
これからの病院経営を考える 【事例紹介】北杜市立甲陽病院:看護業務の見直しが生んだ職員の意識改革
山梨県北杜市の市立甲陽病院では、総看護師長のリーダーシップの下、看護業務の見直しを進めています。このプロジェクトを支援したPwCコンサルティングとともに取り組みを振り返り、現場からの声や成功の秘訣について語りました。
都市部を含め多くの地域では少子高齢化が進んでおり、医療需要・医療供給に影響を与えています。特に地方では医療需要が増加する反面、医療提供の場所である病院・診療所の減少や、医療の担い手である医師や看護師などの医療従事者の不足が発生しています。将来的に多くの地域で少子高齢化の進行が予測される中、自治体や医療機関は地域医療への影響やその対策について検討し、準備をする必要があります。本稿では、当社が支援している地域の事例を参考に、少子高齢化が地域医療に与える影響や打ち手について考察します。
日本では数十年前から少子高齢化が進行しており、都心部に近い地域でも65歳以上の高齢者人口が増加して約半数が高齢者という事態が起きています。人口動態は地域ごとに異なりますが、地方に目を向けると高齢者人口はピークに達し、既に減少が始まっている地域(過疎型地域)も存在します。日本の人口動態を考慮すると、過疎型地域のような高齢者人口の減少は他の地域でも将来的に直面する可能性があります。
「第12回少子高齢化が進む地方の現場にみる医療・介護の現実と打ち手」で紹介した過疎型地域では、かかりつけ医機能を持たざるを得なくなった基幹病院において、「外来業務の逼迫」が生じる事例を紹介しました。過疎型地域では医師の高齢化も進んでいることから、一般診療所数は今後より一層の減少が見込まれるなどの事情により、基幹病院では「外来業務の逼迫」をはじめとした地域特有の問題が発生します。この問題の発生要因や、病院経営・地域住民に与える影響を把握することは、過疎型地域や過疎型地域予備群の地域を支える基幹病院にとって重要になります。
前述のとおり、過疎型地域では一般診療所が少なく、一般的な地域よりも多くの外来患者が基幹病院に来院します。また、開業医の高齢化が進んでいる関係から逆紹介の積極的な受け入れが見込めず、逆に一般診療所が診るべき患者(処方のみの患者など)を基幹病院で受け入れるような事象が発生しています。このような患者の受診抑制施策として、選定療養費の設定や増額が考えられますが、基幹病院が公立病院の場合、地域住民からの声を勘案すると容易に実現することはできません。また一部の患者では、選定療養費の対象となる初診患者にならないよう、定期的に受診をしているといった事象が見受けられます。
過疎型地域では外来患者数が増加するだけでなく、高齢化の影響から患者の院内移動にも従来以上の時間を要しており、特に中待合室が無い場合には診察時間が増加しています。また、過疎型地域では公共交通機関も十分に機能しておらず、患者を病院へ連れていくために家族が車で送迎するなど、家族にも負担がかかっています。家族が働いている場合は早朝に患者を病院へ送り、夕方以降に迎えに行くことなるため、外来の予約時間よりも早く来院して受け付けをすることになります。結果的に窓口への集中や待機患者への質疑応答などが発生し、職員の対応が必要となるため、外来業務が逼迫する一因となっています。
外来業務の逼迫は病院経営にさまざまな影響を与えます。収支面では下記に記載のとおり、検査・手術の抑制による収益減少や業務時間の圧迫による費用増加など、収益・費用の両面に影響を及ぼしています。また現場職員が体力面・精神面で疲弊し、状況の改善に踏み出す余力も削がれていきます。さらに病院経営だけでなく、待ち時間の増加により患者側の負担も増加するため、外来業務の逼迫は病院側と患者側両方に影響していることが分かります。
外来業務の負荷軽減は一朝一夕には達成できず、短期的施策・中長期的施策の両面から検討する必要があります。短期的な外来業務の負荷軽減施策としては、タスクシフトとタスクシフト先の業務見直しがあります。医師事務作業補助者の活用やコメディカルへのタスクシフトなどを実施することで、医師には専門性が必要な業務に注力してもらいます。タスクシフトに併せて、タスクシフト先になる看護師などのコメディカルの業務の見直しも実施する必要があります(「看護師の業務見直しを端緒とした医療機関の働き方改革」参照)。
また、中長期的な施策としては、適正受診に関する啓蒙活動やサテライト診療所などを新設することで、外来患者数を抑制・分散させ、基幹病院を受診する外来患者数を適正化させることも考えられます。ただし、基幹病院ではなくサテライト診療所を利用するには、サテライト診療所と基幹病院間の医療連携の充実を患者側に理解してもらう必要があり、情報共有活動が重要となります。
上記は医療機関側で実施する施策ですが、これらの課題を解決するには国や自治体の対応も必要であり、今後少子高齢化がより一層進行する過疎型地域の特性を考慮した診療報酬の設定や医療特区の設定、適正受診に関する国民への啓発活動の強化が考えられます。過疎型地域においても持続可能な医療提供を可能にするため、国・自治体・医療機関が協力することが重要になります。
本稿では、少子高齢化が地域の基幹病院に与える影響と打ち手について考察しましたが、今後日本の多くの地域で少子高齢化の対応に迫られると考えられます。特に外来業務の逼迫については中長期的な施策が必要となるため、将来的に過疎型地域となることが予測される地域では早急な検討が重要です。本稿が、日本の地域医療の中核を担う基幹病院の持続可能な医療提供の一助になれば幸いです。
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