{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.title}}
{{item.text}}
2023-05-08
世界のグローバル化が進む中、企業を取り巻くビジネス環境は大きく変化しています。もはや「国内だけでビジネスが完結する」という時代ではありません。グローバルでさまざまなバックグラウンドを持つ人たちとコラボレーションしながらビジネスを進めることは、自然なことでしょう。こうした経験は自身の視野を広げ、スキル向上に大きく貢献します。海外での業務経験を豊富に有するディレクターの大槻玄徳に、入社3年目の和田理香子が、グローバル案件を担当する醍醐味や、求められるケイパビリティについて聞きました。
対談者
PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
大槻 玄徳
PwCコンサルティング合同会社
アソシエイト
和田 理香子
(左から)和田 理香子、大槻 玄徳
和田:
PwCにご相談をいただく案件のうち、グローバルでのビジネスに関連するものが増加しています。その背景には何があるのでしょうか。
大槻:
1つの要因としては、これまで想定していなかった事態が複合的に発生し、解決すべき問題が増えていることが挙げられます。例えば、コロナ禍では輸送量の増加により物資輸送の遅延が起こり、サプライチェーンは大混乱しました。国ごとに異なるコロナ対策によって、思わぬカントリーリスクも顕在化しましたよね。さらにロシアによるウクライナ侵攻の影響で、輸送費用の上昇や原材料供給の中断が発生しました。こうした混乱は現在も続いています。
実際、コロナ禍を境に、リスクに対する考え方は大きく変化したと感じています。特に情報の収集と分析に注力する企業は増加し、人工知能(AI)などの先端技術を活用して情報を収集・分析し、リスク管理に活用する取り組みが活発化しています。
もう1つは場所にとらわれない働き方の浸透です。コロナ禍でリモートワークが普及し、海外出張が制限される中で、「リモートでミーティングができるのであれば、現地まで行かなくてもある程度対応できる」ということが証明されました。そのような状況の中、PwCでも日本からグローバルで対応できる業務の幅が広がり、結果としてグローバル案件の増加につながっていると考えられます。
和田:
大槻さんは東南アジアでの駐在経験があるなど、さまざまなグローバル案件に携わってきましたよね。具体的にはどのような業務を担当されていたのでしょうか。
大槻:
ミャンマー駐在時はコンサルティング事業の立ち上げおよび、日本企業の海外進出をサポートするJBN(Japanese Business Network)のジャパンデスクの立ち上げがミッションでした。ジャパンデスクはコンサルティングだけでなく、アドバイザリー、税務、リスクアシュアランスなどPwCが提供するあらゆるサービスの日本企業窓口となるので、その全てのサービスの営業からデリバリーまで、幅広い業務に携わってました。
また赴任前もグローバル案件に関わる機会が多く、「グローバルシェアードサービスセンター」の立ち上げやERPのグローバルのロールアウトなどに携わりました。
【参考URL】
https://www.pwc.com/jp/ja/industries/bcm/consulting/global-shared-service-it-optimization.html
和田:
赴任時はクライアントが現地に進出するため、あらゆる土壌を整える役割を担ったのですね。
大槻:
そうですね。ミャンマーではクライアントが現地に進出するためのマーケット調査や、参入戦略の策定、提携・合弁先企業のデューデリジェンスも担当しました。さらに公共事業の民営化検討時に、その実現性を調査する「フィジビリティスタディ」などのコンサルティング・アドバイザリー業務も支援しました。もちろん、税務に関するアドバイザリーや内部監査なども私の役割でした。
余談ですが、私は英語が得意ではありません。「グローバル案件を担当するにはどのくらいの英語力が必要ですか」と聞かれることがありますが、英語ができさえすればグローバル案件に関われる、ということはありません。もちろん最低限の語学力は必要ですが、それよりもその案件で必要なケイパビリティ、グローバルの文化に対応できる多様性が求められており、それらが備わっていれば、グローバル案件に関わる可能性は十分にあります。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 大槻 玄徳
和田:
大槻さんは以前、他国の公共事業やODA(政府開発援助)の案件も多数担当したと伺っています。少し話は逸れますが、他国を支援することで、日本にはどのようなベネフィットがあるのでしょうか。
大槻:
ミャンマーを例に説明しましょう。私が赴任していたのは、2021年2月のクーデター前ですが、当時、日本政府は数千億円規模のODAプロジェクトを実施していました。2019年における日本の対ミャンマーODA実績は1,893億円で、道路・橋などのインフラ整備をはじめ、医療・保健、水資源管理などの分野で支援が行われていました。
【参考URL】
https://digital.asahi.com/articles/ASP2S75L6P2SUTFK00B.html
こうした支援でインフラが整備されれば、ミャンマーの経済発展や人々の生活向上に貢献できます。またそれらを支援する日本のプレゼンスは向上しますし、ミャンマーと同様の課題を抱えている新興国にも横展開が考えられ、結果グローバルでの社会課題の解決にもつながります。
もう1つは日本企業の活躍の場が広がることです。国家規模の大型ODAプロジェクトでは、政府だけでなく民間の力が不可欠です。実際、ミャンマーでも政府機関や日本企業が一丸となって「オールジャパン」で支援しました。
ですので、日本にとってもベネフィットはありますし、それらがグローバルの社会課題解決につながっていると思います。
和田:
ありがとうございます。社会課題の解決にもつながっていることがよく分かりました。またミャンマーの保険業界の外資開放にも関わったと伺いましたが、PwCはどのように関わっていたのでしょうか。
大槻:
ミャンマーでは2019年、保険業が外資系企業にも開放されました。同国の保険市場への進出を検討している外資系保険会社は、ミャンマー保険市場に参入する意義やビジネスプランについて検討することはもちろんですが、まず現地において外資参入におけるレギュレーション(法規・法令)や、合弁先候補になりうる現地企業についての情報を収集する必要があります。
そこでPwCはミャンマー国内外におけるネットワークやリレーションを駆使し、保険市場に参入したいと考えているクライアントに対して、レギュレーションに関する情報や、今後の動向といったインサイトを提供していました。また、合弁先候補となる企業を紹介したり、参入や合弁に関わるアドバイザリーサービスを提供したりするなど、ミャンマーの保険業界の発展に貢献していました。
PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 和田 理香子
和田:
お話を伺って、グローバル案件を担うにはあらゆるケイパビリティが必要だと理解しました。先ほど「英語は得意ではなかった」とのお話がありましたが、グローバル案件を手掛ける中で大槻さんが「壁」を感じたことはありましたか。
大槻:
難しい質問ですね。「グローバル案件ならではの壁」という意味では、「壁」を感じたことはありません。例えばプロジェクトの途中で想定もしない課題や問題が発生するのは、国内の案件でも同様です。ただし、その頻度や発生する問題の大きさは、日本の案件とは大きく異なると感じています。
ミャンマーでは外国企業に対する規制が急に変更されたり、役所の担当者によって判断が異なったりすることは日常茶飯事です。明文化されているルールだけでは解決できないことも多く、また明文化されていないルールも多々あるのが通常です。
常にアンテナを張って状況の把握に務め、あらゆる可能性を考えて今後を予測しなければなりませんでした。
和田:
いろいろ鍛えられそうですね。グローバル案件に携わる中で、やりがいを感じるのはどのような時でしょうか。
大槻:
さまざまなバックグラウンドを持った人たちとコラボレーションし、視点や考え方の違いに触れられる時です。グローバル案件に携わるということは、多様性の中でビジネスをするということ。当然、日本とは商習慣が異なります。
また外国企業と日本企業では意思決定のスピードが全く違います。日本企業は何かを交渉する場合でも社内で慎重に議論しますから、ことが進むのに時間がかかります。しかし、現地企業やその他の外国企業の場合、交渉の席で数千万円の案件を即決することも少なくありません。
こうしたビジネスのダイナミズムは、日本国内に留まっていては実感できません。グローバル案件に携わることで自分の視野も広がりますし、想定外の事態にもすぐに対処できる柔軟性も身に付くと思います。
和田:
グローバルでのビジネスにおける、PwCならではの強みとは何でしょうか。
大槻:
月並みですが、グローバルのネットワークがあることです。世界149カ国に拠点を有し、それらが国境を越えてシームレスに連携し、クライアントを支援できることです。PwCは国・地域の垣根だけでなく、他部署との垣根も低く風通しのよい組織だと感じています。よく「組織がサイロ化しており情報が分断される」という課題を聞きますが、PwCではそのような課題を感じたことはありません。必要な専門知識を持った人材に声をかけるとすぐにコラボレーションできる環境は、スピードが重視されるグローバルでのビジネスにおいて大きなアドバンテージになると感じています。
和田:
グローバル案件を手掛けるうえで世界に拠点があるのは強みですね。
大槻:
グローバル案件で(他国のPwCメンバーと)コラボレーションしないケースの方が少ないですね。
例えば日本企業のERPのグローバルロールアウト案件を担当していたメンバーのほとんどがPwC韓国の所属だったということもあります。「ERPの知見」「英語」「グローバル文化の理解」というスキルを持つ人材を考えた時、PwC韓国のメンバーが多かったということもあり、そのようなフォーメーションになりました。
「グローバルで人材を調達し、柔軟にフォーメーションを組める」ことはPwCの最大の強みです。
和田:
最後にこれからグローバル案件に挑戦したいと考えている人たちへのアドバイスをお願いします。
大槻:
日本は少子高齢化に歯止めがかからず労働人口が減少し、国内市場は縮小しています。またコロナ禍を経て、場所にこだわらずあらゆるサービスを提供し、享受できる環境はグローバル化に拍車をかけています。そのような中、サービスを提供する側は日本市場だけでなく、グローバルを視野に入れることは大前提として求められます。
例えば、海外の政府系機関から日本のスタートアップ企業が直接オファーを受け、デジタルサービスの構築などに大きく関与しているケースもあります。海外に目を向けると、このような動きも珍しくありません。グローバル案件に挑戦するために必要なのは、今までにない発想力や着眼点です。そうした意味から考えれば、既成概念にとらわれず、新しいことを吸収する素養がある若いうちにグローバル案件に積極的に挑戦した方がいいと思います。
またどんなに英語が堪能でも、専門知識が豊富でも、たった1人で案件をこなすことは困難です。さまざまなスキルを持った人を巻き込みながらコラボレーションすること。それがグローバル案件で成功する秘訣であり、醍醐味かなとも思います。
和田:
自分の専門性を磨きつつ広い視野を持ち、他者とコラボレーションができるというスキルはとても重要ですね。
大槻:
最後に1つだけ。先ほど「最低限の英語ができれば」と言いましたが、英語が使えるようになれば、収集できる情報量もコミュニケーションの幅も圧倒的に広がります。ですから、英語は勉強しておいた方がいいと思います。英語に苦労した私が言うのですから、間違いないです。