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The ExCo GroupのAdam Bryant氏は、2022年に発表した記事において「ワークライフバランス」に代わる新たなフレームワークとして、「want-should-need」を提案しています。本稿ではその新フレームを紹介しつつ、個人と企業のwant-should-needのバランスをとることの難しさと、その対応策として変化のマネジメントの重要性を解説しています。
The ExCo Groupのsenior managing director(当時)であるAdam Bryant氏は、2022年8月にPwCの「strategy + business」に発表した記事「The new work–life balance」において、コロナ禍を経て、workとlifeの境界がより曖昧になり、workかlifeかではバランスが取れなくなった日常に対処するため、新しいフレームワークである「want-should-need」を提案しています。このフレームワークは、人が生きる上での全ての瞬間を「したい」「すべき」「しなくてはならない」に分類するものであり、これによりポストパンデミックの世界において、より実践的に人生のバランスがとれるようになると結論付けています。
記事が発表された2022年夏には、「Great Resignation(大量離職)」や「Quiet Quitting(静かな退職)」といったトレンドが顕在化しており、企業は従業員の欲求(want)に敏感になる必要がありました。しかし年月が経ち、今では従業員の欲求に対する関心は落ち着き、むしろ会社としての要求(should/need)を従業員に理解してもらう必要があるという現実が目立つようになっています。ただし、会社の要求を押し付けていては、従業員からの大きな反発が予想されます。深刻な人手不足が起きているなかで、従業員のエンゲージメントの低下や離職は大きな痛手になりかねません。会社の要求を示しつつも、従業員の欲求に配慮し、want-should-needの適切なバランスをとることが求められています。
PwCの最新の「グローバル従業員意識/職場環境調査」(詳細はこちら)によれば、従業員は依然として「自分に合った仕事の仕方を選択できる」ことを重視しており、リモートワークが可能な社員はそうでない社員よりも仕事の満足度が高いことが示されています。このような柔軟な働き方に対する従業員の欲求は、依然として存在しています。
一方で、企業は従業員同士のコミュニケーションや協働を強化したいと考えています。2024年の世界経済フォーラム年次総会でのインタビューにおいて、PwC英国のKevin Ellis会長は、「特に若手社員は対面で仕事をする時間を増やすべきであり、オフィスでの協働を推奨する」と述べています。既存の人材の働き方と成果の出し方を変えるよう促した興味深い発言だと感じました。
このような状況下で、個人と企業のwant-should-needのバランスを保つことは、継続的な変化への挑戦です。本稿では、このバランスを実現する方法として、変化のマネジメント方法をご紹介したいと思います。
変化を適切にマネジメントするためには、9つの成功要因があります。
①これからの変化のイメージを可視化(具体化)する
②リーダーの意識を合わせる(同じ方向を向かせる)
③これから起こる変化の影響範囲を予測する
④変化シナリオを構築する
⑤変化を推進する体制を組織する
⑥社内コミュニケーションにより理解度を上げていく
⑦意識・行動を変えて実践度を上げていく
⑧行動実践するためのスタンスやスキルを身に付ける
⑨変化の度合いを可視化し変化のサイクルをつくる
これら9つの成功要因は大きく3つのステップに分けることができます。1つ目のステップは、変化の方向性づけです。①②が該当しますが、組織がなぜ変わらないといけないのか、どこに向かうべきなのか、意識を合わせることです。2つめのステップは、具体的な変化の理解です。③④⑤が該当しますが、何が変わり、その変化によってどんなインパクトがあり、それらのインパクトをどうやって緩和していくかを計画します。最後のステップは、変化を実際に起こすための仕掛けづくりおよび実行です。⑥⑦⑧⑨が該当しますが、組織を構成する個人個人に変化を促し、その変化を根付かせるのです。
企業が思う方向に従業員を向かせたいと願うとき、施策は概して一方的なコミュニケーションやトレーニング受講の強制になりがちになっていないでしょうか。また、それらの施策には継続性はなく、一過性の施策として終わりがちではないでしょうか。変化を成功させ、バランスをとり続けるためには、このような体系立てたアプローチが必要です。Want-should-needのバランスをとるという、無形の概念的な施策だからこそ、成功のためには現状分析に基づいた計画と定期的なモニタリングが重要であり、サイエンスとして取り組むことが不可欠なのです。
個人と企業のwant-should-needのバランスを保つことは、組織にとって永遠の課題です。しかし、適切な変化のマネジメントを通じて、このバランスを実現するという方法があります。企業は、従業員からの理解と協力を通じて変化に適応し、持続可能な成功を目指す必要があります。
著者:Adam Bryant
2022年8月29日
仕事と私生活が絡み合う現在、ワークライフバランスという言葉はもはや時代遅れ。新しい枠組みが必要です。
ワークライフバランスの歴史を探ってみると、この概念の起源には諸説あります。一般的なのはロバート・オウエン。ウェールズ地方の工場経営者で「英国社会主義の父」と呼ばれています。1800年代前半の労働条件が厳しすぎると考え、1日のバランスの取れた勤務体系として「8時間の労働、8時間の娯楽、8時間の休息」を提唱しました。
Adam Bryantは、経営者の能力開発とメンタリングサービスを提供するExCo Groupのシニアマネージングディレクター。著書『The Leap to Leader: How Ambitious Managers Make the Jump to Leadership(仮題:リーダーへの飛躍:意欲的な管理職が経営幹部になるには)』が2023年7月、Harvard Business Review Pressより出版。
※strategy+businessに転載された記事は、必ずしもPwCネットワークに属する企業の見解を代弁するものではありません。発行物、製品、サービスのレビューや引用は、それらの宣伝や推奨ではありません。strategy+businessは、PwCネットワークに属する特定の企業が発行しています。strategy+business誌が発行する英語の原文からの翻訳はPwCコンサルティング 組織人事コンサルティングチームが取りまとめたものです。