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2022-04-12
鉢植えの植物とコーヒーメーカーが置かれ、窓から通りを見下ろすことのできる、どこにでもある会議室。ここで、学習と能力開発の未来が始まろうとしている。1人のマネージャーが入室し、同僚と一緒にテーブルに着席。彼女はインクルーシブリーダーシップのスキルを高めるため、人事部門が主催する演習型研修に参加し、最近の採用面接の傾向や今後の方針についての説明を聞くところだ。彼女の前には履歴書とメモが山と積まれており、これから候補者のうち誰を採用するかも話し合う。研修が終わると、彼女は退出するため席を立ち、メタバースヘッドセットを取り外した――。
これはPwCが実際に行った、メタバーステクノロジーを使用した調査の一コマです。このマネージャーはPwCの従業員で、米国内の12の事務所で新たに昇進した、1,600人を超えるマネージャーの中から選ばれた1人です。参加していたのは、講義(対面)、eラーニング(オンライン)、メタバース空間を活用するラーニング(ここではmラーニングと呼ぶ)の3種類の研修形式の利点を評価する調査で、ソフトスキル研修におけるメタバースの有効性に関するものとしては、私たちの知る限りこれまでで最大規模の調査でした。各参加者は、インクルーシブリーダーシップをテーマにした研修を3つの形式のいずれかで受講し、コースの事前・事後、さらに30日後に評価を行いました。その結果、主に以下の結果を得ることができました。
今回は同調査の結果をもとに、ソフトスキル研修にメタバースを活用する利点を考察していきます。
従業員のデジタル学習へのニーズを支援するにあたっては、次の5つの調査結果が有用です。
受講者が研修に要する時間は、研修の手法を評価するもう一つの重要な要素です。従業員が研修を終えて職場に戻り、新しいスキルを使えるようになるのが早ければ早いほど、企業は研修への投資を早く回収することができます。
ソフトスキルの概念を学ぶためにメタバースを使用して研修を受けた受講者は、対面講義形式で研修を受けた従業員の平均4倍、eラーニング受講者の1.5倍の速さで研修を終えました。メタバースヘッドセットを使ったことのない受講者が操作に慣れるための追加時間を含めても、mラーニング研修はコースを完了する速度と知識の定着率が対面講義形式の3倍、eラーニング形式の1.15倍になる可能性があることが分かりました。
初めてmラーニングを経験する受講者がメタバースヘッドセットの動作確認と調整、ヘッドセットの安全な使用に関する操作方法を教わるのに追加でかかる10分を含めても、受講者は講義形式の3倍の速度で研修を完了できます。
ソフトスキル研修では、自信を持つことが成功のカギとなります。自分を信じ、言動にも自信を持つことで、受講者は他の人とのつながりを深めると同時に、研修にかけた時間に対する高い満足感を得ることができるからです。
例えば、従業員に否定的な内容のフィードバックをする必要があるといった難しい状況に置かれると、人は安全な環境でその事態に対処する練習ができればと思うものです。メタバースを使えばそれが可能です。メタバース形式の研修は没入型でストレスの少ない環境下での演習が可能なため、学んだスキルを実際の業務に応用する自信をつけやすくなり、対応力も向上します。実際に、メタバース形式の受講者では、研修で学んだ内容に基づいて対処する自信が、研修後に最大275%上昇しました。これは、講義形式を40%、eラーニング形式を35%上回る数字です。
受講者が大いに自信をつけた要因としては、必要な回数だけスキルを演習する機会が与えられているというメタバース研修モジュールの特性もあるでしょう。また、指導者や同僚ではなくバーチャルな人物とやりとりしていたため、正誤を判定される心配がなく、講義形式の研修で感じ得る、臆するような気持ちにならなかったことも挙げられます。
人は感情が介在すると物事をより深く結び付け、理解し、記憶します(これは私たちがメタバースに関する調査を通して、また、PwC独自のコンサルティングアプローチであるBXTの実践において、多様な視点を結集して重要なことを特定するという経験を数多く積んだ中で学んだことです)。例えば、難民の危機的状況について事実を羅列した分析報告書を読んだときと比べ、実際の難民の写真を見たときのほうが自分の感情が受ける影響は大きくなります。このことに鑑みれば、コンテンツとの深い感情的つながりを持つことがよりよい成果を生む可能性があることは容易に理解できます。
メタバースを使ったシミュレーションベースの学習を通じて、受講者は有意義な実体験をしたように感じることができるようです。mラーニング形式の受講者が感じた学習内容との感情的つながりの深さが講義形式の約4倍であったことは特筆に値するでしょう。mラーニング形式の受講者の4分の3が、ダイバーシティとインクルージョンに関するメタバースコースの受講中に目の覚めるような瞬間があり、自分が思っていたほどインクルーシブでないことに気付いたと述べています。
メタバースの環境では没入感が得られ、現実そっくりの空間でアバターとやりとりするため、ユーザーはそこでのエクスペリエンスを実体験のように感じます。また、ユーザー同士が相手からの否定的な反応を恐れることなく関わり合えることで、メタバースに対するよりよい感情が生まれたことが想像できます。
今どきの受講者はいらいらしやすい、気が散りやすい、くじけやすいといった傾向があります。受講者の多くは、研修動画を常時見てはいません。スマートフォンは視聴を中断させ、気を散らせる最大の要因です。
メタバース学習は、ユーザーの注意がそれる要因を大幅に軽減します。メタバースヘッドセット装着中は、シミュレーションと没入型体験がユーザーの視覚と注意力を占有します。そのため、学習が中断されることもなければ、受講者が並行して別の作業をすることもできません。今回の調査では、メタバース形式で研修を受講した場合、受講者の研修中の集中度がeラーニング形式の最大4倍、講義形式の1.5倍高くなることが分かりました。受講者がメタバース体験に没入すると、研修からより多くを習得でき、成果も上がる傾向があります。
かつて、メタバースはコストのかかる複雑な技術であり、多くの人数に広く展開することが困難でした。しかし現在、企業用ヘッドセットにかかるコストは最初に1,000ドル程度かかるだけで、メタバース機器は企業用の他のモバイル機器と同じように管理でき、研修にも繰り返し使用できます。あらゆる規模のメタバーススタジオが魅力的なコンテンツを開発し、ベンダー各社はメタバース以外の開発者でも費用対効果の高い方法で独自のコンテンツを制作できるソフトウェアパッケージを作成しています。他にも、学習管理システムを扱う一部の大手企業が、メタバースコンテンツを自社プラットフォームに簡単に統合できるようにする取り組みを進めています。
メタバースの効果的な活用によってもたらされる価値は明らかです。今回の調査では、メタバース形式の研修をまとまった数の受講者に提供した場合、人数が多ければ対面講義形式やeラーニング形式よりも費用対効果が高いと考えられることが分かりました。メタバースコンテンツへの初期投資は、同様の講義形式やeラーニング形式と比べて最大48%多くかかるため、メタバース形式の研修の費用対効果を高めるには十分な数の受講者を集める必要があります。メタバース研修のコストは受講者375人で講義形式と同等となり、受講者3,000人で講義形式を52%下回り、受講者1,950人でeラーニング形式と同等になりました。受講者数が多いほど、研修中に従業員が節約できる時間やファシリテーターなどにかかる費用の節減という点から、リターンは高くなると思われます。