
ファンドニュース(138)不動産セキュリティトークンについて
近年、ブロックチェーン技術を活用した不動産セキュリティトークンとして組成された金融商品が散見されます。セキュリティトークンの発行ビークルとして用いられる受益証券発行信託やTK-GKスキームの会計制度などについて解説します。
2024年11月、証券監督者国際機構(IOSCO)はプリヘッジ(Pre-hedging)に関するコンサルテーションレポート(以下、本レポート)を公表しました(コメント期限:2025年2月21日、最終報告書公表:2025年予定)。
本レポートは、特定の金融商品や特定の法域において公表済みとなっている既存のガイドライン等や、IOSCO独自の事前調査を基に構成されており、各法域・商品共通の定義や要件のガイドラインを示すことを目的としています。
本レポートにおいては、①国際標準となる「プリヘッジ」の定義、②許容されるプリヘッジの条件、③プリヘッジを行う場合のディーラーに求めるコンダクトリスク管理要件について提案されています。
IOSCOによるガイドラインはプリンシプルベースであり、各法域において国内法制化、規制化、またはガイドラインとして採用されることが期待されており、当局による規制違反の判断基準の一つとなる可能性が高いと想定されています。
2017年、グローバル外為市場委員会(Global Foreign Exchange Committee:GFXC)は外為取引に係るグローバルなプリンシプルベースのガイドラインであるグローバル外為行動規範を公表(2021年には取引の電子化を踏まえた改定を実施)しました。米国やEU、英国では、外為取引だけではなく、他の金融商品についてもプリヘッジに関するガイドラインが公表されています(図表1)。
プリヘッジ(Pre-hedging)については、現状グローバルで統一的な定義がないため、本レポートにおいて、IOSCOはグローバル基準となる「プリヘッジ」の定義を提案しています(図表2)。その定義は、取引態様(ディーラーの自己勘定取引であること)、実施タイミング、目的を考慮したものとなっており、欧州証券市場監督局(ESMA)やGFXCが公表している既存のガイドラインにおける定義とは若干の差異があります。
本レポートでは、プリヘッジが不適切な場合や不十分な管理下での実施による市場健全性や顧客への不利益の可能性を指摘し、プリヘッジが許容されるための3つの条件(A1~A3)を提案しています(図表3)。さらに当該提案は、①真正なリスク管理目的、②公平かつ公正な行動、③顧客の利益への寄与、④市場への影響最小化、及び③市場健全性の維持といった5つの主要な考慮要素から構成されています。
# | 分類 | (IOSCO提案) プリヘッジ許容条件 |
A1 | リスク管理目的 | ディーラーは真正なリスク管理目的のみにプリヘッジを実施すべきである |
A2 | 顧客本位の行動 | ディーラーは (i)顧客に対して公平かつ公正に行動し、 |
A3 | 市場への影響 | ディーラーは (i)市場への影響を最小限に抑え、 (ii)プリヘッジを実施する場合において市場の健全性を維持すべきである |
本レポートでは、プリヘッジから生じるコンダクトリスクの管理についてディーラーに対する6つの要件(B1~B6)を提案しています(図表4)。
そのうち、開示要件(B2)や同意要件(B3)については、特にその範囲や対象について議論ありとされています。また、コンプライアンス及び監督態勢(B4)、情報管理及び利益相反(B5)については、現行の態勢とのギャップや態勢整備のレベル感によって相応の負荷がかかることが想定されます。
# | 分類 | (IOSCO提案) ディーラーに求められる要件 |
B1 | 方針及び手続 (Policies & Procedures) |
ディーラーはプリヘッジに関する適切な方針及び手続(P&P)を文書化し、整備する |
B2 | 開示 (Disclosure) |
ディーラーは顧客に対して、プリヘッジの実務や慣行を明確に開示する |
B3 | 同意 (Consent) |
ディーラーはプリヘッジについて顧客から事前同意を取得する |
B4 | コンプライアンス 及び監督態勢 (Compliance & supervision arrangements) |
ディーラーは以下を含む適切なコンプライアンス及び監督態勢を整備する (i)監督システム及びレビュー (ii)取引及びコミュニケーションの監視(モニタリング及びサーベランス) |
B5 | 情報管理及び利益相反 (Manage information & conflicts) |
ディーラーは顧客の機密情報について以下を含む適切な管理を行う (i)アクセス管理と不正利用の禁止 (ii)プリヘッジから生じうる利益相反について適切な管理 |
B6 | 記録保存 (Record keeping) |
ディーラーは監督や監視(モニタリング及びサーベランス)を容易にするために、プリヘッジの記録を適切に保存する |
今後、各法域における規制・ガイドライン等の導入スケジュールや導入範囲の調査、自社業務とのギャップ分析や方針の策定、システム対応、ガバナンス態勢の構築等のタスクが発生することが想定されます。具体的には、以下のようなものが課題となっていくと考えられます。
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