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世界の消費者意識調査2023年6月 意思決定のポイント:購入前の消費者の体験を向上
本調査では、25の国と地域から消費者8,975人が回答しました。購入体験の前に摩擦を取り除くこと、および意思決定の重要な場面にある消費者にリーチする方法を解説します。その次に、これまでも重要だった分野における消費者の声に注目します。
メタバース市場で人材サービス事業を展開するパーソルマーケティング株式会社(以下、パーソルマーケティング)でメタバースデザイン事業部部長を務める川内浩司氏と、同事業を支援するPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)ディレクターの岩花修平がメタバースビジネスについて語り合う本対談。両社の協業内容とともに、メタバース人材育成の重要性について掘り下げた前編に続き、後編ではメタバース空間における労働市場に焦点を当てます。今後のあるべきメタバース戦略や、メタバースがキャズムを超えるために必要な要素など、メタバース市場の将来像を多角的な視点から展望しました。
(本文敬称略)
対談者
パーソルマーケティング株式会社
メタバースデザイン事業部部長
川内 浩司 氏
PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
岩花 修平
(左から)岩花 修平、川内 浩司 氏
―― パーソルマーケティングがメタバース市場に参入してから約1年が経ちました。この間、メタバース市場にはどのような変化がありましたか。
川内:
2022年の中ごろまでは、メタバースは一過性のイベントを開催する場でした。岩花さんの言葉を借りるなら、「打ち上げ花火」のようなイベントを仕掛けるエンターテインメント企業がほとんどでした。そうした案件の場合、メタバース空間には数名の案内スタッフが必要になるものの、雇用契約を締結して継続的に人材を派遣するまでには至りませんでした。
しかし、2022年後半からメタバース市場に変化が起き始めました。同じようなイベントが増えてメディアの注目度が下がり、イベントの開催数が少なくなったのです。それまでは「メタバースを使って何かやる」というだけでニュースになりましたが、今やその種の話題は生成AI(人工知能)に置き換わってしまっている。また、一過性のイベントの場合、開催初日だけは盛り上がりますが、翌日はガラガラになるなど、集客やマネタイズも難しいことが分かってきました。
岩花:
当初はPwCコンサルティングでも、メタバースに関心を寄せる企業は、エンターテインメント企業が中心になると予想していました。しかし実際には全ての産業、特に成熟産業と言われる製造業やエネルギー、地方自治体が、新規事業としてメタバースに取り組む意欲を持つケースのほうが多かった。こうした企業や自治体は、メタバースを一過性のトレンドとしてではなく長期的な視点での市場と捉え、メタバースを活用して自らの業務を効率化したり、新規事業を立ち上げたりしたいという明確なビジョンを持っていることが特徴です。
イベントの減少とともに、メタバースも下火になりつつあるという印象をお持ちの方は少なくないかもしれませんが、ビジネス活用に向けた動きは、そこかしこで着実に進みつつあります。「打ち上げ花火」は終わり、メタバースの社会実装がより本格的に検討される時代に入った、と言えるかもしれません。
―― そのような変化の中、メタバース空間における労働市場をどのように捉えていらっしゃいますか。
川内:
パーソルマーケティングではメタバース事業の理念に「多様な人材活用と新たな雇用の創造」を掲げています。これまで物理的にオフィスまで通勤することが困難だった高齢者や、身体的なハンディキャップをお持ちの方々などにお仕事をご案内し、働く機会を創出することを目標とした理念です。
現在は少子高齢化による労働人口減少を背景に、多様な働き方に対する門戸は広がっています。特にコロナ禍でリモートワークは社会に広く認知され、在宅勤務も普及しました。老若男女問わず、デジタル空間で業務に従事する機会も増加しています。そうした社会の潮流に鑑みると、これまでの労働環境では制約があり、就労のチャンスが限られていた方々も、メタバース空間では制約を乗り越えて就労できます。今後はメタバース空間での労働需要はもちろん、周辺の関連事業も拡大していくでしょう。
パーソルマーケティング株式会社 メタバースデザイン事業部部長 川内 浩司 氏
―― 前編では今後の展望として、ハプティクス(触覚提示技術)を活用したデバイスなどの登場により、就労機会は拡大するとの指摘がありました。そうしたデバイスを活用した就労とはどのようなものでしょうか。
川内:
メタバース空間では、タイピングをしなくてもできる作業があります。例えば、指の動きをトラッキングするリング型デバイスを装着すれば、複数人で3Dオブジェクトを扱えます。また、音声のみのコミュニケーションで販売接客などもできます。現時点でそうした仕事は少ないですが、今後メタバースが普及すれば、新たな職種が登場すると予想しています。
話は逸れますが、労働人口の減少という課題は、高齢者の再就労環境整備とセットで考える必要があります。定年を超えても労働意欲のある方はたくさんいらっしゃいます。体力的な課題から毎日通勤することは難しいかもしれませんが、そうした方もメタバース空間で就労できる可能性はあると考えます。
個人的な話ですが、私の両親は高知県の郊外で畑作業をしながら生活しています。高齢ですが、「畑作業以外でも社会とつながり、活力になるような仕事がしたい」という気持ちを持っています。同じように「社会とつながりのある仕事がしたい」と望んでいる高齢者はたくさんいるはずです。
メタバースが普及すれば、そうした高い労働意欲を持った高齢者が活躍できる機会は増えるでしょう。そうした方々は、メタバースの技術的な仕組みまで理解する必要はありません。仕組みを理解する人間が、さまざまな制約のある方々の「働きたい」という思いに応えられる土壌を構築できれば、こんなに嬉しいことはありません。余談ですが、そうなれば両親も私の仕事を少しは理解してくれるかと。そんな未来を描いています。
岩花:
すばらしいですね。メタバース空間での就労機会拡大には追い風が吹いていると考えます。厚生労働省は2023年1月、障害者雇用促進法に基づき、企業に義務付けられている障がい者雇用率を2023年の2.3%から段階的に引き上げて、3年後に2.7%にすると発表しました。障がい者が健常者と同じ条件で働くことを前提にすると、就ける業務は限定されてしまいます。しかし、メタバース空間で新たな就労機会を提供できれば、こうした目標の達成にも貢献できるのです。
―― お話を伺っていると、メタバースは就労のプラットフォームとして無限の可能性があると感じます。
岩花:
これはかなり先の未来の予測ですが、アバターと生成AIを組み合わせれば、アバターがその人が持つスキルや能力、経験値をベースに「第二の自分」としてメタバース上で働く時代が来ると考えています。
川内:
面白いですね。例えば、特定分野に特化したナレッジを持つコンサルタントが自分の論文や知見、関連する資料などをデータベース化し、AIチャットボットと連携させたアバターを作成したとします。そのアバターがメタバース空間でコンサルティングサービスを提供するような仕組みを構築すれば、本人の生産性は2倍になりますよね。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 岩花 修平
―― 今後、メタバースが社会に広く認知され、そこで働くことが当たり前になるためには、どのような課題を克服する必要があると考えますか。
岩花:
現在、メタバースは「アーリーアダプター」と呼ばれる、新しいものに興味がある人にしか受け入れられていない印象です。キャズムを超えるには「メタバースは安全で便利な空間であり、有益でより豊かな生活や働き方を実現するためのツール」であるということを、より多くの人に理解してもらう必要があります。現在のインターネットやスマートフォンがそうであるように、世の中になくてはならないインフラの1つとして認知されるようになるということです。
現在のメタバースに対して、ゲームの延長であるとか、NFT(非代替性トークン)のような投機目的の技術であるといったネガティブなイメージを持つ人も少なくありません。まずはそうした誤解を払拭することも大切だと考えます。
川内:
「メタバースに参加しませんか」と企業が呼び掛けている段階では、キャズムは越えていません。これを乗り越えるためには、まだ利用していない人たちに「メタバース空間で何かしたい」と思わせる動機付けが必要です。
例えば、SNSのトレンドはこの10~20年でかなり移行しました。もし、次のトレンドが仮想空間上でのコミュニケーションであり、そのプラットフォームがメタバースになれば、ユーザー数は増加し、あらゆる企業が参画して市場が形成されるでしょう。
正直に言うと、2022年4月にサービスを開始した当初は、メタバース市場が急拡大し、求人需要が爆発するのでは、という淡い期待がありました。残念ながら現時点ではそうなっていませんが、メタバース空間で当たり前のように働くという世界は必ず到来します。その時のために今から準備することは、決して時期尚早ではありません。
岩花:
もう1つ、メタバース空間でのビジネス活動が当たり前になるには、ルールやガイドラインの策定、ガバナンスの強化といった制度面を整備する必要があります。前編で指摘したとおり、メタバースは開発途上の技術ですから、前のめりで技術を実装すると、セキュリティや法規制への対応が後手に回るなど、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。そうならないよう、人々が安心して働ける安全な環境を構築することが、パーソルマーケティングとPwCコンサルティングの使命であり目標なのです。
―― 最後に今後の展望を教えてください。
川内:
前編でも説明したとおり、パーソルマーケティングがメタバース事業に参入した理由は、「働く場を提供することで社会貢献をしたい」という理念があるからです。
パーソルグループのビジョンは「はたらいて、笑おう」です。私たちはこのビジョンを具現化する手段の1つとして、メタバースを捉えています。説明したとおり、メタバース空間ではこれまで働けなかった方々にも仕事の場と機会を提供できます。パーソルマーケティングの「人々の成長を支援する」という姿勢は、何年経っても変わりません。このビジョンを実現するために、今後も邁進していきます。
岩花:
メタバースの可能性は無限大です。企業は長期的な視野に立ち「今できることは何か」「今後はどのような領域が拡大するのか」を見極めることが重要だと考えます。
―― ありがとうございました。
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