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2017-04-20
「プライベート・エクイティ業界におけるESG/責任投資の潮流 ~グローバル調査からの示唆~」として、中長期的な企業価値向上への関心が高まる中でのプライベート・エクイティ業界のESG/責任投資の潮流について、また、グローバルレベルでプライベート・エクイティ運用会社を対象に、2016年にPwCが独自に実施したESG/責任投資に関する調査結果、および調査結果から得られた示唆について考察します。
責任投資は、1920年代にキリスト教教会の基金の運用において、教義に反するたばこ、アルコールやギャンブル事業への投資を除外するネガティブスクリーニングとしてはじまったと言われています。その後、1960年代からはベトナム戦争での枯葉剤などの製造していた米国企業に対する武器製造中止、またアパルトヘイト政策が導入されていた南アフリカ進出企業に対する同国からの撤退を求める株主提案が行われるなど、社会的・人権的な側面から議決権を行使する動きが活発化しました。一方、1980年代から90年代にかけては、国連主導の「環境と開発に関する国際連合会議(通称リオ地球サミット)」のような国際会議において、深刻化する地球環境問題が注目されることになりました。この時期は、1987年の「環境と開発に関する世界委員会」で発表された、持続可能な開発の定義(※1)や、それを企業活動に展開し、経済、環境、社会の三つの側面を踏まえて企業のパフォーマンスを評価するべきであるという「トリプルボトムライン(※2)」の概念など、今日のサステナビリティやCSRの根幹となる重要な考え方が生まれました。このような環境問題に対する関心の高まりは、環境問題への対応が優れている企業の株式を扱うエコファンドなどのポジティブスクリーニングの手法を用いた金融商品が販売されるきっかけとなりました。2000年代になると、大企業のガバナンスに関連する大きな不正問題が発生し、機関投資家を含めた株主による社会的責任や役割にも大きな関心が集まりました。こうした状況の中、コフィー・アナン国連事務総長(当時)が2006年4月に金融業界に対して、受託者責任の範囲内で機関投資家が意思決定プロセスにESG(環境、社会、ガバナンス)を組み込むことなどを明示した責任投資原則(PRI)を提唱するに至ります。発足後、PRIは欧州の年金基金を中心に急速に署名が広がり、2017年3月時点で1,700以上の機関が署名し、ESG/責任投資の概念とともに世界共通の原則として定着しつつあります(※3)。
※1 持続可能な開発:将来の世代の需要を満たしつつ、現在の世代の需要を満足させる開発、外務省 持続可能な開発 [日本語]
※2 John Elkington, “Cannibals With Forks”, 1997
※3 Principle for Responsible Investment [English]
前述のとおり、ESG/責任投資という概念は、PRI発足を契機に2006年頃から広く使われるようになり、10年以上経過した現在は日本においてもメディアなどを通じて耳目に触れる機会が多くなっています。特に欧州と一部の米国の機関投資家は、さまざまなアセットクラスに対してESG/責任投資の基準を導入しています。これらの機関投資家は、他のアセットクラス同様にプライベートエ・クイティに対してもESG/責任投資の基準を適用することから、欧米の大手プライベート・エクイティ運用会社におけるESG対応水準もこれに応える形で高度化されてきています。一方、日本においては、2013年以降、海外の機関投資家から資金を調達するプライベート・エクイティ運用会社を中心にPRIの署名数が増え、2017年3月現在署名数は7社に上りました(※3)。
【表1】日本におけるPRI署名機関数(2017年3月末時点)
堀江 雄太
PwCあらた有限責任監査法人
マネージャー
地球環境戦略研究機関(IGES)に入所し循環型ビジネスモデルに関する政策研究に従事。その後外資系環境コンサルティング会社にて、投融資やM&Aにおける環境社会デューデリジェンスを担当。2011年より現職。主にプライベート・エクイティ(PE)運用会社、大手金融機関および商社向けのESGアドバイザリー業務に従事。米国ミシガン大学大学院自然資源環境学修了。
※ 法人名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。
※ 2017年4月27日公開のコラム、「プライベート・エクイティ業界におけるESG/責任投資の潮流 ~グローバル調査からの示唆~ 第2回」は、こちらからご覧いただけます。