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2020-07-06
前稿では、今後の自動車・モビリティ産業における経営アジェンダを提示した。本稿では、各事業者がとるべきアクションの前提となる自動車・モビリティ市場のメガトレンドの変化やそれを受けた将来シナリオを提示したい。
「ポストコロナ」時代にはパンデミックリスクへの対応に起因し、さまざまなメガトレンドが加速、各産業における時計の針も進む。例えば、規制的な観点では各国の保護主義化、経済的な観点では特定プラットフォーマーへの利益集中、社会的な観点ではワークおよびライフスタイルの変化、そして技術的な観点ではスマート化・デジタル化などが加速するだろう。100年に一度の大変革の最中にある自動車・モビリティ産業では、これまで想定されていた以上に新車市場が伸び悩み儲からないことに加えて、モビリティ市場が先行投資を呼ぶ構図となる。また、以前提示したように変化していくワークおよびライフスタイルに移動量・手段・時間を最適化しながら、経済活動の拡大を目指す「デカップリング(分離)」が図られるだろう。
先行投資の対象であるモビリティ市場に着目すると、特に日本では、人口減少・高齢化、働き手不足に伴うモビリティの課題に対峙する上で、いくつかのシナリオが想定される。モビリティの課題を地域別に見ると、地方部では、高齢化に伴う免許返納、需要減少に伴う公共交通衰退、人口密度減少や働き手不足による物流コスト増から移動・生活基盤の確保などが課題となる。一方、都市部では、人流・物流需要による道路混雑、公共交通の混雑、国際的な都市間競争を背景とした移動の利便性・生産性向上が課題となる。これらの課題を乗り越えるための代表的な方向性として、移動抑制と自由移動のシナリオを挙げたい。移動抑制シナリオとはXR技術、デリバリー・訪問サービス、下支えとなる共同輸送などの普及により、生活圏内のヒトの移動が減少、モノ・サービスの移動や余暇での移動が増加する将来像である。自由移動シナリオは、デマンド交通および自動運転・デリバリーロボットの普及により運転・混雑から解放、安価で便利な交通が提供され、移動が増加する将来像である。
移動の抑制と自由な移動という一見相反する二つのシナリオは、実現時期や導入時の影響を踏まえ都市ごとに最適なバランスで協調しながら導入されるだろう。実現時期については、各種サービスの前提となる規制および法制度の整備、自動運転をはじめとする技術開発、基盤となるデータプラットフォームの整備状況を考慮する必要がある。また導入時の影響としては、移動抑制シナリオでは居住地からモノ・サービス提供への「時間距離」や余暇活動圏の充実度が地域の魅力を左右しうるだろう。自由移動シナリオでは、デマンドバスや自動運転の走行エリアの価値が向上していくと予想される。
自動車・モビリティ産業の経営者は、以上のようなモビリティ普及シナリオにおける車両導入・技術転用・サービス提供といった新事業の機会や、それに取り組む上での既存事業の盤石化が求められる。これらの具体的な処方箋を次稿以降で提示する。
【Strategy&は、PwCの戦略コンサルティングサービスを担うグローバルなチームです。】
シニアマネージャー
PwC Strategy&
kentaro.abe@pwc.com
※本稿は、日刊自動車新聞2020年6月20日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。