を踏まえ、企業の税務に関わる立場からどのような社会貢献が可能か、検討を続けています。特に、移転価格税制の領域においては、税務執行分野での提言を行うべく、「税務で社会に貢献」プロジェクトの一環としてさまざまな課題に取り組んでいます1。
2022年は、当法人の数名のクライアントの方々から、国税当局が力を入れて取り組んでいるデジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマに、納税者としてのさまざまな意見を集めて国税庁担当者と意見交換を行いました。この取り組みを受け、PwC税理士法人のパートナー黒川兼、ディレクターの藤澤徹、アソシエイトの山崎梨佳が税務当局の対応や当法人の活動について議論。その後編では、税務当局の取り組みを正しく理解するための具体的なアプローチについて議論しました。
黒川 兼
PwC税理士法人パートナー
藤澤 徹
PwC税理士法人ディレクター
山崎 梨佳
PwC税理士法人アソシエイト
(左から)藤澤 徹、山崎 梨佳、黒川 兼
PwC税理士法人 山崎梨佳
黒川:
前編では、PwC税理士法人が取り組む「税務で社会に貢献」プロジェクトのこれまでの経緯や当法人の支援活動、また国税庁ウェブサイトの活用法などについてお話ししました。山崎さんから、さらに藤澤さんにお尋ねしたいことがあればお願いします。
山崎:
国税庁レポートにも、現在進行形の執行状況や将来の方向性についての記載はありますが、それ以外で、何か参考になるものはありますか。将来の見通しなど、今後の方向性を知る手がかりになるようなものはないでしょうか。後手にならないような対応も重要だと思いますので、お伺いします。
藤澤:
国税庁には、税務大学校という税務職員の研修機関があります2。研修だけではなく、租税や税務会計に関する理論的かつ実証的な研究を行っており、その成果は、「税務大学校論叢(ろんそう)」や「税大ジャーナル」に収録され、ウェブサイトでも公表されています。そこで取り上げられている項目から、当局の今後の方向性や関心事をうかがい知ることができるのではないかと思い、適宜、成果物を確認しています。
山崎:
例えば、どのようなものがあるのでしょうか。例えば移転価格について、何かありますか。
藤澤:
少し前になりますが、2021年6月には、相互協議における仲裁手続関連の論文が2本同時に発表されています3。仲裁手続は移転価格課税の二重課税の排除に関するものです。また、2022年6月には、事前確認に係る相互協議の効率的な実施に関する論文が発表されています。
山崎:
相互協議に関する国税庁の報道発表4によると、相互協議の発生件数は過去最多となり、繰越件数は、この10年間で倍増していますね。
藤澤:
年々、発生年数も繰越件数も増加傾向にありましたので、このような研究が行われたものと推察されます。税理士法人としては、今後のクライアントへのアドバイスの参考になるかと思います。
山崎:
当法人のマネージャーから「最近は、調査部所管の大法人だけではなく、税務署所管の中小法人に対する移転価格調査が増えてきている」との話を聞いたことがあります。具体的にはどのような執行なのでしょうか。国税庁レポートや報道発表で公表されているのでしょうか。
藤澤:
私たちが実際に調査に立ち会うと、特別国税調査官や国際税務専門官といった肩書の名刺を調査担当者からいただきます。たまに、所管の税務署以外の特別国税調査官の名刺だったりします。これは広域運用といって、東京国税局であれば、国際課税の大きな取引を行っている税務署所管法人については、麻布税務署と神田税務署の特別国税調査官が調査を担当しているとのことです。
山崎:
そのようなことは、国税庁サイトで公表されているのでしょうか。
藤澤:
いいえ。これは、東京国税局に対する行政文書、つまり、内部文書の情報開示請求5によって入手した資料で分かったことです。請求をすれば全ての情報が開示されるわけではなく、調査に支障をきたすような情報は黒塗りされて開示されませんが、これも有用な情報の入手手段の1つです。
山崎:
誰でも開示請求できるのですか。東京国税局に、そのような情報があるというのは、なぜ分かったのでしょうか。
藤澤:
誰でも手数料を支払えば情報開示請求を行うことはできます。所定の書式に開示してほしい文書名を記載する必要があり、もちろん、どのような文書があるか、その文書名のタイトルは分かりません。また、どの部署が作成した文書かによって請求の窓口が異なります。国税庁が作成したものであれば国税庁の情報公開担当部署6に、東京国税局が作成した文書なら東京国税局の情報公開担当部署7に請求する必要があります。
山崎:
手間がかかりそうですね。
藤澤:
開示請求は誰でもできますので、欲しいと思う情報は税務の専門誌、市販書籍、あるいは、税務関係のサイトにすでに掲載されている場合があります。まずはそこを探してみること。そして、そういったところから把握できない場合には、仮に東京国税局作成の文書が該当すると思われれば、東京国税局の情報公開担当部署に電話や文書で問い合わせることとなります。
山崎:
問い合わせる際の文書には、正式な様式があるのですか。
藤澤:
いいえ、まずは、メモ書きです。例えば、「移転価格の調査事務に関する手続きがわかる文書」「移転価格について、職員に研修行った際の資料」といった書きぶりです。もちろん、電話だけでも調べてくれます。数日経過後、電話で「こういうタイトルの行政文書が、請求内容に該当すると思われます」との連絡が入り、正式な文書名を教えてもらえますので、「行政文書開示請求書」の様式8に正式な文書名など必要事項を記入して郵送します。基本的に1カ月後に、開示についての通知書(行政文書開示決定通知書)が郵送されてきます。全面開示ということもありますし、一部は黒塗りで不開示という場合もあります。
山崎:
先ほど、お話いただいた、特別国税調査官の広域運営に関する情報も、そのようにして入手したのですね。
藤澤:
はい、そうです。そういった運営を当局がしているということを、納税者であるクライアントにご説明して、当局の執行を正しく理解してもらうことによって、適切な対応が期待できるかと思いますし、適切な提言にもつながると思います。
PwC税理士法人 ディレクター 藤澤 徹
黒川:
私が移転価格に関与し始めた頃は、移転価格調査を専門とする調査部国際情報課のみが移転価格調査をしていました。今は、国税局調査部の一般部門も税務署も移転価格調査を行っています。このような執行は、国税庁全体のDX化の中でも進んでいくのでしょう。今後は、DX化が、移転価格調査や事前確認審査でどのように進んでいくのかという観点から、国税庁のサイト情報を読み解いたり、当局内の情報について開示請求したりすることによって、当局の執行を正しく把握し、納税者であるクライアントに適切な対応をアドバイスしていくことが、税理士法人には期待されるものと考えます。
PwC税理士法人 パートナー 黒川 兼
1 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202210.html
2 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/intoroduction/index.htm
3 令和4年6月30日「事前確認制度を中心とした相互協議の効率的な実施について」
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/106/04/index.htm
令和3年6月30日「租税条約における仲裁手続きについてー制度の導入拡大及び実施の観点からの検討―」
「我が国の相互協議におけるADRの活用―仲裁手続以外の補完的紛争解決手段の検討―」
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/backnumber/ronso/29.htm
4 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sogo_kyogi/sogo_kyogi.pdf
5 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)
6 https://www.nta.go.jp/about/disclosure/madoguchi/cho.htm
7 https://www.nta.go.jp/about/disclosure/madoguchi/kyoku.htm
8 https://www.nta.go.jp/about/disclosure/tetsuzuki/5187pdf/01.pdf
国税庁、東京国税局での30年間の勤務経験を持つ国際課税の専門家。2014年2月にPwC税理士法人の東京事務所に入社。東京国税局では、15年以上にわたって大企業、多国籍企業の移転価格調査の企画・実施、事前確認審査を担当。国際情報第一課の上席国際専門官として、移転価格調査事案のすべての管理および他国税局の移転価格調査事案のサポートを担当。国税庁での3年間の相互協議経験も有し(米国、オーストラリア、インド、スイスなど)、国税庁調査課国際係長3年間の在任中には、OECD租税委員会第6作業部会のメンバーとして、PE帰属所得ルールであるOECD承認アプローチ(AOA)のドラフトづくりにも関与。OECD会議、タイ駐在、相互協議、タイ・インドネシア・中国および発展途上国への知的支援を通じ、各国の国際課税担当者とは真摯に深い信頼関係を構築。
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
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