「宇宙・空間」をリアルとデジタルの双方から俯瞰し、地球課題を解決する

「宇宙・空間産業推進室」の立ち上げとデジタルスペースにおけるビジネスの可能性(前編)

  • 2024-03-05

PwCコンサルティング合同会社は2024年2月、宇宙・空間産業に関する知見を有するプロフェッショナルを結集させ、組織横断型イニシアチブ「宇宙・空間産業推進室」を立ち上げました。「宇宙・空間」をリアルとデジタルの双方から俯瞰した視点で捉えていくことで、陸・海・空、そして宇宙における分野横断的な場づくりや関連産業の推進、技術開発、事業活動を支援しています。

本稿は前編・後編の二部構成となっており、前編では「宇宙・空間産業推進室」を立ち上げた背景や狙い、関連する産業の概況、デジタルスペースとしてのビジネスの可能性についてメンバーが語り合います。

後編はこちら

登壇者

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 渡邊 敏康
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 佐々木 智広
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 片桐 紀子
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー 井上 陽介
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 榎本 陽介

モデレーター

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 石川 慶紀

※法人名・役職などは掲載当時のものです。

左から 石川慶紀、井上陽介、渡邊敏康、榎本陽介、片桐紀子、佐々木智広

左から 石川慶紀、井上陽介、渡邊敏康、榎本陽介、片桐紀子、佐々木智広

石川:さまざまなデータを組み合わせながらデジタルスペースの可能性を見出すにあたって、衛星データと空間IDを組み合わせることで、どのようなユースケースが生まれてくるとお考えでしょうか。

井上:具体的なユースケースとして、防災、環境、農業などでの活用のほか、保険分野では災害被害の規模算定などが挙げられます。一方で、リモートセンシングを利用した衛星データの活用においては、「リアルタイムに欲しい情報が取れない」「雲があると撮影できない」といった入手の不確実性や、「入手できたデータを利用するまでの取り扱いや加工が難しい」という課題があります。

ただ、将来的には小型の衛星が多数打ち上げられることにより、データの取得が迅速化するでしょうし、また地上においても点群、人流データ、屋内、地下、海底などのさまざまな空間データの整備や流通が進むことで、これらのデータと衛星データを組み合わせることで、ビジネスにつなげていくことが考えられます。

また、日本が衛星データなどの宇宙技術を活用して海外展開していく上では、リモートセンシングデータ、測位データ、地上データなどを組み合わせたソリューションを、空間IDなども活用しながら、防災、環境、都市づくりなどの分野において現地ニーズを踏まえながら提供していくことで進展があると期待しています。

 

PwCコンサルティング シニアマネージャー 井上 陽介

PwCコンサルティング シニアマネージャー 井上 陽介

PwCコンサルティング ディレクター 石川 慶紀

PwCコンサルティング ディレクター 石川 慶紀

石川:今後、衛星データと空間IDを掛け合わせた情報を活用したビジネスが発展していくと想定されますが、ビジネスを検討していくうえでどのような課題に直面するとお考えでしょうか。

佐々木:まずはユースケースを導出できるかどうかという点が1つ挙げられます。ユースケース導出に向けた最初のステップとして、ユースケースの価値につなげていくためにも、衛星データそのものをきちんと理解することが必要です。PwCコンサルティングでは、衛星データに関連するビジネスに取り組む際、その衛星データに関連する有識者から技術的な情報をいただくなどして、衛星データの可能性を検討しています。

衛星データは、幅広い領域を短時間で取得できるのが良いところですが、宇宙に4,000機以上飛んでいる衛星のそれぞれのデータ精度の差分をどう埋めていくかといった課題もあり、現在解決に向けて研究が進められている状況です。

「衛星データとして何を取れるのか」「何が技術的な課題で、解決の可能性はどこまであるのか」といったところを踏まえた上で、実現性の観点から腹落ちできるユースケースを導出することが重要ですし、同時に衛星データの魅力を理解しながらバックキャスト型のアイデーションを行うことが必要になってくるでしょう。

石川:私たちとしてはPwCの強みを活かしてクライアントとともにユースケースを生み出し、今後、衛星データと空間IDを掛け合わせた領域をリードしていきたいですね。衛星データと言えば、既に私たちは数々のユースケースに関わっており、その1つに農業分野があると思います。農業分野では具体的にどのような活用方法があるのでしょうか。

片桐:私は、アグリ&フードというチームをリードしており、官公庁のクライアントにおける農業分野の衛星データ利活用の検討を進めています。おっしゃるとおり、農業分野での衛星データの利活用については既に多くのユースケースがあります。日本における農業行政業務の中には、補助金や交付金の申請どおりに農地が利用されているかを現地で確認する業務が多くあるのですが、行政職員の方々も高齢化が進む中で、現地に赴き確認作業を行うのは難しいのが現状です。

そこで、農地がどのように運用されているのか、何の作物が作られているのかなどを衛星データの解析を通じて判断できるようになれば、大幅な業務の効率化が見込まれます。日本としても宇宙産業に注力し始めていることを踏まえると、衛星データを活用するための土壌が整備されているように感じます。農業分野に特化したユースケースをご紹介しましたが、農業分野以外でも衛星データ活用のユースケース導出は加速するのではないでしょうか。

石川:ありがとうございます。ここまで宇宙・空間産業推進室を立ち上げた背景や、宇宙・空間産業推進室で注目しているリアル・デジタルの2つのスペースのうち、デジタルに特化したビジネスの可能性について考えました。後編ではリアルスペースにおけるビジネスの可能性と、宇宙・空間産業推進室としての今後の取り組みについて考えていきます。

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PwCコンサルティング ディレクター 片桐 紀子

PwCコンサルティング ディレクター 片桐 紀子

主要メンバー

渡邊 敏康

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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佐々木 智広

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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片桐 紀子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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石川 慶紀

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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井上 陽介

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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榎本 陽介

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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