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昨今、製薬企業のメディカルアフェアーズ(MA)部門が社外と関わる範囲は格段に広がっており、その相手はキーオピニオンリーダー(KOL)や主要な医療従事者(HCP)だけに留まらず、患者や患者団体、政策立案者、規制当局など、医療エコシステム全体にわたります。社外との連携が拡大するほど、MA部門はそれに見合った機能、例えば相手の趣向に合わせたコミュニケーション能力や、新薬・診断に関する新たな情報、個人に合わせてカスタマイズされた患者ソリューションなどを持つ必要があります。
また、デジタル化の進展とデータソースの増加もMA部門の役割を進化させています。2023年1月にPwCが発刊した報告書「From healthcare to life care」では、受動的な「治療医学」を主体とする従来の医療のあり方が、プレシジョンヘルス(個別化された精密な健康管理)に基づくシステム、すなわちヘルスケアエコシステム全体のステークホルダーが連携して実現する積極的な「予防医学」へと発展的に転換していることが解説されています。
このような変革に貢献するため、MA部門には部門内で保有する科学的知見をヘルスエコシステムの各ステークホルダーが最適に連携できるように還元し、部門内のデータソースを活用して各ステークホルダーが取るべき戦略的方向性を見出すことを助けることが求められます。しかし、これまで情報を提供するだけの役割に注力していたMA部門が、自らの知見やデータを活用して幅広い外部ステークホルダーの課題を解決し、戦略を先導するエコシステムパートナーになるためには、これまでにない能力の著しい向上が必要となります。
私たちはここで、MA部門が将来の需要に応えるために伸ばすべき4つの能力を特定しました。これは、先に整理したMA部門の変革を促す要因(MAが組織を率いる時代)にも基づいています。
MA部門が幅広い外部ステークホルダーの戦略的パートナーとなるためには、従来からのコアコンピテンシーである医学的知見を、ビジネスマインド、コンサルティング能力、関係構築能力などと組み合わせることが不可欠となります。
昨今の新規治療は高額であり、対象患者は少数に限定される傾向があります。そのような複雑かつ革新的な薬剤の利用や普及を促すには、それらの価値を適切に訴求する必要があります。HTAの意思決定を支援するため、MA部門のプロフェッショナルは、CAR-TやmRNA、遺伝子治療といった新しい技術をしっかりと把握したうえで、エビデンス創出能力を強化し、医療技術評価(HTA)を支援する必要があります。
ビッグデータに基づく医療政策の強化や治療アルゴリズムの改善を行うためには、AIがサポートするヘルスケアインサイトのフィードバックループや、保険請求、電子カルテ、外部出版物、内部データ、その他のデータソースをリアルタイムで分析することが有効です。これらは、多様なステークホルダーが意思決定をするのに役立つ、総合的なインサイトにもなります。
積みあがるデータと新しいデジタルエンゲージメントプラットフォームを活用することによって、製薬企業は部門を超えた協力の下、外部とのコミュニケーションの個別化を図ることができます。ここにおいて医薬品ライフサイクルの全体とのかかわりがあるMA部門は、このような効果的なオムニチャネルアプローチにおける不可欠な存在です。最適なコミュニケーションは疾患領域やステークホルダーのニーズによってもさまざまであり、特定の疾患や治療にとらわれない医療全体に関わる話をする場合もあれば、CGTのように非常に限定された患者中心の話題についてコミュニケーションをとる場合もあります。
MA部門の変革を始動させ、これらの能力の重要度を完全に理解するには、まずは部門自体の変革のビジョンを設定することが重要です。変革を成し遂げるためにフォーカスすべきポイントはさまざまであり、メンバーのスキルアップなどの比較的小さな目標の場合もあれば、顧客エンゲージメントモデルを見直すために新たなテクノロジーへの大きな投資の場合もあります。
以下に3つのポイントを挙げます。
1. 既存人材に変化に耐えうる力を植え付けること
進化し続けるヘルスケアのニーズに応えるためには、テクノロジーの進化に合わせて着実に人材を育成することが肝要です。例えば社内異動や出向を通じた地域・部門を超えた経験や、現在重要性が増しているコマーシャル側の視点を習得する研修を通して、新たなテクノロジーとデータソースの活用方法を見出すスキルを植え付けることが可能です。また、グローバルとローカル両方における、包括的なスキルアップ戦略も不可欠です。
2. メディカルアフェアーズの機能を最適化すること
データとテクノロジーの活用により、MAが現在有している能力を最適化することで、医薬品ライフサイクル全体にわたる新たな機能を構築することができます。以下に3つの例を挙げます。
3. MA部門のオペレーティングモデルを変革すること
製薬企業は、部門レベル、ひいては企業レベルのオペレーティングモデルの変革を検討するべきです。むしろ、急速に変化するヘルスケアエコシステムと、拡大する多様なステークホルダーからの要求によって、組織の変革は必然とも言えます。革新的な新しいオペレーティングモデルを開発するためには、MA部門が持つ科学的知見が極めて重要です。
ヘルスケアはイノベーションに対して開放的であり、製薬企業はエコシステムを管理し、革新的な医薬品への患者のアクセスを最大化するための顧客エンゲージメントモデルを常に開発しています。従来、顧客とのコミュニケーションはメディカルサイエンスリエゾン(MSL)やMRによって直接、あるいは治療領域によってはフィールドアクセスを介して行われてきました。一方、多様化が進む外部顧客はより包括的かつ合理的で、一貫したエンゲージメントを求めるようになっています。これからのMA部門はペイシェントジャーニーの問題解決によりフォーカスし、コマーシャルチームとのハイブリッド連携を進めていくことになるでしょう。
※本コンテンツは、Honing Medical Affairs capabilities for the futureを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
Partner, Strategy& UK
鈴木 亘
シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社
パートナー, PwCコンサルティング合同会社
前田 里菜
アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社
髙山 量子
マネージャー, PwCコンサルティング合同会社