{{item.title}}
{{item.text}}
Download PDF - {{item.damSize}}
{{item.title}}
{{item.text}}
2022-09-08
近年、注目度を高めるメタバース。ビジネスに利活用する企業の数も飛躍的に増加しています。いざメタバース空間を使ってビジネスを始める場合、企業がやるべきは空間設計だけではありません。利用規約の整備、決済システムの確立、ユーザーのプライバシー保護など、快適な空間を提供するための下準備が必要です。本連載では、メタバースビジネスを行う企業が留意すべきルール、すなわち法務関連のトピックを取り上げます。企業から実際に寄せられる質問をもとに、私たちがビジネスを進めていく上でとるべきアクションを、共に考えていきましょう。今回のテーマは「メタバースと利用規約」です。Vol.1では、メタバースの利用規約に固有の留意点について検討します。
メタバースを活用したビジネスが広く拡大する一方で、「メタバース」という用語の定義自体は、一義的に明確とは言えない状況にあります。新しい分野・新しいサービス内容ということもあり、サービスの提供者側とユーザー側との間で、共通理解が醸成されていない部分も多いと言えます。
そのため、まずは利用規約において、サービス提供者が何を提供するのか(サービス内容など)、ユーザー側が得られる権利の範囲や義務の内容、禁止行為、制限事項などは何かについて、ユーザーとの後日のトラブルを避けるべく、明確に説明しておくことが重要です。
これらの説明に関しては、利用規約の本文中に記載するだけでなく、サービスサイト内において、分かりやすく適切にサービス説明を設けることが望ましいと考えられます。
本連載でも取り上げているように、メタバースビジネスに関連する法的論点は多岐にわたるものの、現時点において、論点の解釈について明確に定まっていない点も多いところです。このような中でも、当事者間の合意に基づいて整理することが可能な場合も多いため、当事者間の合意として処理できるように利用規約で解釈を定めておくことが望ましいと言えます。
以下では、メタバース関連サービスにおける固有の論点として、利用規約で特に留意しておくべき点について記載します。
メタバースに限らない一般的なオンラインサービスでは、利用規約のリンクなどを設けた上で、チェックボックスなどによって同意を取得する例が多いと言えますが、メタバース関連サービスにおいても、基本的には同様の方法が可能と考えられます。
一方で、UI/UXが一定以上に発展したメタバースでは、サービスによっては、従来型のオンラインサービスの利用開始の形式(ウェブ上の画面遷移により同意をクリックする形式)と異なる形式も増えてくると思われ、そのような場合には、例えば、ユーザーの目の前に浮かび上がるなどサービス内容に適した形で利用規約を表示し、同意を取得するなど、サービスの特性(ユーザーの没入感)を損なわない形にしつつ、ユーザーに示すような工夫が必要と言えます。
また、本人認証が必要な場合についても、没入感を損なわないよう、ヘッドマウントディスプレイなどを装着したままでも本人認証を可能とすべく、虹彩認証などの生体情報による認証方法も検討する必要があるでしょう。
ユーザーが作成するコンテンツ(User Generated Contents: UGC)がある場合に、その権利処理については、メタバース固有の論点というよりは、これまでも他のオンラインサービスで議論されていたものと同様の視点で権利関係などを規定することになるケースが多いと考えられます。もっとも、メタバース内のUGCに関する知的財産権の帰属は、他人の著作物の利用の有無、ユーザーの創作行為の有無・程度などの影響を受け、法律で一義的に明確に定まるものではありません。そのため、UGCの権利については、利用規約でなるべく具体的に定めておく必要があります。特にオープンメタバースの場合、特定のプラットフォームで作成されたコンテンツに、他のプラットフォームで作成されたコンテンツを組み合わせる場合など、権利関係がより複雑になることも想定されます。
また、メタバースでは、ユーザーによるコンテンツ作成が増加すると思われ、UGCに係る権利処理や禁止事項の整理の重要性は高まるものと思われます。
将来的には、特定のプラットフォームで作成・購入したアバターやデジタルグッズが他のプラットフォームでも利用可能となること(オープンメタバース化)が考えられます。自社のメタバース空間をオープンメタバースとする場合には、各プラットフォーム内の契約関係(アバターやデジタルグッズの利用許諾など)をどのように他のプラットフォームに接続するか(契約条件を統一するかなど)、他のプラットフォームでのデジタルグッズなどの利用をどこまで認めるのか(売却も可能とするのかなど)につき、利用規約に反映することが必要と言えます。
メタバースでは、新たな固有の論点として、アバターを介した暴力行為や痴漢行為など、新しい類型の迷惑行為が発生することが考えられます。一方で、これらの行為は既存の刑罰法規などの法令に照らしても、必ずしも犯罪行為に該当するかが明らかでないものも含まれます。そのため、メタバース内での秩序や倫理を守るためには、サービス事業者が自ら設定するルールとして、規制すべき迷惑行為を定め、利用規約上の禁止事項として適切に手当てを行うことが望まれます。
Vol.2では、利用規約の実例を紹介しながら、実際にはどのような対応が取られているのかを見ていきます。
Vol.2はこちら
※本シリーズはTMI総合法律事務所との共同執筆です。今回は下記のメンバーにご協力いただきました。
柴野 相雄
TMI総合法律事務所, 弁護士
中山 茂
TMI総合法律事務所, 弁護士
丸山 駿
TMI総合法律事務所, 弁護士