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2022-10-04
近年、注目度を高めるメタバース。ビジネスに利活用する企業の数も飛躍的に増加しています。いざメタバース空間を使ってビジネスを始める場合、企業がやるべきは空間設計だけではありません。利用規約の整備、決済システムの確立、ユーザーのプライバシー保護など、快適な空間を提供するための下準備が必要です。本連載では、メタバースビジネスを行う企業が留意すべきルール、すなわち法務関連のトピックを取り上げます。企業から実際に寄せられる質問をもとに、私たちがビジネスを進めていく上でとるべきアクションを、共に考えていきましょう。今回のテーマは「メタバースと利用規約」です。後編では、利用規約の実例を紹介しながら、実際にはどのような対応が取られているのかを見ていきます。
現時点において展開されているメタバース関連のサービスについて、公開されている利用規約を見る限り、既存の利用規約の枠組みを用いているものが多く、メタバース関連の論点としてQ1で挙げた新しい問題などに関しては、今後、議論の深化や利用規約への反映がなされていく部分もあると考えられます。現時点では、メタバース特有の事情を踏まえた条項は、それほど多くはないように思われますが、いくつかの事例を紹介します。
まず、Meta Platforms, Inc.(Meta社)は、VRヘッドセットであるOculusを提供するにあたり、ユーザーがVR空間を安心して楽しむことができるよう「VRでの行動に関する現行ポリシー」を公表しています*1。同ポリシーでは、例えば禁止行為として以下の行為が列挙されています(下線は筆者らによるものです)。
また、メタバース空間の企画・開発や運営を行うクラスター株式会社(クラスター社)は、メタバースプラットフォームである「cluster」*2を提供するにあたり、「cluster利用規約」で以下の規定を設けています(第16条の2第11項)。
上記は、メタバース特有のサービス設計に起因するトラブルを防止するための規定の一例と言えます(下線は筆者らによるものです。)。
さらに、株式会社NTTドコモ(NTTドコモ社)は、メタバースプラットフォームである「XR World」*5を提供するにあたり、「XR World利用規約」で以下の規定を設けています(第7条第2項)。
(1)当社又はコンテンツ提供者*7が、本サービス上で、複製、投稿・配信を禁止している本コンテンツについて、複製、投稿・配信を行う行為
(2)当社又はコンテンツ提供者が、本サービス上で、複製、投稿・配信を禁止している方法・態様により、複製、投稿・配信を行う行為
(3)本コンテンツの信用、評価若しくはイメージ等を著しく損なう行為又はそのおそれのある行為
(4)契約者による複製、投稿・配信の主体が当社若しくはコンテンツ提供者であると誤信させる行為又はそのおそれのある行為
(5)本コンテンツについて、有料配信その他の商用利用を行う行為
(6)その他当社が個別に禁止している行為
上記は、メタバースプラットフォーム内にカメラ機能などを実装し、アバターやオブジェクトなどの画像を誰でも撮影することを可能とするサービス設計において、ユーザーが行える行為と、禁止する行為の範囲を定める規定となっています。これらの規定は、撮影された画面やそれに含まれるコンテンツの権利関係などに起因するトラブルを防止する上で重要と考えられます。
Vol.1はこちら
*1 Meta社の説明によれば、既存のFacebookアプリなどにも適用されるコミュニティ規定は、VRのコンテンツやVR空間での行為にも適用されるとのことです。その一方で、「VRでの行動に関する現行ポリシー」は、VR空間での行為に適用されるコミュニティ規定について理解を深めることを目的として、ポリシーの一部とその適用例を説明したものであるようです。
*2 同サービスは、「誰もがバーチャル上で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントに参加したり、友達と常設ワールドやゲームで遊ぶことのできるメタバースプラットフォーム」と説明されています(https://corp.cluster.mu/)。
*3 配信されたコンテンツを一般参加者が視聴することができる仮想空間のこと(利用規約第2条第31号)。
*4 ユーザーが作成しcluster上にアップロードしたアバターのデータのこと(利用規約第2条第24号)。
*5 同サービスは、「お客さまがバーチャル空間において、アバターを操り、お客さま同士で相互にコミュニケーションを取りながら音楽、アニメ、ダンスなどのエンタメコンテンツをはじめ、そのほかにも幅広いジャンルのコンテンツをお楽しみいただけるサービス」と説明されています(https://official.xrw.docomo.ne.jp/howto/?id=faq)
*6 本サービス上で視聴可能な情報・コンテンツ等のこと(第2条第14号)。
*7 本サービスを通じて契約者に本コンテンツを提供する者のこと(第2条第16号)
※本シリーズはTMI総合法律事務所との共同執筆です。今回は下記のメンバーにご協力いただきました。
柴野 相雄
TMI総合法律事務所, 弁護士
中山 茂
TMI総合法律事務所, 弁護士
丸山 駿
TMI総合法律事務所, 弁護士