連載コラム 地政学リスクの今を読み解く

インド・モディ政権3期目の政策見通しと日本企業への示唆

  • 2024-06-27

<本稿のポイント>

  • 下院総選挙を経て、モディ政権は3期目に入り、2029年まで続くこととなった。ただし、与党インド人民党が大きく議席を減らしたことで、モディ首相の求心力が低下し、政権運営に支障が生じる可能性がある。
  • モディ政権が2期10年間で推進してきた政策の継続性は担保される。議席減の主要因が経済格差や失業問題にあるとみられる中、雇用創出に資する製造業の振興や幅広いインフラ整備の重要性が改めて認識されるが、強いリーダーシップが必要となる改革や制度改正の難易度は上がる。独自外交により国際社会における存在感は引き続き強まる。
  • 米中対立といった地政学リスクの高まりなどを背景に、日本企業の間で改めてインドブームが起きている。政策の実現可能性や投資環境の改善度合いを冷静に評価し、高い経済成長率が見込まれるインドの発展の勢いをいかに取り込むかという視点が重要となる。

1. インド下院総選挙の結果

2024年4~6月に7回に分けて投票が行われたインドの下院総選挙は6月4日に一斉開票され、現職のモディ首相率いる与党インド人民党(BJP)は与党連合として過半数を確保し、2014年に始まったモディ政権は3期目に移行しました。5年の任期を全うすれば2029年までの長期政権となります。

同選挙は当初、高支持率を誇るモディ首相に対する事実上の信任投票として、BJP圧勝との見方が有力でした。しかし実際には、小選挙区定数543のうち、BJPは240議席と単独過半数は取れず(前回2019年は303議席)、地域政党などを含む与党連合「国民民主同盟(NDA)」として過半数の293議席(同353)を確保したことで政権を維持しました(図表1)。BJPが大きく議席を減らしたことで、モディ首相の求心力が低下し、政権運営に支障が出る可能性があります。

BJPが苦戦した要因としては、高い経済成長率などは評価されたものの、経済格差や貧困問題、雇用確保などで改善が見られていないことに国民の不満が高まったことが考えられます。インドでは労働者の大部分がインフォーマルセクターと呼ばれる個人・家族経営、日雇い労働などであり、こうした層は急速な経済発展から取り残されています。加えて、野党への締めつけやイスラム教徒などマイノリティ層への冷遇が目立つモディ政権の姿勢に反発する有権者の批判票もあったと考えられます。

現状への不満の受け皿となった野党は大幅に議席を増やしました。最大野党の「国民会議派(INC)」は前回からほぼ倍増の99議席を確保し、同党主導で2023年7月に結成された野党連合「インド国家発展包括連合(INDIA)」は234議席を獲得しました。勢いを増した野党の発言力は今後さらに高まりそうです。

図表1 2024年インド下院総選挙の結果(全543議席)

与党連合が議席を減らしながらも過半数を確保したことは、モディ政権の2期10年の実績を国民が全否定されたわけではなく、経済成長の実現などは一定の評価を得たことを意味しています。3期目においても、これまでの政策の方向性は維持されるでしょう。ただし、経済成長の恩恵を格差是正や雇用創出という形でより幅広い層が実感できるものにしていくことが求められそうです。

米中対立やロシアのウクライナ侵攻、チャイナリスクといった地政学要因によるビジネスリスクの顕在化を経験し、グローバル企業は販売先や製造拠点の多角化を模索する動きを活発化させています。そのなかでインドはGDP総額で2025年に日本、2027年にドイツを抜いて、米中に次ぐ世界第3の経済大国になると予測されています(図表2)。モディ首相率いるインドが高い経済成長率を維持しながらビジネス環境の改善を進め、グローバル企業の事業展開の受け皿となれるかが注目です。

図表2 インドおよび各国のGDP総額

2. 選挙結果を受けた政策見通し

これまでモディ政権が2期10年間で進めてきた政策の継続性は担保される見通しです。同政権には経済格差や失業問題といった社会・経済問題に以前よりも目を向け、安定した雇用を生む製造業の振興や、幅広い層が裨益するインフラの整備などにさらに注力することが期待されます。ただ、従前よりも議席を減らした政権となるため、既得権益に切り込んだり、難しい利害調整を伴ったりするような、政治のリーダーシップが必要な改革は進めづらくなると見られます。外政では、東西の分断や新興・途上国の台頭が進展する中、実利重視の全方位外交で東西の両陣営と対話できる関係を維持しつつ、グローバルサウスの代表としても振る舞うなど、独自の存在感を発揮するでしょう。

2-1. 内政見通し

製造業振興政策

モディ政権が目指すインドのあり方を示すのは、2020年に発表された「自立したインド(Self Reliant India)」1で、この方向性は3期目も継続すると思われます。その核の1つは製造業強化で、雇用の創出や貿易収支の改善に加え、中国などからの輸入に依存する重要製品の国内生産強化を通じた経済安全保障の確保や、グローバルサプライチェーンにおける生産・輸出拠点としてのインドの地位向上などを目指しています。

モディ政権はGDPに占める製造業の比率引き上げを目指し、1期目当初から製造業振興政策「Make in India」を推進しています。現在その中核を担うのは「生産連動型優遇策(PLI)」です。これは携帯電話、医薬品、自動車・同部品、太陽光発電モジュール、先端化学電池など14品目を対象に補助金を付与するもので、重要品目の国産化を狙っています(図表3)。

PLIの門戸は地場企業のみならず外資系企業にも開かれており、補助対象に認定された日系企業もあります。しかし、当初の想定ほどには活用されていないとの声もあり、今後は同政策の運用の改善、拡充が望まれます。

図表3 PLIの対象品目

半導体産業

モディ政権は特に2021年以降、米中対立や半導体不足などを背景に進むサプライチェーンの多様化・強靭化を追い風に、国内半導体産業の育成を強力に推進しています。

同政権は2021年12月、半導体などエレクトロニクス製造の世界的ハブを目指し、1兆円を超える規模の政策パッケージを発表しました2。これには、工場設立の際の費用補助や売上高に連動したインセンティブ付与なども含まれます。

地方政府も半導体製造のためのインフラ整備を進め、独自の支援策もてこに企業誘致に乗り出しています。特にモディ首相の出身地であるグジャラート州は積極的で、地場企業や外資系企業が参画する前工程、後工程の工場建設など、複数の大型プロジェクト3が発表されています。モディ政権3期目では、こうした先行プロジェクトが計画どおり進捗し、安定稼働に至るかが注視されます。

半導体製造に向けた課題としては人材やインフラが挙げられます。半導体エンジニアなど、即戦力となる理工系人材や技術者が限られるとともに、安定した質の高い電力や水の供給にも不安が残る状況です。半導体エコシステムの構築に向けて、サプライチェーンを支える関連産業の誘致、育成も急務です。

自動車・EV産業

インドの自動車市場は中国、米国に次ぐ世界第3位の規模で、国内生産車は内需に加え、アフリカ、中南米などへも輸出されています。モディ政権は自動車・同部品、先端化学電池をPLIの対象とするなど、同産業の振興に注力しています。

自動車市場はインドの経済成長とともに順調に拡大するものと見られますが、今後の動向が注目されるのはEVです。モディ政権は2030年までに乗用車の新車販売台数に占めるEV比率を3割とする目標を掲げており、生産、販売の両面で奨励策を整え、EVシフトを促進しています。2024年3月には、3年以内に5億米ドル以上の投資を条件に、インド国内でEV製造を行う外資系メーカーに対し、通常より低関税でのEV輸入を認める政策を発表しました4。需要面では、新たな販売促進プログラムが総選挙後の早い段階で発表されると見られており、その内容が注目されます。なお、2023年時点の乗用車の新車販売台数に占めるEV比率は約2%です5

日系メーカーが高いシェアを誇るインドは、中国メーカーが積極的に生産、販売に乗り出しているASEAN市場と異なり、中国メーカーの存在感は薄い市場です。こうした中、モディ政権下のインドでEVの生産、販売がどこまで加速するのか、どのプレイヤーがそれをリードし、どのようなサプライチェーンが構築されるのかが注目されます。

インフラ整備

モディ首相のBJPは今回の総選挙で「世界水準のインフラ整備」を公約に掲げており、3期目において、インフラ整備にさらに本腰を入れて取り組む見通しです。インフラ開発を重要政策と位置づけ、積極的な予算配分を行うでしょう。

基礎になるのは2021年に打ち出したインフラ開発計画「ガティ・シャクティ(PM Gati Shakti)」です。これは従前の反省を踏まえ、地域や州を超えて、道路、鉄道、空港、港湾、水路などの複数のモードを包括的に管理・統合することで、全体最適かつ効率的なインフラ整備を目指すものです。

インドビジネスの大きな障壁の1つであると指摘されてきたインフラですが、モディ政権下で状況が改善されてきたのも事実です。ただし、インドがグローバルサプライチェーンにおいて重要な位置を占めるには、安定的な電力の供給などを含め、さらに質の高いインフラの整備が求められます。

エネルギー政策・気候変動対策

モディ首相は2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、2030年までの脱炭素関連の目標を発表しました。同首相がさらに5年の任期を得たことで、関連する取り組みは加速する見通しです。目標は以下のとおりです6

  • 非化石燃料の発電容量を500GWまで引き上げ
  • エネルギー需要の50%を再生可能エネルギーで賄う
  • 2021年から2030年までのCO2排出量を当初見込みより10億トン削減
  • 経済の炭素強度(単位GDP当たりのCO2排出量)を45%以上削減

具体的には太陽光などの再生可能エネルギーや電動車といった脱炭素に資する産業の拡大が見込まれます。グリーン水素やグリーンアンモニアでも国際的な生産・輸出ハブを目指し、海外の資金と技術を呼び込みつつ、産業化を図るでしょう。

ビジネス阻害要因と内政リスク

モディ政権下で投資環境は着実に改善してきました。世界銀行のビジネス環境ランキングにおいて、2014年版で140位だったインドは2020年版で62位にまで上昇しました7

しかし、まだ多くの課題が残されています。インフラ整備や工業用地開発を阻む硬直的な土地収用法制や、企業の人員増強意欲を削ぐ厳格で複雑な労働法制は、モディ政権下で改正、導入が試みられたものの抵抗が激しく、断念されています。また、税務や許認可などの行政手続きの煩雑さや法制運用の不透明さはこれまでもビジネスの阻害要因として指摘され続けてきましたが、大きな改善は実現できていません。

複雑な利害の調整や地道な取り組みが求められる諸課題に対応するには政治のリーダーシップが必要ですが、モディ首相の求心力低下の可能性がある中では、3期目でも積み残しとなってしまう課題は出てくるでしょう。

また、宗教的マイノリティに対する差別と抑圧を助長するようなヒンドゥー至上主義的な動きがモディ政権下で目立ってきている点には留意が必要です。宗教対立の激化や政治・社会の不安定化を引き起こすリスクを内包しています。

2-2. 外政見通し

対中関係

インドと中国の関係は、2020年6月に両国軍が国境係争地で衝突し、45年ぶりに死者が出たことを契機に悪化しています。インドは対立の激化は望んでいませんが、雪解けの兆しは見えにくい状況が続いています。

インドと中国はインド洋において互いに存在感を示そうと競っています。中国は一帯一路構想の下、インド周辺国の港湾などのインフラ整備を積極的に支援し、影響力の強化を図っています。印中関係が多少の改善を見ても、インドの対中警戒感は容易には弱まらないでしょう。

中国に対する経済依存度の低減はインドの政策課題です。インドにとって中国は最大の輸入相手国であると同時に最大の貿易赤字先で、先進国同様に製造業における多くの重要部品を中国に依存しています。「自立したインド」を目指すモディ政権は先述のPLIなどを通して重要部品などの国産化を促進し、脱中国のサプライチェーン構築を推進するでしょう。

投資については、モディ政権は2020年4月から中国を含む隣接国からの直接投資に対し、事前許可制を導入しています。中国の経済的な浸透を抑制するのが狙いと見られます。中国企業にとってはインドで事業展開しづらい環境が続きそうですが、日系企業も香港支社などを通じた投資が規制対象となりうる点には注意が必要です。

対米関係

現在、インドと米国は良好な関係を維持しており、中国という共通の「脅威」に対応する必要があるため、モディ政権3期目においても状況は大きくは変わらないでしょう。ただし、インドはロシアへの姿勢では米国と一線を画しているように、全方位外交を基軸としており、あくまでも実利優先の対米外交を展開するでしょう。

米国のバイデン政権は中国を念頭に多くの多国間枠組みを創設、強化しており、インドもそこに参画しています。日米豪印協力枠組みであるQUADや米国が主導する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」のほか、米国、インドにイスラエル、UAEを加えたI2U2もあります。また、バイデン大統領は2023年にインドで開催されたG20に参加した際、インドから中東を経由し、欧州までを鉄道や海上輸送で結ぶ「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」構想を発表しています。

インドとしては、米国の対中警戒感の高まりやサプライチェーン強靭化に向けた動きを好機と捉え、得られる実利の最大化を図る構えです。モディ首相の2023年6月の訪米時には、防衛、半導体、イノベーション、宇宙、重要物資のサプライチェーン、脱炭素といったさまざまな分野で、具体的案件を伴う協力強化を確認しています。

なお、2024年11月の米国大統領選挙でトランプ前大統領が再選した場合、同氏の中国への強硬姿勢や人権問題への無関心などは両国首脳の関係にポジティブに働きそうです。他方、同氏が前回同様に通商政策や就労ビザ発給などで一方的な保護主義的措置を取れば、摩擦の種となるでしょう。

対日関係

高まる地政学リスクや経済安全保障上の要請を背景に、日印の二国間、さらにQUADなどの多国間枠組みを通じ、モディ政権3期目においても安定した日印関係が続くでしょう。

経済連携においては、日本政府は2022年3月、向こう5年間での対インド官民投融資5兆円を目標に掲げました。半導体サプライチェーンの構築といった先端製造業、脱炭素・新エネルギーなどは日本の強みが活きる協力分野です。インドが日本にとって最大の受け取り国となっているODAでは、高速鉄道や地下鉄などのインフラ支援が進んでいます。また、デジタル分野の技術や人材といったインド側の強みを生かした連携の進展も期待されます。

インドへ進出する日系企業の数は2020年に1,455社とピークを迎えた後、2022年時点では1,400社まで減少していますが、今後どのように推移するか注目です。

対ロシア関係

インドはロシアのウクライナ侵攻後も同国との友好関係を維持しています。国連安保理におけるロシア非難決議の棄権、対ロ経済制裁への不参加、ロシア産原油の輸入拡大など、西側陣営とは一線を画した、ロシア寄りとも映る姿勢は一貫しています。

インドは冷戦時代から、領土問題を抱える中国、パキスタンを牽制するうえでロシア(ソ連)を重視しており、安全保障面をはじめとして、伝統的に強い紐帯を有しています。ロシアが地政学的に重要なパートナーである状況は現在も変わりません。

インドは先進各国との連携を強化しつつも、兵器調達ではロシアへの依存度が高く、国益最優先の観点からロシアとのパートナーシップは継続するでしょう。

グローバルサウス(新興・途上国)

2023年のG20議長国として同年1月に「グローバルサウスの声サミット」を主催したインドは、グローバルサウスの代表としての振る舞いを継続、強化すると見られます。

グローバルサウスの国々は多様で、特定の価値観や利害を軸に一枚岩で動くわけではありませんが、西側先進国の国際社会での影響力が相対的に低下することに比して、存在感を高めています。インドは西側中心に構築された現行の国際秩序に対する不満を抱えるグローバルサウスの声を拾い上げ、先進国に物申す役割を担うことで、両者に対する発言力を強めようとするでしょう。

通商政策

モディ政権は国内の産業保護や雇用維持、国産化促進を目的とした保護主義的な通商政策を取ってきており、これは3期目も継続する見通しです。世界最大の人口を抱える国内市場を武器に、外資系企業にインドへの投資を促す狙いもあります。

インド政府はこれまでも国産化促進のため、WTOの関連協定に従わず携帯電話などのICT製品の関税引き上げを行ったり、ノートパソコンの輸入に対する許可制導入を唐突に発表(のちに撤回)したりしています。特に中国からの輸入依存度が高い製品は制限的措置が取られる傾向にあるため、中国から部品などを調達している日系企業はインド政府が打ち出す政策に留意が必要です。

2019年に「地域的な包括的経済連携協定(RCEP)」の交渉から離脱したように、貿易収支の悪化につながりうる多国間貿易協定には消極的です。米国主導のIPEFでも、インドは自国の利益が見えにくいとして「貿易」分野8の交渉には参加していません。他方、英国やEUなど先進国との二者間の経済連携協定については、市場アクセスの確保や自国への投資を見込み、前向きな姿勢を維持すると見られます。

3. 日本企業への示唆

これまで見てきたように、引き続きモディ首相が政権を担うことで、内政、外政いずれにおいても政策の継続性、予見性は担保されます。モディ首相はBJPで単独過半数を握っていたこれまでの2期10年で、法人税の引き下げ、GST(物品・サービス税)の導入、PLIなど補助金制度の整備、インフラ開発など、親ビジネスの姿勢で投資環境の改善に努めてきました。モディ首相第1期就任時の2014年時点で2,531億米ドルであったインドの対内直接投資額(FDI、ストック)は、2022年時点で5,107億米ドルまで増加しています9

3期目のモディ政権は、大幅議席減となった選挙結果を踏まえ、雇用創出効果が大きく、労働者に安定収入をもたらす製造業の振興とそれを支えるビジネス環境の改善にさらに注力することが望まれます。しかし、従前よりも政権基盤が弱く、これまで実現できなかった労働法制の簡素化、土地収用法制の改正、農業改革といった難しい課題を含め、中央の強いリーダーシップが求められる取り組みをどこまで進められるかは未知数です。もともと州の権限が強い中、今回の選挙結果を受けて地域政党との連立で過半数を確保することとなったため、各州にいっそう配慮した政策運営が迫られそうです。また、海外からの輸入に影響を与える保護主義的政策が企業を悩ませる場面は引き続き出てくるでしょう。

また3期目においては、中国に代わる新しい投資先として、インドが外資系企業に実際に選ばれるのか、その具体的な成果が厳しく問われる5年間となり、その結果は次回(2029年)総選挙にも影響することになるでしょう。モディ政権が進める外国資本の誘致によって、インフラ、教育、スキル、雇用といった面でどれだけインドが発展し、国民生活に恩恵があったのかが問われます。3期目において著しい成果が見えた場合はモディ政権の4期目突入もありえる一方で、目立った成果がなく国民生活も改善が実感されない場合は、次の選挙で与党連合が今回以上に苦戦することも考えられます。

日本企業においては、2022年頃から改めてインドへの関心が高まるインドブームが起きています(参考:日本企業の間で再び盛り上がるインドブーム ―腰を据えてビジネスの可能性を探る局面に―)。日本・インド両国政府が経済連携を進める中、日本企業の対インド直接投資は、2023年に2008年以来の50億ドル超となるなど、頭打ちから増加傾向に転じているようにも見えます。モディ政権3期目において、足元でのインドブームが実際の投資や新規進出にどこまで結実するかが注目されます。

人口ボーナス、都市化の進展と中間層の拡大といった要因に加え、米中対立などの国際情勢も追い風に、インドは主要国中で最も高い成長率が見込まれています。日本企業としては、モディ政権3期目における主要政策の実現可能性や投資環境の改善度合いを冷静に評価しつつも、インドの発展の勢いをいかに取り込むかという視点を持つことが重要です。

1 Invest India "Self-Reliant India"

2 Press Information Bureau "Cabinet approves Programme for Development of Semiconductors and Display Manufacturing Ecosystem in India" December 15, 2021

3 India Briefing "PM Narendra Modi Virtually Inaugurates the 3 New Semiconductor Units on March 13" March 13, 2024

4 Reuters "In big win for Tesla, India to lower EV import tax if $500 mln invested" March 16, 2024

5 International Energy Agency "Global EV Outlook 2024" April 2024

6 Prime Minister's Office "National Statement by Prime Minister Shri Narendra Modi at COP26 Summit in Glasgow" November 1, 2021

7 2020年版を最後に、同ランキングは廃止されている。

8 労働、環境、デジタル貿易などが対象で、関税撤廃などの市場アクセスは含まない。

9 UNCTAD "World Investment Report"

インド・モディ政権3期目の政策見通しと日本企業への示唆

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執筆者

岡野 陽二

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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坂田 和仁

マネージャー, PwC Japan合同会社

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