
IFRSを開示で読み解く(第44回) IFRS第16号の適用から見る日本の新リース基準の財務的な影響
ASBJは、日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、2023年5月2日付で新リース会計基準案を公表しました。過去のIFRS16適用時の影響から現行日本基準を適用している企業が新リース会計基準案を適用した際の財務的な影響を考察します。
2016-03-07
PwCあらた監査法人
財務報告アドバイザリー部
森本 啓
前回 に引き続き、IFRS適用企業がどのような感応度分析を実施しているか紹介します。今回は、「4. IAS第19号(従業員給付)」と「5. その他の項目に係る感応度」を分析します(分析対象は2015年12月現在のIFRS適用企業62社)。
IAS第19号においては確定給付制度債務の現在価値の算定に用いた重要な数理計算上の仮定のそれぞれについての感応度分析の開示が要求されています。
割引率の変動に対する感応度については非常に多くの企業が影響を開示しており、各社の確定給付債務の算定に対して大きな影響を及ぼしていることがうかがえます。
各社とも実際の割引率から「0.5%増加した場合」や「0.1%減少した場合」のような前提を設定し、その影響を分析しています。大多数の企業(33社)が増加と減少の両方向への変動の影響を開示しています。
35社全てが「確定給付債務の現在価値」への影響額を金額単位で開示しています。その中でも4社(JT、アステラス製薬、ソフトバンク、武田薬品工業)は国内企業における影響額と海外企業における影響額を分けて開示しています。
次の企業が、割引率以外の項目の感応度についても開示しています。
数理計算上の |
JT |
小野 |
中外 |
日本 |
富士通 |
分析の前提 |
何に対する影響か |
死亡率 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
1年の増加 |
確定給付債務の |
インフレ率 |
○ |
|
○ |
○ |
○ |
0.5%(例)の |
|
医療費の趨勢 |
|
|
|
○ |
|
1%減少 |
退職給付に係る負債 |
ここまでは現行の各基準において明確に規定されている感応度分析について紹介しました。ここでは上記の基準には該当しないものの、見積もりの不確実性の影響を受ける項目として感応度分析を開示している例を紹介します。
企業結合において条件付対価を設定している場合に、その対価の公正価値への影響が生じる項目の感応度分析を次の2社が開示しています。
会社名 |
分析の対象 |
分析の前提 |
何に対する影響か |
そーせい |
受領するマイルストンや |
5%増加 |
企業結合による |
金利 |
0.5%増加 |
||
武田薬品工業 |
対象の事業から生じる売上収益 |
5%上昇 |
|
割引率 |
0.5%上昇 |
のれんの減損テストにおける割引率についての感応度分析を次の2社が開示しています。この分析の特徴としては、2社ともに「割引率が○○%上昇した場合、減損が発生します」という形式で減損発生までの余裕度を開示している点にあります。
会社名 |
分析の対象 |
分析の前提 |
何に対する影響か |
JT |
減損テストに |
減損が発生するまでの |
割引率 |
日本板硝子 |
減損テストに |
減損が発生するまでの |
|
1%の上昇 |
減損損失の金額 |
このように感応度分析の対象となる項目にはさまざまなものがあり、各社がそれぞれの方法で分析を実施しています。保有する商品価格の変動による影響のように比較的容易に算出することのできる項目もあれば、確定給付債務の割引率の変動による影響のように難易度が高く外部への委託が必要となる項目も存在しています。また、見積もりの不確実性の影響を受ける項目は企業環境の変化によって新たに発生する可能性があるため、感応度分析の対象の選定および分析方法の検討はスケジュールに余裕をもって実施しておくことが必要となります。
※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。
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