リスクの原因・事象・結果の流れを精緻にシナリオ化

戦略的エンタープライズリスクマネジメントを支え、企業価値の最大化を図るための「シナリオプランニング」

  • 2024-09-11

はじめに

企業全体のリスクを管理し、変化に対応できるレジリエントな経営活動を実現する仕組みとして重要度が高まっているエンタープライズリスクマネジメント(以下、ERM)。企業のリスク管理を適切に推進するにあたっては、言うまでもなくリスクの特定や対策の検討が必要となりますが、これを可能とするために求められているのが「シナリオプランニング」という手法です。

リスクをシナリオとして想定し、ERMの推進に生かしていくこのシナリオプランニングの意義やメリット、具体的な進め方について解説します。

共通のフレームワークとしてシナリオを精緻化

「ドライバーの洗い出し」と「リスクの整理」を経てシナリオが具体的な形になったら、最後にリスクシナリオの適格性を担保するためにフレームワークとして体系的に捉えます。これが3つ目のステップ「シナリオの精緻化」です。

具体的には、リスクを「原因」「事象」「結果」に分解し、そのリスクに影響を与える経営環境動向を合わせて検討することで、リスクの因果関係を明確化します。

ここでいう経営環境動向というのは、リスク発生要因を包含するあらゆる要素を指します。例えば特定地域での紛争といったマクロ的情勢もそうですし、競合他社や市場の動向、社会背景なども含まれます。

「原因」「事象」「結果」に分解するのは、リスク管理を効果的に行うためです。「原因」はリスクへの対応策を検討するために用い、原因を深掘りし、真因を特定することでリスク対応策につなげることができます。「事象」は原因によって引き起こされる社内で発生する出来事であり、これを明確にすることで、リスクが発現した際に起こり得る影響を明確化することができます。「結果」はリスクが発現した際の影響であり、リスクの重要性を検討する際に用います。財務的な影響だけでなく、株主、取引先、地域社会などのステークホルダーへの影響を考慮することも重要です。

さらに、リスクは個別に独立しているのではなく、リスク同士が相関しているケースもあります。共通のフレームワークとして考えておくと、同一基準でのリスク評価や比較が可能ですし、例えば同じ原因から違う事象が生まれるようなケースも捉えることができるでしょう。

まとめ

本稿では、経営戦略と紐づいた戦略的ERMの重要な構成要素となるシナリオプランニングについて解説しました。

刻々と変化していく外部環境に対応し、不確実なビジネス環境の中で的確な経営判断を可能とするためには、リスクシナリオに基づくERMのアップデートサイクルを高速で回していくことは必須となっています。

また、リスクシナリオの作成にあたっては、漠然とリストアップするのではなく、抜けや漏れのない体制でドライバーを抽出し、自社への影響度で優先順位を決め、原因・事象・結果を明確にしておくことが重要です。それにより、リスクを脅威として防止するだけでなく、機会として戦略に盛り込んだり、レジリエンスを図ったりするうえでも、真の意味でリスクを経営の味方につけることができるのです。

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執筆者

神野 順一

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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