欧米電力ビジネスの最前線

~DistribuTECH2024参加を通じて~

2016年の電力小売全面自由化から7年が経過し、日本における電力ビジネスの市場環境は大きく変化しています。変化の一つは、競争の本格化です。自由化直後は小売電気事業への新規参入が相次ぎ、一時は700社まで増加しました。しかし、小売電気事業では差別化が難しく、近年のエネルギー価格高騰や電力調達環境の複雑化を背景に、撤退する新電力事業者も出始めており、いかに他社と差別化し生き残るのかが大きな経営課題となっています。

もう一つの大きな変化は、分散型エネルギーリソース(DER)の普及拡大の加速です。ウクライナ戦争以降の電気料金の上昇は、需要家側での太陽光発電設備や定置用蓄電池の導入メリットを高めており、拡大のドライバーとなっています。加えて、電気自動車(BEV)も徐々に普及が進んでおり、DERは今後も増加していくと想定されます。

このような変化は、小売電気事業の競争環境だけでなく、電気の安定供給を担保する送配電網にも影響を与えています。既に顕在化している太陽光発電等の増加に伴う出力制御だけでなく、近年では再生エネルギーや蓄電池などの増加による配電網における系統混雑の発生が課題となっています。また、近年は長距離航続を可能とするため電気自動車の蓄電容量が大幅に増加しており、今後BEVの普及が進めば、こういった課題の影響はより大きくなることが想定されます。

本コラムでは、2024年2月26日から29日の間、米国フロリダ州のオーランドにて開催された電力系統のDER に関する米国最大の会議であるDISTRIBUTECH International(以下、DistribuTECH)への参加を通じて得られた示唆として、①EV、②次世代配電網+DER、③電力小売という3つのテーマに分けて、欧米企業の最新動向を紹介します。再生エネルギーやBEVの普及が進む欧米では、すでに上記のような課題が顕在化しており、小売事業者や送配電事業者、自動車メーカーなどがデジタルデータ等を活用した連携を模索し、新たなビジネス機会も生まれ始めています。本コラムが今後の日本国内の電力市場におけるビジネス拡大と課題解決の一助となれば幸いです。

欧米電力ビジネスの最前線~DistribuTECH2024参加を通じて~

  1. 電気自動車と電力系統との統合の最新状況
  2. 欧米におけるDERを活用した配電網混雑への対応について
  3. 欧米諸国の電力小売事業におけるCX×GXの最新動向

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